#17 "ニポン"の友達と男子会
前回のあらすじ。
タニグチ、日本に友達がほぼいないことに気付く。悲しい。
《それにしても夜ごはんご馳走になるなんて良いのか?》
「いいよー喋り相手いた方が楽しいしなー」
《なに言ってんだ?ラルがいるじゃないか。》
『おうそうか。セグトはここ来るの初めてだもんな~知らないよな~』
自慢げにリルが話す。
なんでお前が自慢げなんだよ。
「そしたら家の中入ってみ?羽ぶつからんよう気を付けなーラルも中入ってー」
《狭いな。もうこの羽使えんし切っちゃおうか。》
そんな髪切るみたいなノリで言うなよ。この火炎竜、ためらいとか無いのか?
「羽無くなったらトカゲと一緒だぞ(笑)」
《ほう、口が達者だなぁオークさんよお(笑)》
「それはオークに失礼だから(笑)」
軽口叩きながら玄関をくぐる。
「ラルさーん?」
〔ワン?〕
《お?なにいきなり犬らしくなってるんじゃ?》
〔ワン…ワゥオワン!〕
《…もしかして、この家の中だと喋れないのか?》
「不正解。あの世界だから喋れるんだよ。」
《ん?なにを言ってるんだ?あの世界だとって…世界はひとつだろ?》
なんかこのなにも知らない感じ、元日ぶりで面白いな。
「ラルーちょっと来てくれ」
〔ワン!〕
「見てろ?まず一回ドア開けるだろ?」
《なんだ?さっきとなにも変わらんが?》
「んじゃ一回閉めまーす。んでまた開けまーす。」
《なんだ?なにか変わったのか?》
「え?いや変わってるじゃん。わからん?」
《なんだ?》
「リルママのスパークでやられてまだ目が回復してないのか??節穴か?そのまま…出ると目立つな。しゃがんで家の回りキョロキョロしてみな」
《なんじゃ?あれ?芝生がないぞ。あれ???裏山もないぞ!?!?どう言うことだ!?》
おーナイスリアクション。
「ハイハイ目立つから引っ込んでー。」
《おいどうなっとる?なんか景色が違ったぞ!?それに裏山もないぞ!?どうなってる?俺は帰れるのか??》
そう言ってゆさゆさと揺するセグト。
「揺らすな揺らすな……だー!!!!落ちつ…けっ!」
渓口のパンチ(最弱)がセグトの腹に炸裂。
《すまん。少し興奮してたわ。》
このままじゃ延々とうるさそうなのでもう一回扉を開けて外を見せる。
「はい。元の世界。」
《ほんとだ。なんだこの扉。面白いな!》
「てことで、俺とラルは本来はもうひとつの世界の住人なんだ。あ、この事はそこのリルとママとお前しか知らんからな。内緒な?」
《はえ~面白人間だな!わかった!》
俺から見たら魔物のが面白生物だよ。
ーーー
「そんじゃ飯作りまーすリルはご飯抜きな」
『ええ!?ワシ許されとらんのか!?』
「許されてませんねー残念ながら。」
『そんなぁ…』
そう言いヘナヘナとへたり込むリル。
《リル、お前なんかいつもの口調崩れてねーか?》
「あれ役作りだもんなーリルさんや。」
『……ワシが気を許せるのはラル、お主だけじゃ。ふて寝するぞ。ラルもこっち来るのじゃ…』
ありゃ拗ねちゃった。
〔ワフ?〕
そう言いご飯を待ついつもの定位置に居座り尻尾を振るラルさん。
ありゃ、ラルさんにもフラれた。
『………寝る。』
そう言って魔法を解いて元の大きさになってふて寝する。
ここで帰らないのはひとりじゃ帰れない(結界を割れない)セグトを思ってなんだろう。
ーーー
「さて、作りますか。」
今日のメニューはしょうが焼きだ。
用意するのは豚肉、玉ねぎ、しょうが、ニンニク、醤油、料理酒、みりん(砂糖)。
まずは玉ねぎを具材用にくし切り、タレ用に適当にざく切り。タレ用のはこの後ミキサーにかけるからミキサーが止まらないくらいに切れば大丈夫。
豚肉も食べやすい大きさに切る。もう一手間加えるとしたら切ったあとボウルに小麦粉と豚肉をいれてフリフリして薄くまぶしても良いかも。肉の水分が飛ばずにジューシーかつ味のノリも良くなる。気がする。うちのしょうが焼きは豚コマ肉だ。理由?安いから。
生姜とニンニクはチューブのやつでも良いし、生のを擦り卸すのでもどっちでも。生姜は自分の気の済む好きな量を。ニンニクはほんの少し、隠し味程度で良い。むしろいれなくてもそれなりに美味しいものは作れる。これで切ったり擦ったりするのは終わり。
続いてタレ作り。
ミキサーに適当に切った方の玉ねぎ、生姜、にんにく、醤油、みりんをいれる。みりんがない場合は変わりに料理酒(水)と砂糖をいれれば良い感じ…?多分。
それらをミキサーでぐるぐるして完成。
あとは炒めるだけ。
油を敷いたフライパンに肉と玉ねぎを投入。玉ねぎがしんなりして肉の色が変わってきたら料理酒を投入。煮ていく。この後タレいれて煮詰めていくのでそんなにドバドバいれなくて平気。チョロチョロ~って感じでフライパンを1.5周くらいの量。
時間的には焼く行程より煮る行程の方が長いので、うちのは「しょうが焼き」と言うよりは「しょうが煮」って感じだな。
煮た方が肉が柔らかい……気がする。気がするだけかもしれないけど。
火が入ったと思ったらタレをいれて馴染むように少しフライパンを煽る。んで少し煮る。
煮ている間に千切りキャベツを器に思ってる倍載せる。しょうが焼きのタレがかかってしんなりしたキャベツはご飯のおかずになります。異論は認めません。
肉と玉ねぎに火が入ったら、肉を取り出しタレを強火で煮詰めていく。
煮詰まって粘度が出てきたらタレを回しかける。これにて完成!
ラル用には極少量の塩としょうがで味付けして茹でた豚肉を用意した。
塩しょうが焼き…あれ、結構旨そう。今度普通に作ろう。
ーーー
「できたよーリルも起きろー」
《旨そうな匂いだな!》
「リル起きろー」
足でゲシゲシと蹴る。
『…なんじゃ。ワシのはないんじゃろ。』
「冗談だって。いや、あの時は本気だったけど。」
『てことはワシのもあるんじゃな!』
「はーいありますよーだから小さk…」
『なったぞ!』
そう言って机の定位置で待ち構えるリル。
おお、切り替えが早い。こいつも大概お調子者だよな。
《なんか手伝うか?》
「そしたらこのお皿持ってってー」
《あいよー》
セグトと一緒に配膳していく。
「それじゃ…」
いただきます!
ワン!
《んまいぞこれ!》
目をキラキラさせて口にかきこむセグト。
『うまいぞ!これ!タニグチゴハン暫定1位じゃ!』
汚れなど気にせずがっつくリル。ああ、風呂行きだこれ。
〔ワン!〕
(…ラルとリルとセグト…みんなでご飯食べれて良かった。あの時リル達が手伝ってくれなかったら…もしかしたらここにセグトはいなかったかもしれないんだし。)
ついこの前のことを思い出して感傷的になってしまった。
「そうか!美味しいか。そりゃ良かった!……ところでセグトさん?リルさん?もっと美味しくしたくないか…?」
瞬間セグトとリルの動きが止まる。
《なん…だとまだ美味しくなるのかこれが…?》
『この匂い…まさかまよねーずか!?』
そうか、リルはこれ食べたことあるもんな。
「リルさんだいせいかーい。てことでこれをどうぞ。」
リルとセグトの皿にちょこんとマヨネーズをのせる。
《なんだこれ…?》
『まよねーずじゃ!こう…なんとも言えない美味しさじゃ!』
《ふーんそうか…》
訝しげなセグト。一口パクリ。
《!!!おお!!なんか味がモッタリ濃くなったぞ!こりゃうまい!!》
「そりゃ良かったですわ~ところで気になるんだが、ひとつ良いか?リルとセグト2人にだ。魔物領と人間領って行き来自由だろ?それで文化水準も多分似たような感じだろ?その割に人間領の食に関して知らなすぎないか?毎回作る物材料一つにしても驚いてるし。」
しなしなキャベツを口に頬張りながらセグト達に聞いてみる。
《あーそれはあれじゃねーか?魔物は基本手の込んだ料理ってもんを作らんからじゃないか?調味料も塩とあっても胡椒くらいしか見かけないし。》
あー誰だっけ。誰かが言ってたな。そのまま食べるか焼くかぐらいしかしないみたいなこと。リルママだったかな。
《それに相互に行き来自由と言っても、好き好んで人間領に行くやつはそうそういないしな。だから魔物は人間領についての知識がないやつばっかだぞ?》
「へー"人間領の文化"みたいな感じで学校で習ったりしないもんなのか?」
《あーこっちじゃ学校なんて行くも行かないも自由だからなー言葉とか日常で使う計算だって親から教われば済むからな。それに俺が小さかった頃は学校なんて無かったしな》
言い切りガハハと豪快に笑うセグト。
人間で言うところの「中学校で習ったこの数式いつ使うんだよ!意味ないだろ!」みたいなのを学校に行かないことでスルーしてるわけか。なるほど……なるほど?
まあそれで魔物領が成り立ってるならそれで良い…のか…?
『それに四足歩行の世界じゃ力こそ全てじゃしそこまで学ぶ必要ないしのう。』
それもそうか。弱肉強食の世界でいきなり「計算で勝負だ!」なんて始まるわけがない。
「ふーんじゃあ魔物領で人間領のご飯だしたら物珍しさに行列できちゃうかもな!」
ーーー
「セグトー。お前風呂入ってくかー?と思ったんだけど背中って傷一応塞がってるんだよな?嫌だよ、風呂場真っ赤になってドラゴンが浮かんでるなんて」
《おう、良いのか?それなら風呂入るぞ。まー怪我は大丈夫じゃね?そんなことより温度の方が不安なんだよなー。この風呂最高温度何度だ?》
「えー…」
給湯器を弄ってみる。
「60℃だな。」
《温いな》
「は?」
《もうちょい熱くないとなぁ。》
昼間から思ってたけど、とんでも生態だな火炎竜。他のドラゴンも種族ごとにこんな感じなんだろうか。
《まあ俺が温度あげれば良いか!とりあえず60℃でよろしく頼む!》
「…?どうやるんだ?わかった。60℃にしとくよ。」
ーーー
《ふぃ~いい湯だな~!アッチアチで良い感じだ~》
「なぁ、セグトータオルここ置いとくからなー…」
そう言い浴室の扉を開ける。
「ってあっっっっっつ!?!?なんだこれ??サウナ?何が起こってんだこれ?」
オレの家の風呂はそれなりに広い。デブの自分より横も縦も一回り大きいセグトが普通に入れるくらいには広い。その空間が湯気で真っ白。そして熱い。
《おう!タニグチ!お前も入るか?》
「セグトこれなにをした?」
《ん?俺の腕から火を出して温度あげたんだ♪》
そんなこと出来るのか…
《入るか~?》
「入れるかこんなん!こんなん入ったら全身やけどだわ」
と言うかこれ大丈夫か?主に浴槽が。
「セグト!これ何度くらいなんだ?」
《んー体感的には75℃ってところかな?》
一般的な浴槽は60℃くらいが限度らしい。こういうのって大体は上限より低めの数値を表示してるもんだろう。75℃…ギリギリセーフか?
「……セグト、お前出禁だ。風呂がぶっ壊れる…」
ーーー
《いんや~いい湯だったぞ!…それはそれとして次からは気を付けるから出禁は許してくれ…》
そう言いセグトは真っ裸で土下座…?短い足を前に投げ出して前屈するように頭を下げてる。
「…はぁ……まあ1回目だから許すよ。3回目で出禁な。」
『迷惑かけるでないぞ?』
「リル、お前もだぞ。故意に縮小魔法解いた前科があるからな」
『そんなぁ…』
流れ弾が当たって涙目のリル。
自分は許された!と思ったのかセグトは布団に転がった。家では基本真っ裸らしい。まさかの裸族。いや、竜的にはそれが普通なんだろか。俺も竜が服着てるイメージ無かったし。と言うか俺の布団なんだけど…まあいいか…
セグトが風呂を出てから少しのあいだ換気…と言う名の温度下げと湯もみをした。まさか家で草○温泉の真似事することになるとは思わんかった…
「風呂の時間でーすリルさん。てかいい加減ひとりで入れないもんなのか?おんぶ紐作戦の時魔法で紐結んでたよな?それの応用で出来ないもんなのか?」
『む?多分《《しゃわー》》の使い方教えてくれたら出来るぞ?』
「早よ言えや!入ってこい!重労働なんだよお前のシャワー!どうやるのかわからんかったら呼べ!」
『やってもらうから気持ちいいんじゃ…』
「なんか言ったか?」
『ハイッテキマース』
『♪~♪~!!!!あっっっっっつ!タニグチー!!!!!』
「今日の風呂は騒がしいな。なんだ?」
『タニグチ!めちゃくちゃ熱いんだけど!!!いくら水が嫌だからとこんなアッチアチは無理じゃ!!』
給湯器のほうを見る。
「あっ、設定温度下げ忘れてたわ。ごめん。」
ーーー
なんやかんやで全員風呂入り終わった。ラルは汚れてないから無し。
そんで風呂入ったってことはまあお察しの通り、泊まっていく。もうなんか人間生活体験みたいな感じで金取ろうかなとか思い始めた。
「んじゃセグト、お前そのまま布団使って良いぞ。俺は…布団出すのめんどいからリルで寝るわ」
《わかった。ありがとな。》
『布団扱いするでない。』
「てことでリル、真上から乗ってくれ。寒い。ラル~こっち来て~一緒に寝よ~」
『ラルと扱いの差が酷くないかのう…』
「今に始まったことじゃないだろ。」
《お前も苦労してるな~おやすみ~》
『そうじゃろ。なんか理解してくれるやつが増えてくれてワシは嬉しいぞ。おやすみ~』
「ハイハイおやすみ~ラルもおやすみ~」
〔ワフゥワン!〕
18本目!
18本目にしてそろそろヒロイン的なポジションの方をいれるべきかもな…と思い始めた。(リルママとかサクとかカフェ店長とかいるけども若さが足りない気がする。)
今回の料理はしょうが焼きです。しょうが焼きの生姜はいれればいれるほど美味しいです。豚のしょうが焼きの肉、何にする問題、これもまた各家庭でばらついてきますよね。安上がりに量を食べたい派のコマ肉、オイリーなバラ肉で作る派、いっそおしゃれに分厚いトンテキ用ロース肉でポークジンジャー等々…どれもありですよね~
本文書いてるときに(塩しょうが焼き…ありかも?)なんて思ったしそれを書きましたが、それってコンビニとかの塩カルビ重の上のやつ(伝われ)みたいなのかな?と思った。けどそれより生姜を効いた感じにすればさっぱり食べれそうですよね。
と思って作ったんですよ、醤油を塩コショウ中華だしに変えて。少し生姜の強い塩カルビ重の上のやつになりました。なるほど。この料理飽和社会、新しいもの作るの大変っすね。それは小説や漫画も一緒ですかね。