#3 やりたい事見つけた…かも
前話のあらすじ。
別世界の事を調べた。完全に理解した(理解してない)
20**年12月**日(火)
別世界の存在を知ってから1週間経ち、あっちの事もよくわかった(わかってない)し、そろそろこの2年で一番大事なこと"やりたい事"を考えてみることに。
「と言ってもなぁ…」
そう言って机に突っ伏すのは渓口(28)。それに馬乗りになるラル蔵君(6)。
〈前話でも突っ伏してたなお前。あ、どうも1話ぶりの天の声っす。どういう立ち位置かわからない?まあこのお話しの語り手…的なポジションの人だと思ってくださいっす。それにしても…どうしようもないっすね~この人は。2年とちょっとしか時間残ってないってのに。え?なんで残り時間がわかるかって?なんでっすかね~。まあとりあえずヒントあげてみましょ。ほい。〉
「〔!!!〕」
突然なにかが落ちた音に1人と1匹驚く。
音のした方を振り向くと本棚から数札の本やノートが落ちた。
「おーなんだ、いきなりギッチギチに仕舞ってあった本が落ちるって…この家まで遂に不思議ハウスになっちまったか~?もうなにが起ころうと今更驚かねーぞー」
そう言って本棚から落ちてきた…飛んで出た?本を元に戻す渓口の手に一冊のノート。ノートの表紙には「やりたい事ノート」と如何にもな名前が書かれてる。
「そう言えば癌なりたての頃にこんなの書いたな。結局ほとんど書かずに放置してたような気がする…」
ペラペラとめくると何個か"やりたい事"が書かれてた。
「旅ねぇ。料理ねぇ。作曲ねぇ……作曲?こんなん書いたっけ?」
ケラケラ笑いながら書いた記憶の有るような無いようなノートを捲ってく。
〔ハッハッハッハッ…〕
その横でよだれ垂らして覗き込むラルさん。
「冷たいです。よだれ垂れてます。私に垂れてます。」
そう言いながらティッシュに手を伸ばし、よだれを拭き取る。うん。獣臭い。
「旅かー。ラルさん飼い始めたからいつの間にか選択肢から外れてたんだよねー…いやね、ラルさんが悪い訳じゃないのよ。行こうと思えばペットホテルとかあるから行けるわけだし。」
そう言ってラルさんに弁明する。
〔ハッハッハッハッ…〕
(気にしてないでー)と言わんばかりに肩にポンと前脚で叩く。あらやだなにこの子、かわいい。
「そう言えばラルさんや、あなた文字わかるの…ってここで聞いてもわからんか。外行こっか。」
リードを持つとお出かけ(散歩)の合図。それをわかったように玄関へ走ってくラル蔵君。
ーーー
別世界の家の外に出て、再びさっきの事を聞いてみる。
「ラルさんはこれわかるの?」
持ってきたさっきのノートに書かれた文字を指して質問。
〔…?わかんなーい〕
「そっか~お話しできるだけなのね。」
〔そだねー〕
「そっか~」
そう言い手元のノートに目を落とした。
(やりたい事ねー…)
今度は青空が微かに見える曇り空を見上げて
「探そうと思うと見つからないよね~…」
〔なにがー?〕
「やりたい事。」
〔へー〕
「まあ、あんさんが居るだけでだいぶ充実してるしこのままのんびりダラダラ残りの時間すごしても良いんだけどね~」
〔さんぽいこー〕
「話が噛み合ってないな…マイペースだな…」
そんなのワシは知らんと言わんばかりにリードを引っ張り散歩に行こうとするラル蔵さん。
「えー雨降りそうだけど行くの?やだよー。てか元世界戻ってそっちで散歩しようよあっち晴れてたし。」
〔えーいいけど、あっちだと《《おはなし》》できないよー〕
「お話ししたいの?」
〔したーい〕
ああ、かわいい。尊い。そんなこと言われたら断るわけにいかない。
「んじゃ雨カッパ持ってくるから一回中入って~」
〔え゛っ゛あれいや!〕
拒否ゴル発動。会話はしたいけどカッパは着たくない。ワガママ放題だなあんた。
ーーー
結局散歩は別世界でお話ししながら、雨がポツポツ降ってきたら急いで家に帰る。と言うことにしたのだけど…
「まあいくら急いで帰ってこようと、ワシ体力無くて走れないしびっしょびしょになるよね。」
1人と1匹、帰宅後風呂場へ直行。まずはラル蔵のお風呂タイム。
「こう言う時意志疎通出来れば結構楽なんだけどなぁ。窓開けとけばワンチャン喋れたりしない?犬だけに。なんつって(笑)」
ちょい寒いけど窓を開けてみる。
〔おもしろくないよ〕
「うわ喋った!」
これアリなのか。
「喋ってる…けど寒いよね。どこかお痒いところございますか~」
〔無いよー〕
「はーいじゃあ窓閉めまーす。あ、そうだ。ブルブルするの合図するまで待ってね!?あれでこっちに水飛んでくるの地味に嫌なの。」
〔わかったー〕
ラルの返事を待って窓を閉める。
〔ワンッ!ワンッ!〕
「はいはい。じゃあお湯流すよ~」
ーーー
それから一旦待避したあと、ラル蔵渾身のブルブルをしてもらって水を飛ばしタオルで吹いてドライヤーで乾かして…で次は自分の番。
1人の時間になって考えることはやっぱり"やりたい事"。
「なんだろなーやりたい事って。」
湯気でモクモクの浴室の天井を見上げる。
「………」
〈小さいことからでいんじゃないっすかー〉
「え、なに今の声。誰?」
突然の知らない声に戸惑う。
「……まあいっか。小さいことからね~…そう言えば家の裏の山少し気になるんだよね。どっかに遊歩道みたいなのあるのかな。有るなら行ってみるの良いかも。」
ザバッ!と音を立てて浴槽から立ち上がる。
「裏の山に行ってみよう!」
ーーー
「てことで裏の山に行ってみることにします!」
〔ワフッ!?〕
「まあ準備とか色々してからね。」
〔ワフゥ…ワン!〕
「うん。わからん。あ、窓開けてみれば良いのか。」
窓を開けた。
〔ワン!ワン!〕
「あれ?」
さっきの要領で聞こえるようになるかと思ったけどそんなこと無かった。さっきはなんで聞こえたんだろう?
湯冷めするのも良くないし、窓を閉めた。
「まあなにが言いたいのかは明日教えてよ。今外出たら湯冷めしちゃうでしょ。」
〔クゥーン…〕
「さてと、夜ごはんにしますか」
〔!!ワン!ハッハッハッハッ…〕
なんか言いたげな感じだったけどご飯の話をしたら機嫌が治ったみたい。そこまで重要なことではなかったのかな?
こうして今日も何気ない1日が終わってく。
1年経過まで
あと356日。
2年経過まで
あと721日。
ところで見てくれた方々、犬が…と言うか動物が喋るってなんか良くないですか。みんながみんな喋るってなるとちょっと…とは思いますが、身近な飼い犬とか飼い猫が喋りだしたらビックリもするけど愛しさ倍増しそうです。と思ったのがこの話を考えようと思った理由です。
因みに犬は小さい頃飼ってましたが、シャワーはしたこと無かったので、シャワーシーンは想像だったり、はしょり気味にわざと書いてます。