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「ハルト!」
「……フユミ!?」
女性が向かったのは町の中央にある立派な大樹の元だった。そこには先に走っていったハルトもいる。
「もう!ハルトったら!帰ってきたならちゃんと言いなさいよ!」
「ご、ごめん。大樹のことが気になったものだから……」
「そーだぞ。馬車もオイラたちも放置されて、どうしたらいいか分かんなかったんだからな」
二人の間にずい、と入っていくケン。
「ケ、ケンさん……それは本当にすまなかったね……」
謝罪するハルト。ついでに全員の自己紹介をしつつ、馬車は町の入口に繋いでおいたことも教えておいた。
先程の女性の名はフユミで、ハルトの幼なじみらしい。
「……ちょうどハルトが出て行った一年前くらいからの話なんだけど。その頃からシキの町に花が咲かなくなってしまったの」
フユミはシキの町の現状を話してくれた。彼女曰くはじめは少数の花が枯れていただけだったが、そのうちどんどん枯れていってしまい、最終的には大樹にすら花が咲かなくなってしまったらしい。
「僕が出て行った後?何でそんなことが……!?」
「……分からない。でも、あたしのせいなのかもしれない」
そう言ってフユミは俯いてしまう。堪らずケンは口を挟んだ。
「えーっと、何でフユミのせいなんだ?何かまずいことでもしたってのか?」
「おい、無神経だぞ……!」
カイが止めようとするが、フユミは首を横に振った。
「……シキの町はね、毎月一日に花祭りが開かれるの。シキの町がこれからも綺麗な花でいっぱいでありますように……って祈願するためのお祭り。そして花祭りには花の舞を舞うための踊り手が一人いるの」
「花の舞……。これも祈願のための儀式……みたいなものですか」
セーヤの問いにフユミは頷いて続けた。
「踊り手は代々花の舞を継いでいたあたしの家系の女が選ばれることになってた。二年前までは母さんだったの。だけど母さんももう歳だからって引退した。そして一年前、あたしが踊り手に選ばれた」
そこでフユミは言葉を切り、大樹を見上げる。
「……花が枯れ出したのは、それから」