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暗黒騎士に「あなたの匂いが好き」とか言う阿呆①

文章力は稚拙です。ですが楽しんで貰いたいという気持ちはいっちょ前にあります。たくさん笑ってください!


最初は少し退屈かもしれませんが、ぜひ読み進めて頂けますと幸いです...!!

 キャラクターにはバランスが必要だ。ここで言うバランスは顔の造形とかそういうんじゃなくって、言葉にするならキャラの配分といったところかな。


 王子様キャラが何人もいたらプレイヤーは萎えちゃうだろうし、かと言って一人のキャラに設定を詰め込みすぎたらそれはそれでつまらない。


 人は完璧なものに惹かれはするものの、そこに何かしらの穴がなければ真の意味で惹かれることはない。従来のアニメであったりゲームであったりはその特徴を理解していた。


 だが例外もある。乙女ゲームという一部女性ファン受けを考えて作られたのにも関わらず、大手ゲーム会社の制作したRPG作品のように全世界で愛されるようになったタイトル。名前は…なんだっけ。まあいいや。どうせこの手のタイトルはそんなに重要ではないもの。


 このゲームはとにかく悪役が多い。というか悪役しかいない。攻略対象は皆どこかしらが致命的に欠けている。性格が歪んでいるのはもちろん、人を殺すのを厭わない暗黒騎士であったり、闇稼業のボスであったり、違法魔術師であったり、国家反逆を企てるテロリストであったり、果てには世界を牛耳ろうとする魔王まで。


 一作品にだいたい一人が定石であろう悪役がここには結集している。私も最初こそは「悪役多すぎか!?正統派とかもっとあるだろ!」と突っ込んでいたが、プレイをする度に悪役の魅力にどっぷりとハマってしまった。


 みなさんも一度は悪役に心を惹かれたことがあるでしょう?悪役には悪役しかない魅力がある。人と違う道を歩く孤独。己の目的の為なら何をも惜しまない愚直さ。ああ、なんて素敵…。


 と、話が逸れちゃったね。実はこのゲームの魅力はねそれだけじゃないの。というか悪役云々よりもみんな今から言う方を楽しみにしてるみたい。


 それはね……。



 ◇



「また、なの?」


 私はリリアネ・シュバイン。シュバイン公爵家の令嬢だ。今は後に国を担う者の一端として国立学園に通っている。


 突然だが、私の身体にはもう一人の私がいる。これは決して自分が二重人格であると言ってるわけじゃなくって本当にもう一人いる。自分の意志とは関係なく、喋ったり行動したり。まるで私の身体をコントロールしているかのように動かすもう一人の私。


 あまり人のことを嫌いとかは言いたくないんだけど、私…もう1人の私のことをあまり好きになれなくて…。


 だって。


「おはよう、リリアネ」


「おはおは!メルっち!」


「メル…っち?」


「うーん、メルメルの方がいいかな?」


 この子……阿呆な言葉しか言わないんだもの!


 私に何の恨みがあるかは分からないけれど、リリアネ・シュバインの尊厳を踏みにじられ続けてはや数週間。幼い頃から社交界の華と呼ばれるために頑張っていたのに、この子のせいで私は社交界の面白枠として名を馳せることとなってしまった。


 ぐぬぅ…今にも自我を取り戻して「失礼しました、メルル様」と言いたいのにぃ…!


「ごめんごめん!呼び方が嫌だったから変えるね!」


「いえ…驚いただけで寧ろ嬉しい…です」


 この子はいつもそうだ。目の前に選択肢があったとしたら選ぶのは迷わずおふざけ回答。私が選ぼうとするものとはまるで逆のものばっかり彼女は選んでしまう。


 だけど人々はそんな彼女に惹かれるの。こんなにも私という存在が否定されているような感覚があってたまるかって感じだわ。極めつけに…!


「リリアネ」


 ふわっと後ろから抱きしめられる感覚がある。彼女が操作しているのは私の言動や行動だけであって、感覚であったり思考は私のままだ。彼女がどう思っているかは分からないが、私は首に回された腕に血の痕がびっしりとついているのを見て思わず息をのんだ。


 ひっ…これは…!


「レナルド!今日もいい香りね!」


 アホなのこの子は!彼の香りがいい香りですって!?私と変わってみなさい!血の臭いを消すために香水を振りまくって鼻が曲がるほどの匂いなんだから!


「ふふ、俺にそんなことを言ってくれるのはリリアネだけだよ」


 そう言ってレナルドは頭を私の首に擦り寄せて来る。匂いこそ酷いものの彼の容姿は並外れて優れている。血がはね返っても分からないほどに完成された黒髪。切れ長の青い瞳は黒髪とは少しアンマッチに思えても、彼の最高に整った容姿を見るとそんな考えは立ち所に消える。


「戦いの後なの?」


「ああ、今日は北部まで行ってきたんだ。そこで…」


 レナルドがまるで物語の知識の補完をするためと言わんばかりに長々と話を始める。公爵令嬢の私からしたら国の状況であったり、戦争の行く末であったりは今後に大きな影響を与えかねないために身を乗り出して聞いておきたいところだが、彼女はそうではないらしい。


 話長…。


 と言わんばかりにウトウトしている。隣に私がいたら引っぱたいてやっていたのに…!


 ぐぬぬ、と私が唸っていると突然身体が引っ張られる感覚があった。レナルドが何かをしたというわけではなく、これはとある兆候だった。


 私と彼女が入れ替わるという兆候。


「……!」


 手をぐーぱーと開いて身体の感覚を確かめる。確かに私の意思で動いている。入れ替わりが成功したのは間違いない。


 彼女はいつもこういう時だけ私に身体の制御権を与える。こういう、いわば『つまらない』時だけ。そこそこに心が広い私でも流石にこれは我慢ならなかった。


 私のことを散々バカにして…許さないわ…!

 絶対あなたから私の身体を取り戻して見せるから…!!



 ◇



「レナルド話なっがー!そんなのいいから早くリリアナとイチャイチャしてよ〜!」


 私はコントローラーを強く握りしめて叫ぶ。乙女ゲームの進展の遅さには慣れたものだが、やはり序盤の世界観説明はとてつもなくダルい。個人的な意見になるが、私はキャラクターのイチャコラする姿見たさに乙女ゲームをプレイしているところがある。そのため、このような面倒な説明の部分は『オートモード』に任せていた。


 そうそう、このゲームの魅力はモードなんだよね。一つ目は三つの選択肢の内の一つを選ぶ、従来の乙女ゲームのような形。私も最初はこれで遊んでいたんだけど途中からつまらなくなって変えちゃった。


 二つ目は私が今プレイしている自由チャットモードだ。言葉の通り、このモードでは与えられた選択肢ではなく、私自身が考えたセリフで物語が展開する。最近発達しているAIを使って、キャラの性格であったり、世界観であったりを操作できるようにしているからできる…らしい(そういった説明は読み飛ばしちゃうから分からない)


 そして3つ目はオートモードだ。これこそがこのゲームの魅力だったりする。どのゲームにも必ずと言っていいほど搭載されているオートモード。この乙女ゲームはそれが一味違う。


「リリアナ、僕からいきなり距離を取ってどうしたの?」


「いえ、その…ちょっと」


「さっきはいい匂いと言ってくれたのに。もう匂いは嗅いでくれないの?」


 画面のレナルドがしゅんと肩を落とす。まるで捨てられた犬だ。さすがのリリアナもその顔には負けてしまったのか「うぐっ」と言葉に詰まっている。


 そう、これよこれ!


 リリアナは本来であれば堂々としつつも、落ち着きのあるまさに令嬢の中の令嬢といった性格だ。しかしそれはプレイヤーが真っ当な選択肢を選んだ場合、若しくは最初から最後までをオートモードでプレイした場合だ。


 私のように自由チャットモードで彼女が絶対にしないであろう行動をさせ続けたあとにオートモードに戻すと何が起こるか。


「レナルド、そんな顔しないでよ…」


 本来のリリアナが戸惑いに戸惑うのだ。


 自由チャットモードとオートモードを使い分けてリリアナを揶揄う。それこそがこのゲームの醍醐味!(だと私は思ってる)。


 何せ彼女はたまらなく可愛い。


「ふふ、リリアナ慌ててる」


 こういうのをキュートアグレッションというのかな。意地悪をしている自覚はあるけど止められそうにない。だって可愛くて完璧なものが乱れる瞬間ってめちゃめちゃに興奮しない?


 リリアナはどちらかと言えばツンデレに近いし、令嬢としてのマナーもしっかりしているから男性の匂いを嗅ぐなんてことは絶対にしないはず。でもこの状況となると…。


「リリアナはどうするのかな〜?」


 私はニマニマと彼女の様子を伺っていた。

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