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#11 ママさん秘伝のドロップキック

前回のあらすじ。


火炎竜の家でグラタン作り。


「さて帰りますかー。リルのところまではとりあえず歩いてくか。」

 目を腫らした渓口が歩き始めると、前方から近づいてくる赤い影。胴体から手、足、翼?尾?の7つの部位が飛び出てるのを見るにセグトっぽい。


《おお!タニグチ!まだいたか。グラタン旨かったぞ!人間の作ったメシ初めて食べたが旨いな!それになんだこの赤い飲み物!辛酸っぱくて旨かったぞ!!》

 そう言って見せてきたのは空になったタバスコの瓶。


「グラタン旨かったか。そりゃよかった。……え、その赤いの飲んだの?」

《ああ、旨かったぞ!》

「それ飲み物じゃないんだけど…タバスコって言ってグラタンに数滴かけて楽しむものなんだが…」

 やっぱり火に強いと辛さにも強いのか?


《そうだったのか。まあ旨かったからなんでも良いや。》

 さっきまで涙でグシャグシャだった渓口だが、面白エピソードを聞いて一気に涙が引いた。


ーーー


 グラタンのお礼にと、リルのところまでセグトが送ってくれるらしい。リルの住み処は山の上なので地味な上り坂。体力ない自分としては助かった。


 リルのところに寄らずとも、セグトが直接結界前まで送ってくれれば良いのに…と思ったのだが、どうやら結界は壊せないらしい。リルって意外と強い部類なのか…?






 と、考えてたのが懐かしいです。


「わあああああああああ空飛んでるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」

 セグトの腕に巻かれて渓口は空を飛んでた。


 人生で飛行機なんて2回しか乗ったことない渓口、勿論"風を感じて空を飛ぶ"なんてこと初めての経験だ。


《なんだタニグチ、空飛ぶの初めてか?》

「こうやって飛ぶのは初めてだよ!」

 こうやって…背中に乗せてくれるんじゃなくてまさかの腕で胴体をガッチリホールド。気分は猛禽類に襲われたネズミやリス…と言ったところ。


「おろしてぇぇぇぇぇ」

《わかった》



 え?

 ガッチリホールドが解除される。



「はいぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?!?落ちてる落ちてる落ちてる死ぬぅぅぅぅぅぅぅ」

 と言ったところで、落ちていく渓口に速度を合わせてセグトが追い付き背中に乗せる。


《ガッハッハッハッ見てるこっちが面白かったわい!》

「………」

《あれ……ごめん怖かったか。》


ーーー


『起きるのじゃタニグチ。』

「………」

『早よ起きんか!ラルが待っとるぞ!』

 そう言い渾身の肉球パンチに渓口が飛ぶ。久しぶりに食らいました肉球パンチ(強)


「…おはようございます。リルさん。ここは天国ですか。地獄ですか。」

 死んでてもおかしくなかった一撃だが、そこは魔力を認知出来た時のようにオートで守ったようだ。


『おう、死んどらんぞワシの住み処じゃ。』

「あぁそうだ。気絶したんだ……あのバカ炎竜どこ行った。」

 静かにキレる渓口。


『珍しく怒っとるのう。ほれあそこじゃ。』

 住み処の外にいるのは目の上にたんこぶ、各所に傷、所々焦げ付きもある、そして「わたしがタニグチをそらからおとしました」の看板を持ってるセグトの姿。


「これはまた…誰の雷(物理)が落ちたんですかい、これは。」

 聞いた話によるとこうだ。



セグト、気絶した渓口を抱えて到着。

居合わせたリルとリルママに事情を説明。

2匹の雷(物理)が落ちる。

「わたしがタニグチをそらからおとしました」



「なるほど…リルママは?」

『母はご飯食べに(狩りに)行ったぞ。ワシはタニグチが起きるの待ってた。』

「ありがと。」

 そう言ってワシャワシャする渓口。


 さてと…俺も一撃加えても良いよな?



《お…起きたか》


 セグト目掛けて助走を開始する渓口。


《タニグチ…そ、その…》


 跳ぶ渓口。


《すまなかっグフゥ゛ォ!?》


 渓口、リルママ直伝(見ただけ)怒りのドロップキック炸裂。



 吹っ飛ぶセグト。


 口をあんぐりするリル。


 着地に失敗する渓口。



 「わたしがタニグチをそらからおとしました」の看板は真っ二つに割れ、カランコロンと乾いた音を鳴らし地面に落ちた。


 それなりに体重載っかった良いケリが入ったと思う。これほどまでにデブだったことに感謝した日はない。やり方はこの前リルママのを見て覚えた。


 吹っ飛びはしたが相手は魔物。多分そんなにダメージ入ってないだろ。むしろ着地失敗で自分のがダメージ食らったまである。


「よし。これでおあいこだ。おわり!」

 多分リル達にやられたの含めると余裕で勝ってる。まあ黙っとこう。黙っとけば気付かない。きっと。


《久しぶりに誰かと飛んだのでな…楽しくなってしまってな…も、もうしわけない……》

 ずっこけたままのセグトが消え入りそうな声で呟いた。


ーーー


《それじゃあまたいつかな。来いよ。》

「うん。まあでも近い内に来るかもね。結構気に入ってんだ。この山。」

《そうか、それはよかった。あ、次来るときタバスコ持ってきてくれ!》

「はいはい(笑)。それじゃリルお願い。じゃあねー」

 真っ二つ折れた看板を脇に挟んだセグトに見送られ結界へ向けて走り出す。


「と言うかリル今何時?」

『んー詳しくはわからんが陽が落ちてから軽く3時間くらいは経ってるのう。』

「なんで起こしてくれないんだよ!」

『無理に起こすのもどうかと思ってのう…』

「思いっきりパンチで起こしたじゃん!」

『それはその…さすがに寝すぎと思ったんじゃ!』

「うわぁ、ラルにはそんなに遅くならないって言ったのに…怒ってるだろうなぁ…」


ーーー


 玄関を開けると目の前でラルが待ってた。まあそうじゃないとこのドア開かないし当たり前だ。


〔!!!〕

「ラルごめん!遅くなった!」

〔ハッハッハッハッ…〕

「お腹空いてるよな?それとも散歩行くか?」

 そう聞くとガリガリガリガリ…と扉をひっかく。散歩のが良いみたいだ。


「そっか。そしたら散歩行くか!」

〔さんぽいくー!〕

『おおラル!散歩行くか!』


 なんやかんやで現在の時刻は午後9時。元日のこの時間にもなると人通りは全くと言って良いほどなくなる。それは日本もニポンも同じこと。


「ラリルさんや。ちょっと"日本"を散歩しないかい?」




こうしてなにか企むタニグチと2匹の夜が始まる…

11本目!


 そう言えばドロップキックを食らった不憫な[セグト]の名前の由来言ってませんでしたね。

 思いつきっすね。強いて言えば…なんだろうね。本当にふと頭に浮かんだ適当な3文字でこれ良いな!って思ったやつを当てはめました。適当ですね。不憫ですね。不憫な強種族、最高です。

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