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#9 年の瀬の珍客。

前回のあらすじ。


モフモフに埋もれた。


20**年12月31日(火)



大冒険から2週間程経ち、日本↔️ニポンの不思議往復生活にも慣れ始めた頃、1人と1匹は仲良くこたつに入ってた。


 本日は年末大晦日。大掃除などは前日までに済ましてのんびり1人と1匹で過ごす大晦日。揃って突っ込んでるのはこたつ。まあラルが火傷しても嫌だから、電源は着いてないけど。まあ入ってるだけでもラル蔵のお陰で暖かいんだが。


「ラルさぁーん」

〔ワフ?〕

「明日から新しい年になるわけですよ。なにしよっかー」

 そう言うと、こたつから飛び出しリードを脚指すラルさん。


(リードを指す…てことは"日本"での散歩に行きたいのか。)

 リードを持ち玄関の扉を二回開ける。


ーーー


「そんで今日はなんでこっちなの?」

〔ワン!〕

 朝と夕方、1日2回の散歩、大冒険の後、20回を越える散歩は全てニポンでの散歩を御所望したラルさん。ここに来て日本での散歩。なにかしら意図があるんだと思うけど…


「喋らんからわからんなぁ…」

 とりあえず怪我しないように注視しつつ、ラルの行きたい方向に自分の身を委ねる。


ーーー


「あーね。ここに来たかったのか。」

 そう言って目の前にある建物を見上げる。

 ニポンに入り浸る前はそれなりの頻度で来てたペット同伴可(と言ってもテラス席。つまり年の瀬の今日なんて向いてない。)のカフェ?喫茶店?


「でもねー。今日はお休みだよね。大晦日だもん。」

 そう言ってラルさんの方を見ると


〔ハッハッ…ハァ…〕

 みるみる目から光が消えていくラルさん。すごい落ち込みよう。


「しょうがないよ。年明けたらまた来よっか。」


ーーー


 散歩から帰宅。


「あーさーっむ゛!!」

 帰宅して早々、なにかが割れる音。来たか。少し休憩させてくれ。


「はーいどちらさm…リルと…そちらは本当にどちら様?」

〖お母さんに飯作って!〗

「はい?」

 目の前に現れた服を着た猫の突然の要求に時が止まった。


ーーー


「えっと…お口に合うかわかりませんが…こちらどうぞ」

 やってきたリルと"お客様"に飲み物を出す。

 "お客様"は地面に座るのが苦手なようなので、ちょっとした台に座ってもらってる。結果としてちょうどいい高さになったみたいでよかった。


〖ありがとうございます。〗

「リル、こちらはどちら様?」

『この子はケット・シーのサクじゃ。』

〖どうも。サクです。〗

 目の前に座るケット・シーと紹介された女の子?メス?の猫?は一般的な猫と同じくらいの大きさだが、服を着て二足歩行をしてる。体毛は黒一色。

 ケット・シーって言うと…あれか。


「ケット・シー…うっすい知識で申し訳ないけど猫の妖精だっけ。」

〖妖精?ではないですね。普通に魔物です。〗

 あ、魔物で良いんだ。


「喋るってことは貴方も上級魔物ってことかな?それで、さっき言ってたお母さんにご飯作ってって言うのはどう言う…?」

〖うちのお母さん、先が長くないの。それでなにして欲しいのか聞いたら、昔人間に食べさせてもらったご飯を食べたいって言われて…〗

「リルが連れてきたとこを見るに、ここで料理作ってもらったって言ってここに来てみたと…」

〖そう言うことです。〗

 リルさんなに噂流してんだ。まあ悪い気はしないけど。


「それで何を作って欲しいんだ?言っとくが料理は好きだが美味しいかわからんよ。そんなんでも良いなら…」

『タニグチのメシはうまいぞ!ワシが保証する!』

 食い気味でリルが太鼓判を押す。まだハムサンドとシチューしか食べてないのに。


「…まあそう言われるのは嬉しいし?そういうこと言われたら作りたくなっちゃうよね。それで作って欲しいものってなんだ?手の込んだ物とかならお母さんには申し訳ないけど作れないぞ。」

〖グラタン。〗


 グラタン…手は込んでる(当社比)が作れないことはない。けど病人にグラタンってどうなんだろう。優しいミルク感たっぷりの薄味にすれば良いのかな。と言うか猫(仮)に熱い食べ物ってどうなんだ?


「なあ、一応猫だよな?ケット・シーって。温かい料理って食べれるのか?こう…猫舌とかそう言うの。」

〖火傷するくらいの温度じゃなければ食べれますよ。そこはまあ、魔物ですから。〗

 あっけらかんと答えるサク。


「そうか。あとケット・シーは食べれないものはあるのか?」

〖特に食べれないものはないよ。ただオカンは鶏肉が嫌いなの。〗

「そしたら…今から材料買いに行って明日作りに行くよ。」

〖え?〗

 あ、距離感の詰め方間違えたかな。出来立て(と言っても少し冷まさないといけないと思うが)食べて欲しいと思ったんだが。


〖是非お願いします!…けど、私の家入れないかも…〗

 …そっか。サイズ的な問題もあるのか。目の前にいるサクは服着ないで四足歩行していたら普通の猫と大して差はない。と言うことは家もそのサイズなのか。見落としてた。


「んーどうしようか。そこまで考えてなかった。」

〖そしたら近所の知り合いに台所貸してもらえるか聞いてみます。〗

「え、それは元日から申し訳ないような…」

『あー、魔物にはオオミソカとかガンジツってのはあんまり関係ないと思うぞ。聞いたことはあるし人間領にはそう言うイベントがあるとは知ってるが、魔物の中ではあまり重要視されてないぞ。』

「そうなのか。」

 リルの横にいるサクもうんうんと頷いてる。


「そしたらサク、そのお友達さん?ご近所さん?に台所借りれるか聞いてもらって良い?そのためにも今日は帰ってお母さんのところにいてあげな。」

〖わかりました!〗

「そんで元日から申し訳ないけどリル、明日の朝迎えに来てくれない?」

『わかったぞ!」

 リルの許可も得たし、気兼ねなく足代わりに使わせていただこう。


ーーー


 サクを載せたリルが結界を破り、そのまま走り去ってく。

 結界の監視は俺とラルで行った。まあ、監視せずともラルの魔力量に驚いて、並みの魔物は近づいてこないだろう。それに何かあっても賢者か魔法使いが遠隔で見てるだろうし。とはリル談。

 何かあったらリルが責められるんじゃ?とは思ったけど言わないでおいた。変わりに今度リルママに会ったら言っておこう。


「ラル、そしたらこれからちょっと買い物行ってくるから家で待ってて。多分大晦日で混んでるだろうから時間かかるかも。まあ遅くても2時間くらいで帰ってくるから。その前にご飯食べるか?」

〔ニジカンって長いはりが12を2回すぎるくらいでしょ?それくらいならガマンする!〕

 ラルさんいつの間にか時計読めるようになったの!?賢い……!尊い…!!


「そっか。じゃあ出来るだけ早く帰るから良い子にしてて!」

〔わかったー〕

 そうしてラルさんと結界が閉じたのを確認し一回家に入り財布を持ち"日本"へ買い物へ急ぐ。


ーーー


「うーん混んでる…その上品物少ない…しょうがないか…」

 とりあえず必要なもの最優先でスーパー内を早歩きで往く。

 玉ねぎ、じゃがいも、しめじに鶏肉…は苦手なんだっけ。変わりになるもの…鮭とかどうだろ?うん。具材はこのくらいで良いかな。あとはチーズとバターと小麦粉と牛乳と…


ーーー


「ただいまー帰ったよー」

 鍵を開ける音が聞こえたのか、玄関で出迎えてくれるラルさん。


「これは主人を出迎えに来てくれたのか…それともお腹空きすぎて目の前にやってきたのか…なんかよだれメチャクチャ垂れてるし後者な気がする…」

〔ワフ?〕

 (なに言ってんの?それよりご飯!)って感じの上目遣い。はぁかわいい。


「すぐご飯にするからあっちで待っててー」

 "バビューン!"と言う効果音がついてそうなくらい勢いよく奥の部屋へ走っていった。どうやらさっきのは後者だったらしい。今の勢いで確定した。悲しい。


ーーー


「………ヨシ!」

 ヨシの"シ"を言い終わらないくらいのタイミングで皿に顔を突っ込むラル。

 ご飯は逃げたりしませんよ。


「さて、明日の下準備だけしようかな」

 ご飯は食べずに、材料の下拵えだけすることに。



 玉ねぎはくし切りにしたのをさらに半分に、しめじは石突を切り取って一本一本にバラす。それをサク達のサイズ感を考えて半分くらいに。じゃがいもは芽を取り除いて皮を剥いて輪切りに。そこからさらに賽の目切りに。

 時短のためにもこれは下茹でしとこう。

 鮭は…グラタンで使ったことないんだよな。とりあえず皮を剥いて少し焼いてフレーク状にしておこう。皮は俺のもの。グリルで焼いとこ。

 とりあえずこれで下拵えはおしまいっと。


「さーて俺は年越しそばでも食べるかな~茹でるのめんどいな。カップ麺で良いや。」

 と話してたらラルが使ったお皿を台所に持ってやってきた。


〔ハッハッハッハッ…〕

「お前最近頭良くなった?前まで食べ終わったお皿そのままだったよな。持ってくるようになったのな。偉いな~」

 そう言うと恒例のワシャワシャタイム。


〔ハッハッハッハッゥワン!〕

「良い子良い子~」


ーーー


「ズズ…ズズズズ…年越しそばうめー。やっぱり下手にそばつゆ作ってそば茹でるより、カップ麺の方が楽で旨いなー」

 そう言いながら年越しそば(カリカリ鮭皮添え)を食べてサブスクで見ようと思って見るのを忘れてたアニメを見る。これもある意味"やりたい事"だったか。忘れてた。

 そんで下を見たら膝の上にはラルさん。幸せな空間だなぁ。


「今何時だろ。」

 アニメを止めて画面に時計を表示する。



20**年1月1日(水)0時06分



 あらま、いつの間にか年越してた。あけおめです。


「ラル~あけおめ~」

〔……フシュン…〕

 どうやらもう夢の中。まあしょうがないか。いつもはもう寝てる時間だもんね~


「あれ、仮に余命1年じゃ…もしかして最後の年越しだったの!?」

 うわ…と思い少し放心。


「サクとお母さんはゆっくり年越せたのかな…」

 そんなことが頭に過りふと思いポツリ。


「…やっぱり俺死にたくないよ。」

 膝上のラルに水滴が垂れた。

 裏山大冒険編が終わり次の編…「ケット・シーとグラタン」編に突入。

 新モフモフ、ケット・シー登場。

 犬(狼)が出たなら猫もでないとね。と思ったので。ちなみに作者は「犬派」です。


 サクの名前の由来は「ケット・シー」→「猫の妖精」→「猫」→「よくグルグルしてるイメージ」→「サークル」→「サク」です。そこまで深く考えてないです。


 今回の料理はグラタン。皆さんのグラタンの定番の具ってなんですかね。自分は玉ねぎと鶏肉とマカロニがレギュラー、そこにじゃがいもやキノコやエビ(シーフードミックス)が入ったり入らなかったり。


 ちなみに括弧の種類で誰が話してるか…と言うのを分けてる(つもり)のですが、今回登場の〖サク〗は前話までの〖リルママ〗と同じなんですよね。なので〖〗のキャラはその編のゲストキャラだと思っていただければと思います。ゲストキャラが同時に出てくることは無い…と思いたい。

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