3-6
「……仕方ないな。衣類の調達は明日にしようか」
「げっ、コイツもう寝てやがるぜ」
毛布の塊にケンが耳を寄せるとすうすうと寝息が聞こえてくる。
「まあ、あれだけ魔法を連発すればな。それに今まで野宿生活だっただろうし」
「それを言われちまうとなあ……。せめてコイツがもう少し素直な性格だったら可愛がってやるってのに」
「残酷だが、俺らみたいなエルフ?何それ?俺らと変わんなくね?って奴の方が希少なんだろうな。だからこそ彼女は周りに敵意を向け続けるしかなかった。自分を守る為に」
毛布の塊を見ながらカイは言う。こうやって同じ部屋で爆睡してくれるということは、すくなくとも自分達に心を開いてくれている……ということだろうか。
「あ、また彼女って言った。サンゴが聞いてたら怒るぞ〜?」
「……すまん。今のは内密に……」
シリアスな雰囲気を嫌ったのかケンは茶々を入れる。
「てか、オイラちょっと気になったんだけどよ」
「何だ?」
「アンタ、トワ姐さんに "ほの字" だったり?」
「……ぶっ!!」
突然のぶっ込みにカイは思わず吹き出す。
「な、な、何を言ってるんだお前ェ!!」
「何か妙に懐いてる感じだったし、別れる時も寂しそうだったしよ。でもカイってサンゴにも優しいよな。もしかして女好きか?」
「人聞きの悪いことを言うな!!ただ、母さんに女性は守るべきだと教えてこられたから……!!」
「いや、サンゴは男だけどな」
「ぐっ……!いやあれはもう、守りたくなるだろ!なんか!ほら!小さいし!」
カイが必死で言い訳をすればするほど墓穴を掘っているような。それを見てケンは面白がっていたが、本命の話題に切り替えることにする。
「まあサンゴはいいや。それよりもトワ姐さん、どうなんだよ?」
「ど、どうって……!」
「何かあるだろー?綺麗だとかさ」
「そ、それはまあ……綺麗な人だとは思ったけどな……!!」
こんな感じでカイを弄り続け……
……気がつけば日が暮れていた。
「約束の時間までもうすぐだな」
「何だよう、そわそわしちゃって。楽しみなのか?」
再度カイを弄るケン。どうやら楽しくなってしまったらしい。カイもムキになるから墓穴を掘るというのに、それに気づいていない。
「ち、違う!ただ聞きたいことがあるだけだ!」
「はいはい、オイラはついて行くなんて野暮なことはしねえから、夜の逢瀬を楽しんで─────」
「ま、魔物だああああーっ!!!!」