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「……で、話を戻すけど特にゴボウが好きなんだよねウチ。有名だろ?カナイ・ド・ゴボウ」
「ゴボウ……」
カイはカナイ・ド村が農業で生計を立てていることは知っていたが、ゴボウが有名だとは初耳だったらしい。もしかして、自分の持っているレイピア(ゴボウ)も元はカナイ・ドの土で育ったものなのだろうか。そんな考えが頭をよぎる。
「……あの、ちょっと見てもらいたいものがあるんですが良いですか」
カイ自身、自分の考えが馬鹿馬鹿しいものだとは思っていた。だが、この人なら……村の長老よりも長く生きているこの人ならこのどう見てもゴボウであるレイピアについて何か知っているのではないかと思ったのだ。
「おっ、何だい?」
「その、俺の武器のことなんですが……」
「武器?まあウチは武器に使う素材は扱ってるけどねえ、武器のことなら武器屋の方が……」
「いや、特殊な武器なんです。普通の武器屋に見せても分からないどころか、その……馬鹿にされるんじゃないかと」
「成程。長生きしてるウチなら分かるかも……ってことかい。そんな武器なら是非見たいものだねえ。見せとくれよ」
笑われるかもしれないし、馬鹿にするなと罵られるかもしれない。それでも彼女の人柄に望みをかけて、カイはレイピアを取り出した。
「こりゃまた立派なゴボウだねえ……!!」
トワは感心したような声を上げる。しかし、これはゴボウではないのだ。
「どう見てもゴボウですが……貴方はこれが武器だと?」
ずっと隣で聞いていたセーヤが口を挟む。疑いたくなるのも当然だろう。それは本当にゴボウにしか見えないのだから。
「ふむふむ……確かに見た目はゴボウにしか見えないけど……これ、ゴボウよりも遥かに硬いね」
暫くレイピアを指で撫で、トワは頷く。
「……そうだね。もっとこの武器のことを知りたいし、これで戦ってみて欲しいんだけど……」
「あの……トワさん、時間が」
トワはカイの持つレイピアに興味津々だったが、セーヤがトワにそっと耳打ちする。
「……あっ!いっけね、忘れてたわ!この後まだお客さんがいるんだよね!」
「あっ……それなら、仕方ないですね……」
カイはがっくりと肩を落とす。そう簡単に謎は解けないということか。
「だからさ!今夜20時、宿屋の前まで来るからその時にでも色々話聞かせとくれよ!」
「ほ、本当ですか!?是非!」
「……何かテンション上がってね?」
ケンのツッコミを無視し、荷馬車に乗って去って行くトワの姿をカイは見送った。