#41 春爛漫!桜まつり!(前)
前回のあらすじ。
ラルさん初狩猟。張り切りすぎて空回り。
20**年4月5日(土)
お祭り当日の朝。
セグトの家でひたすら野菜を切る渓口とサク。
「あーー手ーがーいーたーいー」
[タニグチさん…早いですね。]
目にも止まらぬ(自分比)早さで切ってく渓口に驚くサク。
「慣れだよ慣れ。サッちゃんも手動かしてー」
[動かしてますよー]
顔を上げるとサクの目の前で包丁が独りでに動いてた。
「んー羨ましいなその魔法…俺も使えるようにならんかなー」
[んー…魔杖じゃ厳しいかもです…]
そう言って苦笑いするサク。
「だよねー魔力少しでも残しときゃ良かった~」
ハハハ~と冗談半分で語る渓口。
ちなみに半分は冗談だけど半分は本気でそう思ってる。絶対に口には出さないけど。
一方、その理由を作ったセグトはと言うと…リルに乗り肉屋へ向かってた。
《眠すぎ…寒すぎ…》
リルの上で腕を組み、尻尾でバランス取りつつ、眠気眼でポヤポヤしてる火炎竜(200)。
『それはお互い様じゃ。』
眠いと言いつつ結構なスピードで走ってるフェンリル(10)。
《……なあ、今日大丈夫だと思うか?》
目を瞑ったままリルに問う。
『どうなるかのう。明日よりかは可能性は低そうじゃが。』
《まあリルと俺がいれば取り敢えず問題ないか?タニグチとラルもいるし。》
『ワシがいるから百人力じゃ!』
《ソーデスネー》
目を瞑ったまま相槌を打つ。
ーーー
『肉もらってきたぞ。』
そう言いドン!と机に置く。
「おおおお…流石に30kg…すごい量…多分焼きそばじゃ使っても10kg位だろうな。残りの20kgはお疲れ様会用だな…20kgも?」
思ったより多かった。10kg位は売れば良かった。少し後悔。
『おお、お疲れ様会やるんだな!楽しみじゃ!』
尻尾を振るリルさん。
「リルさん、食べる量気を付けような。また太るよ。」
渓口の言葉にピン!と振ってた尻尾が止まる。
『………まあたまの贅沢なのじゃ…こう言うときだけはノーカンなのじゃ。』
震えた声で言う。
[リルさん。その考えが命取りになりますよ。]
サクさんとどめの一撃。
『……』
食べたい…でも…!と葛藤するリルを横目に早速焼きそばを作り始める。
「セグト、とりま作り始めるぞ。麺と具材どっち作る?」
《俺具材~》
「おけ。そしたらひたすら具材作ってボウルに取り出してを繰り返してくれ。ボウルが一杯になったら一旦終了ね。」
《任せろ!》
そう言い、火炎竜は腕捲りをしフライパンを握る。
ーーー
ボン!ボン!と花火の空砲?が鳴り響く。祭の始まりだ。
[お客さん来てくれますかね~]
「その為のさっちゃんですよ。今日もよろしくです。ラルリルー準備してー」
サクに焼きそばを持たせてラリルに出発の準備をさせる。
〔わかった!〕
「何かあったらさっちゃん連れて走ってここまで戻ってきて。リルもサポートよろしくな。ヤバイと思ったら空にでも魔法打ってくれ。なんでも良いから。」
《あいわかった!》
「ラルもなにかヤバイと思ったら空に魔法打て。わかったか?」
〔わかった!〕
そう言うと、ラルの上にサクが乗りリルが後ろから付いていく形で出発した。
「よろしく頼むよ~…さてと、セグトは麺と具材、少なくなってきた方をどんどん焼いてくれ。仕上げの炒めはこっちでやるから!」
やる気充分の渓口。
《まあまずはサクが連れて来なくちゃ始まらんがな。》
冷静なセグト。
「そだなー…忙しくなれば良いな~」
ーーー
セグト宅前は肉屋のおっちゃんが宣伝してくれたのか、おっちゃん含めてぼちぼち人集りが出来てきてる。しかし…
「……遅いな。帰ってこない。」
《サク達まだ帰らないか?》
「うん。」
サク達が出てから1時間半。帰ってこない。公園までは片道15分。混雑で多めに見て30分。往復で60分…公園内を歩き回るのも考えて多めに時間を見てるが…
「帰ってくるのが遅い。嫌な予感がする。セグト、一旦作るのやめて、サク達探しに行ってくれないか。俺もここにいる客捌ききったら探しに行く。」
《わかった。》
そう言うと足早にセグトは駆けてく。
「ごめーん、材料なくなるから今並んでる人で一旦終了!」
そう叫んで手早く客を捌いてく。
「(何もないと良いけど…)」
ーーー
客を捌き終わり、テーブルを引きずり家の中に入れて魔杖を持ち鍵を閉める。家の中散らかってるが後で片付ければセグトなら許してくれるだろう。
「メチャクチャ混んでるな…」
表通りはすごい魔物の数。この混み具合なら進めなくてどっかで立ち往生してるだけかな。そうであって欲しい。表通りは人が多くてどうしようもないので裏道を進んでひたすら探す。
「祭の本部みたいなのどっかにあんだろ…?公園か?」
そう言い公園へ向かう。
一方セグトサイド…
《ヒト多すぎんだろ…おい、ケット・シー乗せた金毛の魔犬見なかったか?あと白毛のフェンリル。》
[見てねーな。]
[そんなに目立つなら見たらすぐわかるし見つけたら祭の本部に連絡しとくよ。]
[見てないわ。]
周りに声をかけながら進むが有力な情報は得られず。
《こう言うとき空飛べれば楽なんだけどな……チクショウ。》
翼を動かしてみるがピクピクと少し動くのみ。
《ぜってーリハビリしよ。》
再び渓口サイド
「なあ、ケット・シーとフェンリルとゴールデンレトリバーの迷子の情報無いか?」
[………今のところ来てませんね。]
「……情報あったら放送してください。」
[わかりました。]
謎の沈黙に少し違和感を覚えたが、取り敢えず情報は無し。
「あともう一つ、賢者のハルアさんって今どこにいる?虎獣人の。祭の警備に当たってるらしいけど。」
[すいませんこちらでは把握してませんね。]
「…本部なんだから警備態勢把握しとけよ」
小声で毒を吐く。
「…わかりました。」
苦虫を噛み潰したような顔をして再び探し回る。
【渓口さんなんでこんなとこに?お店はどうしたんですか?】
聞き慣れた声が背後から聞こえた。ハルアだ。
「ハルア!サクラルリル行方不明!帰ってこない!」
ハルアを初めて呼び捨てる渓口。大分切羽詰まってるのを理解したハルア。
【探し始めてどのくらいですか!?】
「サク達が家を出てから1時間半経ってから家を出て、そろそろ30分。」
【2時間…そしたら一旦家見てきます。もしかしたら帰ってるかもしれない】
「お願いします!いなかったらドアに探してる旨の書き置きお願いします。」
【了解!】
ーーー
《どこ行ったんだよあいつら…》
「サクー!ラルー!リルー!どこだー!」
【セグト宅には帰ってきてない…】
各々が出来ることをしてる中、花火の"ような"音が鳴り響いた。
~~~
『タ、タニグチ…結界破れた…』
リルさんもここまでの魔法が使えるとは思ってなかったらしい。震えた前脚で破れた方を指す。
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魔石を使わなきゃ結界を壊せなかったリルが初めて結界を自力で壊した時のあの音が。
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《ありがと……たすかった…。》
そう言って倒れるセグト。
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セグトの逆鱗状態を終わらせた時のあの音が。
晴天にも関わらず公園の裏側の小高い森に雷が落ちた。
46本目!
急転直下ですね。去年の秋の気温みたいですね!