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#44 状況理解と謝罪行脚。

前回のあらすじ。


覚醒渓口、黒外套を倒した。


《俺は現場にほとんどいなかったからその時の事しらねんだ。それに目ー(めぇ)覚めたのサク達知らねーから教えに帰るよ。行くぞラル。》

〔はーーい。〕

「ん?ラルはもう退院してんのか?」

《退院と言うか怪我はしてたけど入院してねんだわ。》

「日帰りだったのか。てかお金はどうしたの!?てか入院のお金どうっしよっ!?」

 頭を抱える渓口。


【それなら問題無いですよ~魔物領では怪我による医療費負担0%ですよ。その分病気時の医療費負担はえげつないですけど。】

 隣のベッドのハルアがのんびりとした口調で言った。


「へっ?んなわけありますか!0パーって!」

 流石に驚く。なんだ0パーって。


【魔物領だとそんなことあるんですよ。狩りや魔物同士のじゃれあい(ケンカ)じゃ大ケガが日常茶飯事ですから。賢者とか怪我しまくりなんでケガによる通院なんて今年入ってからもう7回目です。入院は流石に今年初めてですが。】

 渓口にコンコンと説明するハルア。

 4月頭で既に7回…月2ペースか…


《その分50%くらい回復したらすぐに追い出されるけどな。タニグチの場合、目が覚めないのが入院理由だったし明日には追い出されぞ。ハルアも今日退院だしな。》

 まさかの料金設定にも驚きだけど明日追い出されるってのも驚きだわ。抗がん剤すら終わってから2日は様子見があったぞ。

 そう言うとラルを連れて病室を出てった。


ーーー


「そんで話を戻して…どういう事?」

 セグトとラルをベットの上から見送りリルとハルアに話を聞く。


『どういうもなにも…タニグチ、お主が魔法をバカみたいに乱発して黒外套を倒したんじゃ。』

「いや、俺は確か丘でリル?ラル?どっちかが雷おとして…それに気付いてそっちに向かって…着いたらラルが倒れてて…黒外套がいて…そいつに一発ぶん殴って…そこで気絶したんじゃないか?なんで気絶したのかは知らないけど。その後の記憶はさっき目が覚めるまで無いよ?」

 目を瞑り記憶を遡っていく。が、魔法をバカみたいに連発した記憶はない。


『そんなわけ無いじゃろ!ワシが黒外套の結界に閉じ込められて、なにも出来なかったところにタニグチがやってきたんじゃ!』

 興奮気味にリルが話す。


「うん。それは覚えてる。確かにリルが黒い結界に閉じ込められてた。」

『その後、杖で黒外套をぶん殴ったんじゃ。』

 それも覚えてる。


『相手の言うことを遮ってぶん殴りまくったんじゃ。』

 うん。ここから覚えてない。


「そんなことない。俺が相手の事聞かないで殴りまくるってナイナイ…多分。一発いれたのは覚えてる。けど一発だけだ。その後記憶がない。」

『おかしいのう?病院にいるんだし、ついでに頭の検査してもらったらどうじゃ?』

 ニヘラ…って感じの笑みを浮かべリルは言う。


「自分でも今考えてたけど、お前に言われると腹立つな……んで、その後はどうなったんだ?」

『ああ、タニグチが杖で殴りまくって最後は魔法弾をかなりの数出してそれを全部黒外套に打った。』

「え?かなりの数って…相手生きてんの…?」

 殺ったのでは…と不安になり青ざめる。


『本当になにも覚えてないんじゃな…その黒外套は分身だったんじゃ。んで本体の方は…』

 リルがハルアに目配せをする。


【セグトの家に来ました。渓口さんと公園で別れてから10分後くらいの事です。】

「んでそれはハルアさんが倒したのか?」

【本当に何も覚えてないんですか…渓口さんです。】

「いやいやそんなわけ……マァジィ?」

 黙って首を縦に降るハルアとリル。


『分身を倒したときから思っとったが、あのときのタニグチなんかおかしかったぞ?口調とかは大して変わってなかったが、性格もなんか好戦的だったし、何より魔杖の魔力切れるくらい魔法使ってたのに、体内に元からあったかのように魔法使いまくってたぞ…』

 リルがおかしな点を羅列していく。


「それ本当に俺なのか?ドッペルゲンガーとかなんじゃ…?ん?」

 ドッペルゲンガー…?はて…なんか引っ掛かる。


『丘に到着した時点で別人になってたならその可能性も無くはないかもしれんけど、その時点では記憶あるんじゃろ?』

「……あったね。」

『んじゃお主なんじゃよなぁ。』

 本当に頭見てもらった方がいいのかもしれない。今説明された事の8割くらい記憶にない。


ーーー


「目が覚めて6時間。まさかまさかの追い出された。リハビリとかのアフターケア無いのね。」

 全身筋肉痛男はリルに横たわり呟く。


【まあそこは回復の早い魔物ばかりの魔物領ですから…僕はともかく、渓口さんも追い出されるとは…流石にビックリですよね。】

 一緒に追い出されたハルアもビックリの様子。


『4日間寝てただけあってタニグチ痩せたな。軽い。』

「あっそう?嬉しいな~…とは言えないんだよな。寝てて体重落ちたってのは筋肉落ちたわけだし…体力作りしないと…」

 リルの体の上に横たわる全身筋肉痛男は今後のビジョンを考える。


【んじゃ僕の家こっちなんで。お気をつけて。】

「なにかあったらよろしくお願いします。」

 そう言ってハルアの背中を見送る。



「リル…この後サクの家に寄っていってもらって良いか?」

『安静にしとかなくて良いのか?』

「安静にするより謝りに行かないと。」

『…わかったのじゃ。』


ーーー


「サクさんを危ない目に遭わせて申し訳ございませんでした。」

 サクの家の前で地面に正座し土下座する。


[頭あげてください!私は怪我とかしてないんで大丈夫です!]

〖…………〗

 サクはそう言ってくれたが、サクママは口をつぐむ。


「怪我はしてなくても危険な目に遭わせたのは事実です。」

〖……タニグチさん。取り敢えず頭を上げてください。タニグチさんの謝罪は私は受け取りました。〗

 能面のような顔を崩さずサクママは言う。


[私もです!]

〖でもね、魔物は基本的に"自分の命は自分で守る"ってスタンスなのよ。死んだらそれは自分が悪い。こう言う感じね。だからもう怒ってないわ。"一魔物"としては。〗

「…はい。」

〖ここからは"サクの親"として、私個人の意見ね。〗

「はい。」

〖タニグチさんには良くしてもらったわ。それはもう色々と。私の体調が戻ったのも、タニグチさんのお陰だと思うわ。でも今まで3度出店(でみせ)をしてきて、3回ともトラブルが起こってる。それで3度目の今回、本当に危なかった。これ以上あなたの元に預けるのは申し訳ないけど出来ません。〗

[……お母さん。]

 サクがオロオロする横でサクママは淡々と話す。


〖…まあこれは成人してない場合ね。〗

[!!]

 尻尾をピンと立てて顔が緩む。


〖こう見えてサクは30歳手前なのよ。なので会う会わない、関わりを持つ持たないはサク本人に委ねるわ。私はどっちでも良いわ。〗

「え!?はい?さんじゅっ!?」

 サクの年齢に驚く渓口。


[あれ、言ってませんでしたっけ。28です。]

 口に前脚を当ておちゃらけて言う。


「同い歳だったんだ…ごめん。ずっと子供扱いしてた…」

 だって言動が幼いんだもの。


[いえ…それはまあ…はい。]

 サクもどこか思い当たるところがあったようだ。


〖まあ私達(ケット・シー)の寿命は200歳前後だからね。人間換算したら子供と言えば子供だわ。それで、サク的にはどうなの?〗

[問題ないよ!これからもお店の手伝いします!]

「…ありがとね。ママさんもありがとうございます。」

 そう言い再び頭を下げる。


ーーー


「さて、次はリルママのとこだな。」

『それなら問題ないぞ。あんなの日常茶飯事じゃ。』

「あんな日常茶飯事あってたまるか。と言うかなんであのとき公園裏の丘に居たんだ?そっちに行く予定は無かっただろ?」

 そう、黒外套との戦闘場所になった丘は公園の裏側。本来は魔物(ヒト)もいないし販促を目的としてたあの散歩では行かなくても良い場所だ。


『それがなぁ…気付いたらあそこにおった。記憶がないのじゃ。これはサクもラルも同じじゃ。』

 俺の周り記憶喪失しかいないじゃないか(俺含め)


「…そうか……まあ取り敢えずリルママのとこ行くぞ。仮に問題がないとしても、形だけでも謝るべきだ。」

『わかったのじゃ。』

 そう返事すると背中に横たわる渓口を落とさないように頂上のリルの住み処に走り出した。


ーーー


〖え、別に良いわよ~〗

 リルの言う通り、リルママはめちゃくちゃ気にしてなかった。


〖タニグチ、街に住む魔物ならともかく、自然の中で生きてる魔物の世界は弱肉強食。やられた方が悪いって世界よ。だからタニグチが気に止む必要はないわ。〗

「なるほど…」

『な?言ったじゃろ?謝る必要はないって。』

 なんでお前が自慢げなんだよ。こう言う時いっつもそうだよな。


『あんたはあんたでもっと強くなりなさいこのバカ!』

 そう言い肉球パンチ(最強)を食らうリル。




こうして謝罪行脚は終わっていく。あとは…

49本目!


 この物語のメインは料理を交えたスローライフなはずです。どこに行っちゃったんでしょう。

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