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死にかけ男と喋る犬のパラレルスローライフ(仮題)  作者: ヤガチ
死にかけ男性と獣人の賢者達
202/209

#188 再訪、山下家(一)

前回のあらすじ


作戦会議(本)


20**年11月12日(水) AM8:00


 虎兄妹の一軒家で一夜開けた。

 結局愛用のフワフワ布団は黒靄に持ってかれ、煎餅布団で寝たが意外にも安眠出来た。

 翌日に大一番が待ってると言うのにだ。


 翌日になにかしらの大イベントがある時、小学生の遠足前夜然り、中高生の修学旅行前夜然り、修学旅行の夜然り…全然寝付けなくて本番中は寝不足で死んでるのが常なのに。


 行く準備を一通りして現在2人と1体は地下室にやってきた。


「とりあえず昨日の計画通りに進んでくれれば良いんだけども…」

「計画なんてあってないようなもんだろ。ましてやあっちの出方が決まってるわけでもないし」

 渓口の懸念点に黒靄は身も蓋も無いことを返した。


「まあ方向性は決まってるし良いんじゃない?」

 一同は軽口を叩いて緊張を解した。


「さてと。黒靄、あっちのワープ先?転送先?はなるたけ家の入り口から遠いとこにしてくれよ。いきなり門の前に現れて門番に見られるのも良くないだろうし。あと着地地点を痛くない場所に…昨日はベットあったから良かったけどさ…」

「注文多いな…まあ出来るけど。そんじゃ準備出来たならさっさと俺に飛び込め」

 目の前のジャージ姿の男の形が崩れ、黒い靄に変化した。


「昨日はいきなり足元の地面が無くなって落ちたからこんなこと考える暇無かったけどさ…いざそれが意識ある生物?と認識しちゃったら少し抵抗感あr」

「うるせぇ入れ」

 今更言い訳をし始めた渓口に辟易した黒靄は、靄の一部を渓口の背後に伸ばし腕を実体化。ゴスッ、と中々の音を響かせ靄の中に突き落とした。


「あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁ……」

「て事だから虎さんもいつでも来れるように準備と覚悟しとけな。それじゃ~」

 黒靄は口をガクンと開けて唖然として見てたハルキにそう言い残し、渦を巻いて消えていった。


「…準備は出来てるし…覚悟決めますか」

 ハルキは大きく深呼吸をして少し散らかってる机の上に手を翳し、モニターのようなものを起動した。


ーーー


 AM7:00


 少し時間を巻き戻して小高い丘の上のお屋敷にて。


「…言いたいことは昨日ハルキに伝えた。あとはあっちでどう作戦を立てるかだけど…どうなるんだろな…」

 どこか他人事な、半ば諦めかけてるハルアはそう言いながら寝巻きから昨日よりもラフな格好…いつものダサい私服に着替えた。


ーーー


「…ナンカトテモキモチワルイヨ……」

 背中を押され異空間を落ちてるのか昇ってるのか…どこへ進んでるかわからない渓口。その顔は青白く染まってた。

 昨日は状況整理で頭を使ってたからそんなこともなかったが、本日は考えることが無く…その結果朝御飯が逆流しかけてる。


「クロモヤサン…イマココデハイテモイイデスカ…?」

「張っ倒すぞ」

 珍しく黒靄の事をさん付けして懇願するも、黒靄からは冷たい返事が返ってきた。


「それなら早く着いて…オネガイ」

 色々限界な渓口は再び懇願した。


ーーー


 靄の中に突き落とされてから約5分くらいだろうか。お屋敷から少し離れた所に前転受け身をし無事着地した渓口は、勢いそのままに立ち上がり、覚束ない足で流れるように木の影に踞った。


「オエ゛ッ…」

「はー…これからだって言うのにだっさいなぁ」

「しゃーないだろォロロロロロ…」

 渓口は背後から聞こえる悪口に答えながらも引き続き吐き出した。気付いたら黄色い胃液まで吐き出し口の中に苦味が広がった。


「…吐ききった。よし、行くぞ。」

 まだまだ青白い顔に冷や汗を垂らした渓口は口を拭いながら片方の口角を上げ不気味な笑みを浮かべた。


「言動と表情と顔色が噛み合ってねーよ」

「……ごめんやっぱり少し休憩。目が回ってる…」

「さっさと目ぇ覚ませ~……ん?誰か来る。すまん隠れる」

 お茶ら毛ながらも心配する素振りを見せる黒靄は何かに気付き姿を消した。


「え?ちょっと待て!」

「だいじょーぶ大丈夫。いつもみたいに隠れてるだけだっての」

「…それもそうか。なら別に…いや誰が来るんだ?」

 渓口が質問したが、虚空に消えた黒靄からの返事は返ってこなかった。


「無視かよ。まあ良いか。黒靄居なかったら元から1人で来る予定だったわけだし」

「あら?渓口さん。こんなところに居たのね…何してるのこんなところで」

 渓口が岩に腰掛けてそんなことを呟いたら上空から声がかかった。


「…夏輝さん。散歩ですか?」

 空に目を向けると箒に乗る夏輝がいた。ハルアやハルキと違い、跨がることもなく両足を片側に下ろし、おしとやかに浮かんでいた。


「散歩~じゃなくてあなたを迎えに行ってたのよ。あなたどこ行ってたのよ。駅前のホテル行ったけどいなかったじゃない」

「訳ありまして別のところに泊まってました」


 黒靄の瞬間移動で一旦街に戻ってました~なんてこの世界(ニポン)ですら現実離れしたこと言えるわけがない…


「あらそう…ってそれどころじゃないのよ!伝えておきたいことがあって迎えに行ってたのよ!夫が…晴俊が今日の夕方帰ってくるって言ったでしょ?それが昨日の夜帰ってきちゃってて…」

「え…え!?」

 井戸端会議特有の掌をヒラヒラさせながら話し掛ける夏輝の口からは井戸端会議どころじゃない飛んでもスクープが飛び出してきた。


「マジですか…」

「マジよマジ」

「そうですか…少し考えさせてください…」

 そう言い目を瞑り立ち止まった。


ーーー


 ここは渓口の頭の中、脳内会議室。

 長机が3つコの字に並び、各々にイスが1つ、座るは渓口、ハルキ、スーツ姿の男(くろもや)


 まああくまでイメージなだけで実際に居るわけではない。


『ハルキさーん、黒靄、今の聞いてましたかな…』

 渓口は想像上の1人と1体に視線を向けて脳内会議を始めた。


『あっちゃー。早速計画破綻っすか』

『やること自体は変わり無いけどね』

 顔をしかめる渓口とは裏腹に脳内に流れる2人の声は飄々としていた。


『まあそうなんですけども。確かにやることは変わりませんけども。黒靄はそのまま姿隠してハルアさんに接触次第、解呪を頼む。ハルキさんは引き続きそっちから監視お願いします』

『あーその事なんですけどね?多分だけどこの後思念伝達が遮断されると思うんですよねぇ。昨日玄関で頭痛起こりませんでした?』

『そう言えばズンッと頭が重くなったような…その後の事が大き過ぎて忘れてた。あれが遮断の合図だったのか』

『このまま行けば母がいるのでこの前みたいにレンズを玄関前で取れ…って事は無いと思いますけど』

 これまたあっさりとハルキは言い放った。



『ふむふむ。それなら私が遮断魔法を遮断しましょうか』



 そんな声と共に脳内会議室に一対の長机とイスが生えてきた。

 ぐるぐると回りながら生えてきたイスには隣を歩いてた筈の夏輝がドデンとふんぞり返ってた。


『…ハルキさん。何故ここにあなたのお母様がおるので?ここって俺の頭の中ですよね?云わば仮想空間ですよね??』


~~~


 頭の中でハルキにそう言った後、ゆっくりと目を開けた。すると現実…長い長い塀の横で立ち止まる渓口、その隣には箒を持った夏輝さんがいる。


「夏輝さん」

「はいはい」

 現実では隣をニコニコの夏輝がこちらを覗き込んでる。

 その夏輝に声を掛け、目を瞑り脳内会議室に集中する。


~~~


『…どっちにもいるな』

 再び目を閉じた先には、いつの間にかコの字から口の字に並び変わった机に先程までの3名にプラスして夏輝が座っている。


『現実にも頭の中にも夏輝さんがいる…なんで?』

『…あー』

 想像上のハルキは閥が悪そうに返事をした。


『ダメよ、ハルキ。ちゃんと遮断しとかないと。こうやって潜り込まれるわよ?』

 夏輝のお小言にハルキはなにも言い返せずに俯いた。


『それと…もう1人変な気配は…貴方ね』

 夏輝は懐から鉄扇を取り出し、黒靄に向けるとスーツが崩れ黒い靄が現になった。

 あれも魔杖みたいな道具なんだろか。それとも格好つけのアクセサリーみたいなものだろうか。


『…おいおい。なんなんだこいつは?敵か?味方か?』

 不意に正体を見破られた黒靄は語尾を荒らげ警戒態勢を取り始めた。


『あのー俺の頭の中でドンパチすんのはやめてよ!?頭ぶっ壊れて廃人コースとか嫌だよ?』

 どういう原理かわからないが、このままだと脳内会議室が脳内戦闘場になり兼ねない。そんな気がした。


『あらあら!そんな警戒しないでよ!私は貴方達の味方よ?』

『夏輝さん。味方になってくれるのは嬉しいんですけども…その、今回の事に関しては完全に味方認定出来てる訳じゃないんですよね。今回の話し相手が貴女の夫さんなので…だから、そのー…』

『下手に足を突っ込むな』

 どう言おうか迷う渓口の意図を汲み取って?か黒靄がズバッと言い刺した。


『そう!いや、違う!そうじゃなくて…』

『あらまあ…姑に向かってそんなこと言っちゃうの…?悲しいわぁ』

 夏輝は頬に手を当て困ったような顔を見せた。


『でもその警戒は良い心掛けよ。それじゃああんたらだけで頑張り~』

 そう言い残し、夏輝は高笑いとイスと共にグルグルと地面(?)にめり込んでいった。


『なんなんこの人…』

『私にもわからない…』

『娘にわからねーならもうどうしようもねーな』

 黒靄の一言を聞き、渓口は脳内会議室を退室した。


~~~


 所変わって現実、長い長い塀の横。


「…まあ頭の中から消えても隣にいるんですけどね…」

「あら、私はなにも知らないわよ~オホホホ」

 明らかになにか知ってるであろう小柄な虎は、脳内会議室からの去り際に響かせた高笑いを目の前で実演した。


「頭の中と同じ高笑いされながらそう言われましてもね…ハハハ……」


 男と虎獣人の奥様は再び長い長い塀沿いに歩き出した。

202本目!


(現在抗がん剤治療中に付き話や考えがフワフワしてます。後々大幅な改稿の可能性アリです。)



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