21.俺もそろそろ ※グレン視点
2章開始です。よろしくお願いしますm(__)m
ずっと捜していたあのときの少女――ローナと再会したときの衝撃は、今でも覚えている。
名前を聞かなかったことをとても後悔していたが、見た瞬間に彼女だとわかった。
ローナと出会ったあの土地の辺りばかりを捜していたが、あそこは彼女の実母の家があった土地で、ローナはあれ以来訪れていないらしい。
どうりで見つからないはずだ。
やっと会えたローナは、とても可愛らしくも、美しい女性に成長していた。
やわらかなミルキーブロンドの髪に、ストロベリーピンクの瞳は、あの頃のままだった。
少し大人びた声も愛らしく、俺の心を掴んで離さなかった。
ずっと会いたかった恩人ローナに恋をしていると自覚したのは、再会してすぐだった。
ホーエンマギーに行く度俺は彼女を目で追い、親しげに話すジョセフ殿に嫉妬した。
ジョセフ殿は妻を亡くしてから、後妻を娶っていない。
ローナとは彼女が学生の頃からの仲で、当時から随分彼女のことを可愛がっていたようだ。
それを聞いてまさかと思ったが、この想いを彼に打ち明けると、ジョセフ殿は朗らかに笑った。
「――私がローナを後妻にすると?」
「はい、そう考えているのではないかと」
「はっはっはっ! まさか! そんなはずないだろう」
「……本当ですか?」
「本当だ。私が後妻をとらないのは、今でも亡き妻を愛しているからだ」
「今でも?」
「ああ。私が愛しているのはこれまでもこれからも、一生彼女だけだ」
「……そうですか」
はっきりとそう告げたジョセフ殿が嘘を言っているようには見えなかった。
三十代後半とまだ若く、この人ほどの男ならその気になればどんな美女でも娶れるというのに、一途な方だ。
「もちろんローナの気持ちを第一に考えてほしいが、安心して口説くといい」
「え……」
「おまえにならローナを任せてもいいと言っているんだ。好きなんだろう? あの子のことが」
「……すっかり保護者ですね」
「そうだな。ローナは私の娘みたいなものだ。だからもし傷つけるようなことがあれば――」
俺の返事を肯定と受け取り、朗らかに笑ったジョセフ殿の瞳が、そこまで言ってぎらりと光った。
「許さんからな」
「……わかっていますよ」
「まぁ、おまえにかぎっては心配していないがな」
「ありがとうございます」
こちらも真剣に答えると、ジョセフ殿の表情は再び穏やかなものに戻った。
この人は少し抜けたところがあり、隙があるように見えるが……実はわざとそう見せているだけなのではないかと、俺は思っている。
本当に腹が黒いのは、ローナではなくジョセフ殿ではないだろうか?
彼女はまったくそのことに気づいていないようだが。
とにかく、俺がローナを傷つけるなど、あり得ないことだ。
俺はローナに再会するために、これまで婚約者を決めずに来たのだとすら思えた。
必ず、彼女を俺の手で幸せにしてみせる。
元婚約者のガス・マレーがホーエンマギーを突き止め突然やってきたのは驚いたが、俺がいるときでよかった。
あれだけ言えば、今後彼がローナの前に現れることはないと思うが……これからも警戒は続けよう。
しかし、自分を〝腹黒悪女〟だと告げる彼女には笑いそうになった。
……いや、実際に笑ってしまったかもしれない。
ローナは腹黒悪女なんかではない。
むしろ心が清らかだからこそ、罪悪感を覚えているのだろうに。
しかし、そういうところがまた可愛い。
人のためにすぐに動ける彼女も、いつでも笑顔でいる彼女も、俺はとても愛おしく想う。
そんなローナを守りたいと、強く思う。
しかしもう少し、俺のことを意識してもらわなければな。
だからこれからは、俺も少しだけ積極的に彼女を誘っていこうと思う。
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