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家を追い出されて自由になった、腹黒令嬢の新しい生き方  作者: 結生まひろ
第二章 唯一の魔導具を作りたい
38/40

38.ローナが振られた!?一体誰に……! ※グレン視点

「――ジョセフ殿、しっかりしてください」

「ううん……」


 今夜もジョセフ殿は酔いつぶれてしまった。

 しかし今日はすぐに自分の部屋に行って寝ることができるので、動けなくなる前に自分でそうするだろうと思っていたのだが……突然テーブルに突っ伏して動かなくなってしまった。


「ほら、ジョセフ殿、寝るなら自分の部屋に行ってください。こんなところで寝たら風邪を引きますよ?」

「ああ……」

「……だめだな、これは」


 返事なのか寝息なのかよくわからないような声を聞き、呆れつつもなんとか彼を立ち上がらせて、二階の部屋に連れていくことにした。



「着きましたよ。靴は自分で脱いでくださいね……!」


 ジョセフ殿の部屋はもうわかっている。

 彼をベッドに寝かせて、ふぅと溜め息を一つ。


「……グレン」

「なんだ、起きていたなら自分で歩いてくださいよ」


 返事がないからそのまま部屋を出ようとしたが、背中を向けたところで名前を呼ばれた。

 その声は、割としっかりしているものだった。


「ローナを慰めてやってくれないか」

「え? 何か落ち込むことでもあったんですか?」

「好きな相手に振られたらしい」

「え!? 好きな相手!? 誰ですか、それは!!」

「知らん」


 な……っ、そこまで言って、無責任な……!


 とんでもないことを語ったジョセフ殿に、俺は身を乗り出して聞いたが、彼は自分の腕を顔の上に乗せていて表情まではよく見えない。


「ローナの部屋は奥の角部屋だ」

「……俺が入っていいんですか?」

「構わん。おまえのことは信用している」

「……」


 いくら同じ建物内にジョセフ殿がいるといっても、彼は酔いつぶれているし(たぶん)、俺だって酒が入りいつもより気持ちが高ぶっている。


 しかもローナが失恋しただと?

 そんなことを聞いた直後に、こんな時間に、ローナの部屋で二人きりになって、さすがに何もせずにいる自信があるとは言い切れない。


「ローナを頼んだぞ、グレン」

「……わかりました」


 しかし、ジョセフ殿が冗談を言っているようにも聞こえなかった。

 きっと本当にローナは落ち込んでいるのだろう。

 俺を信用してくれているジョセフ殿を裏切ることはできないな。

 そう思いながら、覚悟を決めて彼女の部屋へ向かった。



「――ローナ、起きてるか?」


 ノックをして声をかけてみるも、返事がない。


 寝ているのだろうか。

 しかし、振られて落ち込んでいるというのは本当なのか、相手は誰なのか、とても気になる。


 なんとしてもその相手を聞き出したい。


「ローナ、入ってもいいかな?」


 返事はないが……ジョセフ殿に頼まれているのだ。


「入るよ?」


 心の中で言い訳をして、ゆっくりと扉を開けた。


「ローナ?」

「……」


 彼女は、ソファの上で身体に何もかけずに横になっていた。


「寝ているのかい? そのままでは風邪を引いてしまうよ」

「……」


 起きてくれればいいと思い、声をかけながら歩み寄る。


「……ローナ?」

「……」


 しかし、彼女は目を開けない。規則正しいローナの吐息が、静かな部屋に響く。


 目の辺りが赤いな……。


「泣いたのか?」

「……」


 返事をしないローナの前に屈み、指の甲でそっと彼女の目元に触れる。

 まつげが濡れている。

 本当に、好きな相手に振られて泣いていたのだろうか。


「くそ、誰なんだ、その男は……!!」


 顔もわからない相手を想像し、腹が立つ。

 ローナに想われて、世界一の幸せ者だというのに、まさか振るとは。


「俺が慰めてやりたい……ああ、ローナ。俺ではだめだろうか?」


 ローナを世界で一番愛しているのはこの俺だと、自信を持って言えるのに。

 君は一体誰のことが好きだったんだ。


「ローナ……教えてくれ……」

「……」


 濡れたまつげからそっと指を滑らせ、白くなめらかな頰に触れる。


 その下にある、愛らしい小さな唇が目に留まる。


 この唇を塞いだら、彼女は目を覚ますだろうか――。


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