#16 "日本"に友達がいないことに気付いた。
前回のあらすじ。
男2人男泣き。
20**年2月**日(月)
今日は久しぶりに"日本"で遠出している。と言うのもただの定期検診だが。
〖あれから体調どうよ。あ、明けましておめでとう。〗
そう言えば年明けてから会うの始めてだったなと、かかりつけ医、ユージが挨拶。
「んーこれと言って体調の変化は感じられないかなー。明けましておめでとう。」
それに合わせて質問と挨拶を返す渓口。
〖そっか。一応血液検査上も2ヶ月前から特に変わりはないかな。ちょっとコレステロール値が高いけど…今年の抱負はなんだ?健康的に痩せるか?〗
矢継ぎ早に2本くらいの言葉の矢が刺さった。
「う゛っ゛…抱負かぁ…痩せる…はなんだかんだちょっとずつ痩せてるんだよな。んー目標…無いな。」
〖何かしらあれよ。〗
口調が"先生"から"友人"に変わってきた。
〖…それよりなんかあったか?〗
渓口の雰囲気が少し違うことに気付いたユージが聞く。
「なにが?」
〖なんか良いことあったのかなーって。前より気持ち晴れやかになってる気がするけど。〗
「お、わかっちゃいますか?いやーね、新しいことに挑戦しようと思いましてね。色々やってるんですよー。」
〖例えばなんだ?〗
「そーれーはー!……内緒で。」
危うく喋りかけた。一応こっちの世界で変なこと言うのはやめとこう。いくら友人と言えど。
〖…そうか。まあ、前向きになって楽しんでるならそれで良いか。はい。それじゃ診察終わりねー、次はまた2ヶ月後。〗
そう言って"友人"から"先生"に戻ったユージ。
「そう言えばこの前言ってたどっか出掛けようーてのはどーなったんだ?仕事忙しい感じ?」
〖あーあれかー。忙しさもあるけど単純に寒くて外に出たくない。春以降にしようぜ。〗
あーこの人そういや出不精だったな。インドア派で休みの日は布団から出ずに延々とゲームやってるとか言ってたっけ。
「それじゃ春以降によろしくね~ラルも楽しみにしてるからな~」
〖ラル坊も楽しみにしてるのか~それならとっておきの計画建てとかないとな~。そんじゃお大事に~〗
ーーー
「さて、ただ帰るのもなんだかなぁ。なんか適当に散歩してみようかな。」
折角家から電車で2時間かけて病院のために都内に出てきたんだ。適当に歩いてみよう。
「とは思ったけどな。特に行きたいとこもないんだよな。寒いし。」
曇り空の下、公園のベンチで考え込む。
赤と白のあのタワーは…晴れてるときに行きたいよなぁ。634mのあのタワーも同じく。
場外市場は…現在時刻は昼を過ぎて14時前。店仕舞いが始まってそう。
「んーやっぱり来るなら病院とは別で普通に来た方がいいなー」
と思ったが…
「でもそんなことするなら"ニポン"に行ってみんなと遊んでたいなー」
そんな言葉が出てくるくらいにはあっちは居心地が良い。いつの間にか自分の居場所があっちにばっかあることに気付いた。そしてふと気付いた。
「"日本"にユージ以外に友人がいなくない…?」
とてつもないことに気が付いた。いや、気が付いてしまった。
知人はいる。が、それが友人かと言われたら違う。学生時代の友人とはもう連絡を取ってない。
唐突に気付いた"俺には友達がいない(ほぼ)"と言う事実に頭を抱えて公園のベンチで頭を抱えた。
ーーー
「と言うことがありましてね~」
『それはー…なんとも言えんのう。まあこっちを気に入ってくれてるなら嬉しいが。』
《おう!こっちでたのしけりゃそれでいいだろ!》
〔ラルはどっちでも楽しいからどうでもいーやー〕
と2人と2匹が話すのは渓口家の外。俺とセグトは家の中から机と椅子を出して座る。ラリルは遊びながら時たまこっちの話しに割り込んでくる。
《ところで…なんで外なんだ…?……普通に寒くて…死にそうなんだが…》
他者より格段に寒さに弱いセグトが牙をガタガタ言わせ、フーーと炎を吹いて手を温めながら聞いてくる。
「ラルさん遊ばせてるからかなー。」
《そういやラルはなんの魔物なんだ?。》
「え?魔物…魔物?どうなんだろ。一応は普通の犬な筈なんだけどね。魔物なのか犬なのかよくわからない。不思議ー」
ハハハーと感情の籠ってない笑い声を発する。
《お前は理解しとけよ。せめて。と言うか普通の犬が喋るわけ無いだろ。あとなんか飲み物くれないか。熱湯くれ。》
「わかったよ。お湯沸かしてくるからその間ちょっとラリル見といてくれ。道路出ないようにとか。まあ大丈夫だと思うけど」
《任せとけ!》
ーーー
《あーあったけー…生き返る…》
そう言ってぐっつぐつの熱湯を飲み干す。嘘だろ。これが火炎竜なのか。
《そう言えば出店で使う机ってもう用意したのか?》
ヤカン(アツアツ熱湯入り)に手をぴったりくっつけてセグトが質問する。
「いんや?ここ最近色々あったからまだ用意してないけど。」
《それなら俺が用意して良いか?》
「家借りるのに机まで用意してもらうのは申し訳ないよ~」
《そんなこと言わずにさ。まだこの前のお礼も返しきれてないしな!》
「なあ、お前俺にばっか礼を返してないか?今回のMVPはリルだぞ?」
そう言ってリルを指差す。
《ああ、それなら理由があってな。リルに礼をしようとしたらな…》
ーーー
20**年1月9日(木)PM3:00
タニグチが病院に見舞いに来る前日。
《リル、それにお母様。今回は大変ご迷惑お掛けしました。》
そう言って2匹に向かって頭を下げるセグト。
〖あらまあかしこまっちゃって!怪我人でしょ?安静にしなさいな。〗
『うむ、苦しゅうない。表をあげい!!』
〖馬鹿なことしてんじゃないよ!〗
リルママの肉球パンチ(最強)を食らうリル。
《つきましてはなにかお礼をしたいのですが…》
〖私はサポートしただけよ。礼を言うならこの子にね。〗
『ふむ。ワシにも礼はいらぬぞ。ぶっちゃけワシだけならお主見殺しにしてたぞ。多分母も同じだぞ』
《………》
〖オホホ…そうね。〗
リルママも同じ意見な様子。
『タニグチがいなきゃワシは動かんかったのう。あやつ、目の前で生死を彷徨ってる友達がいてなにもせずにいられるか~!って言って魔力全てワシに譲ったんじゃぞ。』
《タニグチ…あいつめちゃくちゃ良いやつだな…》
『今さら気付いたのか?セグトは魅力に気付くのが遅いのう?』
鼻高々に謎マウントを取るリル。
《…まあそう言うことならあいつにリル達の分もお礼するかな。》
ーーー
《と言うことがあってな。そう言うことだ。》
「だーからあのときの恥ずかしい言葉知ってたのか…まあ俺も空から落とし落とされる仲じゃなかったら助けたいなんて思わなかったけどな~(笑)」
照れ隠しに黒歴史を交えた冗談を言う。
《なにが恥ずかしいんだよ~俺は嬉しいぞ~!なあタニグチ!…あれ?》
渓口の座ってた方を振り向いた。が、いない。リルの方にニッコニコで近付いてく。
「リル、お前があの恥ずかしいとこをセグトに話したんか……???」
リルの頬をブニっとつまむ。
『え?なんおこおゃ…?』
「……目の前で生死彷徨ってる友達がいてなにもせずにはいられないだろって臭い台詞のこと…!!」
赤面し湯気が出そうな渓口。
『おお、いっああ。なんあまうあっあか?』
あっけらかんと答えるリル。
「…はぁ。はずかしい…今日の夜ご飯抜きな!」
『ええ!そんなぁ…ごめんなさい…』
綺麗な土下座(?)を決めるリルさん。
おお、なんか久しぶりにかわいい感じのリルを見た。かわいい。直前までリルの分は無いように見せてやっぱりあげよ。
「セグトーさっきの机の件だけどさー頼んで良い?」
《おう!大船に乗ったつもりで任せろ!》
17本目!
皆さん新年の抱負とかってちゃんと達成します?自分は毎年年始に考えてますが、年末の頃にはなーんにも覚えてません。ちょうど良いタイミングですし来年はなにかしら書いて部屋に飾っとこうと思います。
ちなみにコレステロール値が高いと言うのは実話です。健康診断でそう書かれてました。まずいです。正常値に戻さないとね…