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死にかけ男と喋る犬のパラレルスローライフ  作者: ヤガチ
ケット・シーとグラタン
21/269

#21 死にかけ男はやることを決めたらしい

前回のあらすじ。


ちょっといけない散歩をした。


20**年1月2日(木)


 一夜明けた。時刻は10時半を過ぎた頃。しかし昨日が激務な1日だった上、寝たのも日付変わってからだったと言うこともあり1人と2頭は未だ就寝中。

 まあ巨大なモフモフを抱き枕にして寝正月ってのも乙なもんだ。




 そしてさらに時間が経ち12時。お昼の鐘の音でようやく1人と2頭揃って起床。


「おはようございます……」

 寝癖で無数の角が出来上がった死にかけ男はフラフラと起き上がった。


「おはよ…ねみぃ」

 リルはお爺ちゃん口調はどこへ…いつもに比べると口調が軽い。

 布団を挟んで反対側のクッションではラルが大きく口を開け欠伸していた。


ーーー


 朝御飯?に昨日の夜食べる予定だったグラタンをみんなで食べた。

 ラル用のはバターと牛乳と玉ねぎが使えないのでヤギのミルクでミルクスープを作っといた。具材はじゃがいもと鮭、少量のしめじだ。

 と言うか魔物なのがほぼ確定した今、わざわざ犬用のご飯を作る必要はあるのか…?

 まあ何かあってからじゃ遅いし暫くはこのままだと思うが。


「さて。リルが帰るついでに今日はこれから山に行こうと思います」

「行きまーす」

「して、またこの方法で行くのか…」

 そう、変則ブレーメンの音楽隊、またの名を抱っこ紐作戦。


「だってもう昼過ぎてるんよ。歩いていったら日が暮れちゃうし」

「そんじゃ行くぞ。捕まっておれ」

 そう言って変則ブレーメンの音楽隊は山へと出発していった。


ーーー


「う゛う゛う゛う゛う゛…」

 2匹の間に挟まれ気分が悪そうな渓口。本来はモフモフのサンドイッチで嬉しい筈だがそれを堪能することすら出来ずに顔を青くしている。


「タニグチだいじょぶか?」

「ダイジョブ…」

 上からの重み(ラル)からの問いに、顔を真っ青にした渓口はか弱い声で答える。


「住み処にもうすぐ着くから我慢せい」

「う゛っ゛……ごめん、下からの振動モロ食らって吐きそ…これいじょうは……ガマンキビシイ…」

 真っ青通り越して紫になりかけてる死にかけ男は片言でなんとか答えた。


「待てお願いやめろ!止まるから!紐ほどくから待て!」

 口調崩れたリルの顔には焦りが見え、急ブレーキをかけ、過去に例を見ない早さでおんぶ紐をほどいた。


ーーー


 渓口の嘔吐タイムも無事?終わり、なんやかんやで山頂に辿り着いた。山頂のフェンリル親子が住み処にしている洞窟にはリルの母ことリルママが寝ていた。

 そう言えば名前なんて言うんだろうか。


「そういや今日はなぜ山に来たんじゃ?」

「ああ、言ってなかったっけ?昨日のラルの件がなんなのか気になってリルママに聞いてみようと思って。それともうひとつ相談がありましてね」

 そう言う渓口はさっきまでの青ざめた顔色はどこへやら。血色の良い顔でニヤニヤと含み笑いを浮かべ、ルンルンで答えた。


「なんじゃそれは?」

「まあそれは後々。そんじゃ早速本題」

 そう言って昨日の映像をスマホに映しラル自身とリルママに見せてなんなのか聞いてみる。

 てっきりこの世界じゃ使えないと思ってたスマホ、通信が絡むこと…電話にネットなど…まあスマホの機能の8割方は使えないが、写真・動画の撮影やそれの閲覧・視聴は問題なく使えるようだ。

 まあ早い話ちょっとしたカメラとしてなら使える。


「…?これラルか?こんなことしてたのか?」

 何も覚えてないのかラルは首を傾げ画面を見つめた。


「覚えてないのか…」

「おぼえてないー」

「昨日リルのシャワーしてた時に吠えたのは覚えてるか?」

「おぼえてるー」

「その後の事は?」

「おぼえてなーい。おきたらひるだったー」

「てことなんだけどどう思いますかねリルママさん」

 昨日起こったことを問い正すが、浴室外から一吠えした後の事は覚えてない様子。それを踏まえて隣で聞くママさんに聞いてみた。


「別に良いことじゃないかしら?使えて困ることはないと思うし。あとは自覚持って魔法使ってくれればあなたの助けにもなるんじゃないかしら?」

「…なるほど?」

 渓口はママさんの言葉に一先ず頷いた。


 取り敢えずこの件は保留かな…魔法使えるようになったらそれはとても便利なんだろうし、ラル自身の自衛に繋がるだろうし良いんだろうけど…なんか今の関係性が終わってしまうような気がする。気がするだけなら良いけど。


「でも、まだまだ魔法をちゃんと使えるようになるには時間がかかると思うわ。もしかしたらあなたの寿命が先に来ちゃうかも?ゆっくり考えてみたら良いと思うわよ」

「そう言われるとなんか複雑だ…」

 ママさんの「ラルの成長を見る前に死んじゃうかもね(意訳)」と言う言葉に渓口は露骨に顔に出してゲンナリした。


「ラルの件は一段落?したしもう一個の方教えるのじゃ」

 そんなことは気にもせず。もう1つの相談事にワクワクしたリルが渓口を押し倒して問い詰めた。


「お、重い。降りて…」

 押し倒したリルの大きさは渓口とラルを乗せてきた大きさのままだ。息も()()えにリルをどかした。とてつもなく重い。


 魔法で大きくなるとその分ちゃんと重くなる。当たり前と言えば当たり前?かもしれないけど理屈がわからない。かと言って体だけでかくなって重さそのままだとそれはそれで意味がわからないが。一体どういう原理なんだろうか。


「あら、なにかしら」

「やりたいこと見つかったんです。上級魔物…その中でも二足魔物の皆さんって町で文化的な暮らししてるし他の魔物や動物に比べて人に近いじゃないですか」


 魔物の町へ行って気付いた。料理に関して無頓着なところが目立つが、これ見た目だけ変なだけ――と言ったら失礼か――で人となんら変わらないなと。


「それで自分もここ1ヶ月この生活してて思ったんですよ。自分の作った物を美味しいって言って食べて笑ってくれることが自分も嬉しいって」


 昔からちょくちょく料理はするし、それを義親に食べてもらって美味しいと言って貰えることは多々あった。けどいつの間にかそんなのも聞くことがなくなった。

 1人と1頭暮らしを初めてからは誰かに作ると言うことが無くなり、適当なものばっかり作り、数ヶ月~半年に1回気紛れに手の混んだものを作ることはあれど、他人に食べてもらうと言うことは無かった。

 だが、今回誰かに久しぶりに食べてもらってこういうのも悪くないな…なんて思ってこんなことを言い出した次第。


「うむ。そうじゃ。タニグチのご飯はうまいぞ!」

「ありがとな。だから上級魔物の方向けに食堂を開店させようとおもうんですよ」

「なるほど、良いわね。あなたのご飯好きよ」

 渓口の言葉に賛成と言わんばかりに狼親子は尻尾をブンブンと振りヨダレを垂らす。


「……親子だなぁ…じゃなくて。勿論自分の体調が良いときだけとかになっちゃうと思うけど…この世界での収入の基盤が出来れば良いなって」

「でもどこでやるのじゃ?」

「まずはサク達の住んでる町で始めたいな~なんて思ってるんだ。セグトの家借りるつもり。まだ本人には何も言ってないけど」

「不憫じゃのうあやつも…」


ーーー


 同時刻、山頂の洞窟から山を少し下った場所にある町のとある家にて。


「お?なんだ誰かこの俺の噂してるやつがいるのか?照れるぜ全く…それか風邪引いたか…?」

 3日後に家を間貸し?乗っ取られる?ことになる火炎竜は火の粉混じりのくしゃみを繰り返しながら呑気に考えてた。




1年経過まで

    あと332日。


2年経過まで

    あと697日。


セグトの平穏な日常終了まで

      あと3日。

13本目!


 ようやっと方向性が固まってきたかもしれません。

 そしてやっぱり不憫な火炎竜さん。火炎竜さんの行く末は?

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