#14 タニグチと暴れ竜(前)
前回のあらすじ。
井戸端会議でこれからやることが決まった。
20**年1月5日(日)AM10:00
今日は朝からセグトの家にやってきてた。
「この街でご飯屋を開こうかな…って思ってさー。期間限定&不定休だけど。」
《それは良いな!タニグチのメシが毎日食えるのは嬉しいぞ!それで相談ってのはなんだ?》
ドン!と、段ボールを机の上に置く渓口。
「そのー…台所貸ーしーてっ♥️そんでお店の営業日の前日から準備を兼ねて1人と1匹泊ーめーてっ♥️」
〔おーねーがいっ♥️〕
段ボールを添えて頭を下げる渓口と真似するラルさん。
おお、ラルさん。あざとい。俺だったら段ボールなんてふっ飛ばして即落ちしてた。
《ええ…》
ドン引きするセグト。
《それで…この段ボールは…なんだ?》
「タバスコにございます…」
段ボールを開けて中身を見せる。
《お、おう…ぶっちゃけお前が泊まる日に俺のご飯作ってくれるなら別に良いけど…》
「まじで!じゃあこれは要らないね?」
《待て待て待て、それは貰うぞ》
わかるや否やタバスコ段ボールを下げようとする渓口を制止する。
ーーー
「取り敢えず出店場所ゲットー!」
〔げっとー〕
出店するのはセグトの家の前。セグトの家は表通りから外れた奥まったところ…と言うか他と離れてポツンとあるが、そもそも売れるかわからないし小規模から始めていこうと思う。と言うかあまり大規模に開いても私の体力が持たない。
不定期営業で、売るのは1日1品(日替わり)。品数増やしてもパンクしそうなのでこれは絶対。値段もわかりやすいように500円固定。頭ヨワヨワナノデネ。
開店のために用意するのは長いテーブル1つ。あの公民館とか会議室とかによくあるやつ。取り敢えずそれをセグトの家の前に置いてそこで売る予定だ。
調理器具とかは家から持ってくればいい。
「食材以外に準備するものは机と容器くらいか。割と早いタイミングで開店できそうだな?」
ーーー
《あ、そうだ。俺と生活するなら1つ知っておいてほしいことがあるんだわ。》
かしこまってセグトが言う。
「なんだかしこまって。」
《タニグチよ、ドラゴンに触ったらいけないところがあるのは知ってるか?》
「あー、あれだ。知ってるぞ。逆鱗。」
《逆鱗な。そんなのが俺にもあるんだ。と言うか「竜」って呼ばれてる種族全般にある。他にいる風竜や水竜は逆鱗に触れたところでそこまで被害はでないんだ。強風を起こしたり水砲打ったりするくらいだ。しかも元々の種族が温和だから逆鱗に触れても…言い方が悪いが大したこと無いんだ。》
セグトの説明に理解して頷く。
《でもな、俺みたいな火炎竜や雷竜だと話が変わってくる。その…》
セグトは言い淀む。
「手が付けられなくなると?」
《…早い話そう言うことだ。だから気を付けてくれ。そっちのワン公もわかったか?》
〔ラル!〕
《わかったかラル?》
〔わかったー!〕
本当にわかったんだろうか…?
「んでだ。もし仮に逆鱗がどうにかなっちまったらどうすりゃいいんだ?」
念のためだ、対処法も知っとかないとだろう。
《そうだな自警団…は少し遠いから体力ないお前が行くのは現実的じゃねーな。お前の知り合いってなると…サクの家に行ってその事を伝えろ。そしたらサクも理解して自警団まで向かってくれるだろう。》
丁寧にセグトは説明する。
「理解した。それで、その逆鱗はどこにあるんだ?一応知っときたい。」
《ああ、それなら左肩のここだ》
肩の部分の服をめくって見せる。
「これが逆鱗…ほんとだ。他の鱗と比べて逆立ってる。左肩にはぶつからないようにしよう。」
《ぶつかるくらいじゃなんともないさ。…ううーそれにしてもさむ…》
セグトの体温が高すぎて俺やラル的には暖房要らずのこの家でも、セグトからしたら寒いのか~寒さに弱いんだな~なんて考えてたら…
《ブヮァックヒョン!》
火を噴きながらくしゃみする。
「〔あ。〕」
ドラゴンの硬そうな爪が逆鱗を貫いてる。あれ、逆鱗って割れるとヤバイのか?取れるとヤバイのか?あ、ダメだ落ちた。
《ご…めン…ヤッチャッタ》
そう言うと白目になりながら玄関から外に出て飛んで行った。
「おいおいやばいよねこれ!?」
見上げるとまだ意識があるのが必死にもがいてるセグト。
「……ラル!リルの住み処わかる!?2匹のとこ行って呼んできて!」
〔わかった!〕
1人で行かせるのに少し不安はあったが、そこまで遠くない。緊急はじめてのおつかいってことで頑張ってくれ。
ーーー
「サク!」
小さいドアをノックしてすぐに開けた。
〖うわ、びっくり。来てたんですn〗
「挨拶はあとで!セグトの逆鱗が取れた」
〖!!!〗
「一応セグトまだ意識あるみたいで、自力で街から離れてるけど、自警団のとこ行ってくれないか!?それと取り敢えずラルにリル達呼びに行ってもらってる!」
〖わかりました!お母さんは…どうしよう…〗
「俺がママさんといるから連絡お願い!」
〖わかった!行ってくる!お母さんよろしく!〗
そう言って四足で走っていく。
「任された!」
…と言っても自分にやれることはない。この家が危なくなったらサクママを抱えて逃げることくらいしか出来ない。
[タニグチさん、あなたちょっとこっちおいで。]
優しくサクママが話し掛ける。
「なんでしょう?」
体が大きくて入れないので顔だけ扉から失礼する。
[あなたの作ったご飯食べてからね。なんか調子良いのよね。]
「(…今それを?)はい…」
[だからね。これ、お礼よ]
そう言って玄関に入ってる額を小突く。
[私ね、こう見えても魔法使えるのよ?ケット・シーだもの。今は魔力無いからこのくらいしか無理だけどね。]
その瞬間なだれ込む魔法の基本的な知識。
「うわっ…頭いった…なんかポワポワする…満足感に似てる…けど満足感越えて気持ち悪い…なんだろ。食べ物無理矢理詰め込まれたみたいな…」
[あなたも魔力持ってるんだもの。多分その情報を使いこなせると思うわ。]
そう言って椅子に座り込むサクママ。
「だいじょうぶ!?」
[大丈夫よ。立ち眩み。それより今あげた知識の中に結界についてあると思うわ。試しにこの家を覆ってみなさい。]
「いきなり実践ですか…ママさん見掛けによらずスパルタですね。」
[なんか言ったかしら?]
「イイエー。それより魔法ってどうやってやるんですか?今までやったことある魔法と言えば、リルにパンチされて飛ばされたときに無意識に守ったときに使ったくらいですよ。」
[それなら話は早いわ。その例で言うと、守ろうとしたところに魔力を多く流して分厚くして衝撃を和らげたのよ。無意識にね。だから今度は意識してそれを起こすの。今回…結界ならば、手の先から魔力を放出して箱を作る…そんなイメージをすればいいのよ。]
「簡単に言ってくれますね…まあやってみますけど。と言われてもなぁ。どうすればいいんだろ。まずはこう…地面に手を付けて?魔力を流すイメージ?手に力いれれば良いのかな。こう言う時、ムッキムキなら血管浮かんですごい勢いでバーって放出されるんだろうなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
魔力大放出。
なるほど。イメージか…今腕もイメージしてたし、もしかして腕もムッキムキに!!………まあそんなコタぁ無いよね。ぷにっぷにの大根みたいな腕がある。
[タニグチ!集中!箱のイメージ!]
スパルタサクママ。さっきまでさん付けで読んでくれてた気がするけど…アツくなると人格変わるタイプの魔物でしたか。
「箱…段ボール箱を組み立てるイメージでどうでしょうかね?」
段ボールなら学生の頃バイトで嫌になるほど組み立てたからお茶の子さいさいよ。
[あら、いいイメージね。やれば出来るじゃない!]
そうやってサクの家を覆うように完成した結界。強度は知らない。
なんとなくだが、サクママが生き生きしてるような気がする。これはまあ…良かったのか?
ーーー
〖え、これタニグチさんがやったんですか?魔法使えたんですか?〗
後ろを振り向くとサクが帰ってきた。
「どうだった?」
〖今、自警団の魔物達が避難作業してる。私もお母さん連れて避難所に行くから!タニグチさんは?〗
「ラルが帰ってくるはずだからここで待ってる。危なくなったらどっか隠れるから大丈夫。」
〖…わかりました。無理せずに。〗
そう言うとケット・シーの親子は歩いて立ち去る。
てか、結界作った意味無いじゃん。ええ、なんか勿体無いな。結界を元の魔力に戻して再び体に取り込むこととか出来ないのかな……ダメだ無いみたい。
「それにしてもラル遅いな。」
『タニグチーー!』
声のする方を向くと白い狼が2匹。
「あれ、ラルは?」
『疲れたとか抜かすから住み処で休ませておる。結界も張っておる。安全じゃろう。』
そりゃ疲れただろ。ラルは少し前までただの犬だったんだから。
『して、セグトはどこじゃ?』
「リルの住み処とは反対方向に街から離れていった。」
『追いかけるぞ。タニグチ乗るのじゃ。』
「ありがと。よろしく。」
セグトの平穏な日常終了まで
あと0日。
15本目!
日常パートから突然アクションが始まりました。
まあやりたいこと詰め込むんです!180度違うことがいきなり始まってもいいじゃん!俺がルールだから!
まあほどほどにしますけど。
「俺TUEEEEEなんでも出来るZEEEEE」にはしたくなかったのですが…学ぶ過程を書くって難しいですね。なのでせめてもの抵抗で「基本の知識」だけを頭に流し込みました。抵抗できてますかね。怪しいラインですが、次回のタニグチさんに期待しましょう。