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家を追い出されて自由になった、腹黒令嬢の新しい生き方  作者: 結生まひろ
第二章 唯一の魔導具を作りたい
27/40

27.予定と違う ※ジーナ視点

「わたくしが結婚して差し上げてもよろしくてよ!」

「……結構です」

「ええっ!? な、なぜよ……!?」

「あなたとは性格が合いそうにありません。それに年齢も、三十二歳って嘘ですよね? どう見ても四十は過ぎてるだろ……」

「んまぁ失礼な! まだ三十九よ!!」

「とにかく、あなたと結婚するなんて、僕にはとても無理です」

「……っ! あんたみたいな軟弱な男、こっちから願い下げよ!!」

「よかった。それでは、失礼します」

「ふんっ!」


 今日もお母様はお見合い相手に結婚を断られてしまった。

 これで何度目かしら。


 お義父様――レイシー子爵と離婚して、あの家を出てひと月ほどが経った。

 お母様は「すぐにもっといい相手と再婚する」と言って、度々パーティーに顔を出したり、知り合いから未婚男性を紹介してもらったりして婚活に励んでいるけれど、未だに再婚相手が決まっていない。


 今日の相手は三十五歳の男爵。それほど裕福な家ではないようだったけど、若くてまぁまぁハンサムな方だった。

 妻と離婚したばかりらしく、後妻を娶りたいということで無理やり紹介してもらったようだけど……お母様、年齢を誤魔化していたのね。

 

 先日は、自称三十八歳という子爵とお見合いをしていたけれど、どう見ても五十を過ぎた顔に、太ったぶよぶよの身体、薄くなってきた頭の、汗かきの男だった。

 ふーふーと荒い息をして、にやけた顔で、お母様の隣に座っていた私を見て言った。


『結婚は、そっちの娘となら……』


 それを聞いて鳥肌が立った。気持ち悪いったらないわ!

 無理。絶っっっ対無理! 死んでもお断り!!!


 というわけで、逃げるように帰ってきた。


 とにかく、お母様は毎回若い相手ばかり選んでお見合いしているのだけど……また失敗。


 というかお母様、自分の年齢を誤魔化すのはよくないと思う。ばれてるし。


「今日もだめでしたね……」

「まったく、見る目がない男ばかりなんだから!」


 お見合い帰りの馬車の中で、不機嫌そうなお母様にそっと声をかけてみる。


「……もう少しお相手の年齢層を上げてみてはどうですか?」

「はぁ? 嫌よ!! 次はもっと若くて金のある、いい男と結婚してみせるから待ってなさい!」

「……はい」


 離婚の際、レイシー子爵にお金をもらったけれど、それだって多い額ではない。

 毎日ホテルを取って、外食をして……こんな生活、いつまで続くのかしら?


 お母様とレイシー子爵が再婚したときは、お母様も今より若かったし、レイシー子爵は気が弱くて断れなかったんだということが今ならわかる。


 どうして離婚なんてしちゃったのよ、お母様。

 あのままあの家で上手くやっていきたかったのに。

 本当、お母様ってプライドが高いんだから。


 お母様がレイシー子爵と離婚してしまったせいで、私とガス様の婚約も解消されてしまった。


 ああ、会いたい。ガス様……今どこで何をしているのかしら?

 まさか本当にお義姉様とよりを戻したりしていないわよね?

 もしそんなことになったら、絶対に許さないわ!


 ……私は、義姉が嫌いだった。

 ふわふわしてて、にこにこしてて、見ていてイライラした。

 ちょっと顔が可愛いからって、みんなが自分を好きになると思ったら大間違いなのよ!


 お母様が使用人に言って、お義姉様の食事は残りものにしたし、高価なものも私たちがもらった。

 それでもレイシー子爵に愚痴ることもせず、笑顔で「欲しいならあなたにあげるわ」と言った義姉に、余計腹が立った。


 何よ! いい子ぶって、いい顔しちゃって! 本当は私やお母様のことが嫌いなくせに、腹黒くて嫌な女!

 惨めに泣き叫んで文句を言えばいいのに!

 そうしたら私が義姉にいじめられたって、もっとかわいそうな義妹を演じられる!


 張り合いもないし、つまんない義姉だった。


 そのうえ長女だからとガス様と婚約したくせに、全然ガス様に興味がなさそうだった。

 誰にでも振りまく同じ笑顔でガス様にも接して、当たり障りのない会話をするだけ。


 私には婚約者すらいないのに、なんなのよ!

 お義姉様だけ、ずるいわ!!


 だからガス様のことを愛しているのかと尋ねたとき、「愛してはいない。家のための結婚だから」という答えが返ってきて、私は決めた。


〝お義姉様はガス様のことなんて好きじゃない〟

〝好きでもない相手にあんな笑顔を振りまいている。ガス様以外の男にも同じように笑いかけ、優しくする尻軽女よ〟

〝ガス様のことを、取り柄は金だけのグズだとか、実家が太いだけの能なしだと言っていた〟


 それをガス様に伝えた。

 ……ちょっと盛ったけど、ほとんど事実。


〝お義姉様に騙されているガス様がかわいそう! ガス様を助けてあげたいと思って……私は、ガス様のことを愛しています!〟


 泣きそうな顔をしたガス様にすかさずその想いを伝えたら、彼はお義姉様との婚約は破棄して、私と結婚すると言ってくれた。


 邪魔なお義姉様は家を出ていったし、これからはすべてが上手くいくと思った。 


 それなのに、まさかこんなことになるなんて。

 おかしいわ、予定と違う!

 でも私はまた絶対に、ガス様と婚約してみせるんだから……!



お読みくださりありがとうございます!

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