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フユミの家はそう難しくない場所にあったので、すぐに見つけることが出来た。シキの町の中でもかなり大きな家で、とても目立つ。踊り子の家系だからだろうか。
そしてその家にも沢山の花壇が存在していたが……花は全て枯れ果てており、蕾をつけるものはひとつもなかった。
とん、とん。
「はーい?」
ケンが扉をノックをするとすぐに女性の声で返事があった。
「オイラ達は旅の者だ。シキの町のことについては自分の母が詳しいとフユミに聞いてここまで来たんだが……」
「あら!お客さんですか!」
きぃ、と音を立てて扉が開くと、そこには初老の女性が立っていた。彼女がフユミの母親だろう。
「ようこそ旅の方。ささ、こちらへおかけください。すぐにお茶をご用意しますので」
フユミの母は手際よくお茶の準備をしてくれた。突然訪れたというのに慣れた手つきだ。ここにはよくお客が訪れるのだろう。
「……何これ、ほんとにお茶なの?」
出されたお茶を見て、サンゴは顔をしかめる。お茶の色が薄ピンク色だったからだ。
「ふふ、これはシキの町でしか取れないお花から作っているんですのよ。花茶と呼ばれていて、季節によって色も味も変わってしまうんです。今は春ですから……春の味ですね」
「なんと、それはどういう原理なのでしょう!ああ、研究したい……!」
好奇心に火がついたセーヤは置いといて。ケンは花茶を一口飲む。すると口の中に甘みのある優しい味が広がり……思わずリラックスしてしまいそうになる。
「美味っ……!」
「お口に合ったようで何よりですわ。シキの町の名物で、行商人ギルドの方もよく買ってくださるのだけれど……」
フユミの母親は微笑んでいたが、窓の外に見える大樹を見て、その表情は暗くなってしまった。
「……もう、これがお客様に出せる最後の一杯なんです。花が、咲かなくなってしまったから……」
どうやら花が咲かなくなってしまうと、生活もままならなくなってしまうらしい。これは一刻も早く解決しなければ。
「さ、さあ、しんみりした話は無しにしましょ!あなたたちがここに来た理由をお聞きしないとね……」
客に聞かせる話じゃないと思ったのか、フユミの母は無理矢理話を終わらせようとする。
しかし、ケンはそれを止めた。
「オイラ達はこの問題を解決しに来たんだ。そのためにアンタの知恵を借りに来た」
「か、解決……?」
「単刀直入に聞く。この町のクリスタルは何処にあるんだ?花が枯れた原因は、恐らくクリスタルの結界が破られたためなんだよ」
「…………!」
クリスタル、と聞いてフユミの母の顔色が変わる。間違いない。彼女はクリスタルのことを知っている。
「知ってるんだな?クリスタルのこと、結界のことも」
「……ええ、知っています」
「なら教えてくれ!オイラ達は結界を直せるんだ!そうすればきっと、この町も元に戻って……!」
……しかし、彼女は首を横に振った。