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家を追い出されて自由になった、腹黒令嬢の新しい生き方  作者: 結生まひろ
第二章 唯一の魔導具を作りたい
36/40

36.俺の気持ちは ※グレン視点

 仕事を終えてホーエンマギーを訪れると、今日は三人で一緒に夕食をとろうと提案された。

 というか、既にローナが三人分の食事を用意してくれているという。


 ローナが作った料理をいただけるなんて、俺には願ってもないことだ。

 喜んで誘いに応じ、三人でテーブルを囲んだ。


 途中、ジョセフ殿からプレッシャーとも取れる刺々しい言葉を浴びたが、ローナの前であまりはっきり言い返すことができず、妙な空気が流れてしまった。


 しかし、そんな空気もローナの天使のような笑顔を見れば、すぐに溶けていく。


 三人で他愛ない会話をしながらとる食事は、本当に楽しい時間だった。



 食後のチョコレートケーキと紅茶を食べ終えた頃、ローナは先にその場を離れた。


 片付けをするから二人でゆっくり飲んでくださいと言ったローナは本当にいい子だと、改めて感じる。



「いつもローナが家事をしてくれているのですか?」

「ほとんどな。私もやるし、週に一度は使用人を呼んでいるが、あの子が率先してやってくれるんだ」

「店の仕事もあるのに、少しこき使いすぎでは?」

「わかっている。しかし私はいいと言っているんだが、あの子がやりたがるんだよ」

「へぇ……本当にいい子ですよね」

「ああ、まったく。その分給料を上乗せしているが、内心では恩を売っているつもりなのだろう。しかし私から見たら、ただただいい子だ」


 ジョセフ殿の言う通り、ローナが内心で得意になって「ふふふ」と笑っているところが想像できる。

 そういうところがまた、可愛い。


「それで、昨日は何があったんだ?」

「……と言いますと?」

「とぼけるな。昨日帰ってきてから、ローナはずっと心ここにあらずだぞ」

「! それは本当ですか!?」

「ああ、何かあったんじゃないのか?」


 ジョセフ殿から放たれた言葉に、思わず過剰に反応してしまう。

 ローナは、俺のことを考えてくれているのか……?


「……俺には想っている女性がいると、伝えました」

「ほう」

「相手の名前は伝えていませんが、ローナはその女性が誰なのか気になっているのでしょうか」

「まぁ……そうだろうな」


 ジョセフ殿が頷いた。彼が言うのなら間違いない。


「彼女は俺のことを好きになってくれていると思いますか……?」

「その自覚があるかはわからんな。あの子はとても鈍いから」

「まぁ……確かに」

「おまえのことは気になるし、好きな女性がいると知ってもやもやしているのだろうが、なぜそう思うのかまでははっきりわかっていないかもしれん」

「そうですか……」


 やはりあと一押し必要か。

 彼女は本当に鈍い。そこがローナの可愛いところなのだが。


「今俺が想いを伝えても、彼女は応えてくれないでしょうか」

「戸惑うだろうな」

「ですよね……」


 その姿は、容易に想像できる。

 ……想像するだけでも可愛いが、できれば気持ちに応えてほしい。


「ですが、こうなったらそろそろ俺の気持ちをはっきり伝えようと思います」

「……」

「戸惑うでしょうが、彼女にははっきり伝えなければ、いつまでもわかってもらえない気がするので」

「そうか。……応援しているよ」

「ありがとうございます」


 ジョセフ殿は静かに息を吐いて、そう言ってくれた。

 彼もどうせローナが誰かと結婚するなら、相手は俺がいいと言ってくれていた。


 だから、少し寂しい気持ちもあるのだろうが、応援してくれている気持ちも嘘ではないだろう。


 彼女の気持ちを無視する気はないが、俺の気持ちだけは伝えておこう。

 そして、俺とのことを考えてみてもらいたい。


 ああ……ローナ、本当は今すぐにでもこの想いを伝えて、君をこの腕で抱きしめたい。


 俺はいつも、そう思っているよ――。



お読みくださりありがとうございます!

完結までもう少しです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

面白いと思っていただけましたら、どうかブックマークや評価☆☆☆☆☆を押していただけますと励みになります〜!

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