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「この町にはクリスタルがない……ってことか?」
「……それは有り得ない。辺境のカナイ・ド村にすらクリスタルは存在しているんだぞ」
カイがすぐに否定する。確かにシキの町はカナイ・ド村なんかよりも相当大きい。あんな小さな村にもクリスタルがあるというのに、町にクリスタルが存在しないのは有り得ないだろう。
「どうすんの?結界を直さないと花は枯れたままどころか魔物までうじゃうじゃ入ってくることになるワケだけどさ」
「ま、魔物!?」
サンゴの言葉が聞こえていたらしく、ハルトとフユミは身を震わせる。
「ダメですよ。無駄に不安にさせるようなことを言うのは」
「だって仕方ないじゃん!こうなってるの、クリスタルの結界が破られてるせいかもしれないんだからさ!」
「クリスタルの結界?えっと、本当に僕達話についていけないんだけど……」
「……はあ。教えちまったモンは仕方ねえな」
ケンは溜息をつき、クリスタルの結界のことを二人に説明した……。
「……そうだったんだ。ごめん、全然知らない話だったものだから……」
「何でそんなことも知らないの!?ジョーシキだろ、ジョーシキ!」
何も知らなかったハルトにサンゴが噛み付く。
「まあ待て。サンゴだって最初は知らなかっただろ?俺だって村の長老から聞くまでは知らなかった訳だし……住人の中に知らない奴がいたっておかしくないんだよ」
カイがフォローの言葉をかけるが、ハルトは申し訳なさそうな表情をしたままだった。
「まあ、知らねえモンを責めても何もなんねえだろ?この町にそういうのに詳しそうな人は居ないのかい?」
ケンが口を挟んで話を逸らす。その問いにはフユミが答えてくれた。
「……えっと、多分……町のそういう話はお母さんが詳しいかもしれないわ。三十年くらい踊り手をやってた訳だし」
そう言ってフユミは自分の家の場所を教えてくれた。
「お前は俺達と一緒に行かないのか?自分の家なんだろ?」
カイはそう言ってフユミも誘ったが、答えを聞く前にケンががっちりと肩を組んでくる。
「おいおい、そりゃあねえだろカイさんよ。二人は久しぶりに会った幼なじみだぜ?積もる話も沢山あるだろうよ」
「……?えっと、どういうことだ?」
ケンにそう言われてもカイはまるで分かっていないような反応を見せる。彼に男女のそういう話は理解できないようだ。
「つまり、我々はおじゃま虫だということですね」
ニッコリと笑ってセーヤが言う。
「えっ?……えっ?」
「理解できないならいいさ。とりあえず二人のことは置いといて、アンタはオイラ達に着いて来ればいい。……おーけー?」
「お、おーけー」
まだ理解していないカイを半ば無理矢理納得させ、四人はフユミの家へと向かうのであった。