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16.愛しくて仕方ない ※グレン視点

「でも本当によかったな。まさかアルマ様がローナちゃんを気に入っちゃうとは思わなかったけど。彼女、さすがだよ」

「ああ、ほっとした」


 ローナと夜会に行った翌日。顔を合わせた途端近寄ってきた同僚のエディと、昨夜の話をした。


「これでアルマ様もおまえのこと諦めてくれたらいいな」

「そうなるだろう。俺とアルマ様では歳が離れすぎているし」

「いやー、でもローナちゃん……勘違いしたとはいえ、本当に面白かった」

「あまり笑うな、俺が本当のことを言わなかったせいなんだから」

「悪い悪い。でもおまえは本当にローナちゃんのことが好きなんだろう? どうするんだよ、これから」

「……ああ」


 そう、俺はローナが好きだ。

 彼女は俺の気持ちにはまったく気づいていないようだが。


 王女アルマ様は、護衛騎士である俺のことをとても気に入っている。

 婚約者のいない俺に、『私と結婚して』と言った言葉が本物か、はたまた少女の憧れを恋と勘違いしているだけなのかはわからないが、とにかく俺はアルマ様に『想い人がいる』と伝えた。


 そうしたら、その相手を今度の夜会に連れて来いと言われたのだ。

 連れて来なければ認めないと。


 俺がローナのことを好きなのは本当だが、その事情を彼女には伝えずに夜会に誘った。


 それでローナは、ホーエンマギーの店員として王女に紹介したと勘違いしてしまった。


 申し訳ない反面、そんな彼女が愛しくて仕方ない。


 しかし、ローナは婚約破棄を告げられて、家を追い出されたばかりの身。

 出会ったばかり(・・・・・・・)だと思っている(・・・・・・・)男に突然求婚されるのは迷惑だろう。

 だから、俺はゆっくり、じっくり、彼女との距離を縮めていく予定だったのだが、はっきり「誰とも結婚する気はない」と言われて、少し落ち込んでいる。

 このままずっとホーエンマギーにいたいというのも、気がかりだ。


 結婚後も働くのは構わない。だが、もし結婚したとしても、一緒に暮らすことすら叶わないというのは、さすがに――。


「珍しくダンスまで踊って、目立ってたぞ~、おまえ」

「そうかな」

「白々しいなぁ、自分がモテるって、わかってるくせに」

「どうだかな」

「たくさんの女を泣かせて、罪深い男だねぇ、まったく」

「……」


 エディが冗談半分で言った言葉に、「勝手に泣いているだけだろう?」と思ったが、その言葉は呑み込んだ。


 俺が好きなのは、ローナただ一人だ。

 他の女性に気を持たせるようなことをしたつもりはない。

 向こうが勝手に俺を好きになり、気がないと知って勝手に泣くだけ。


 そんなことを思うなんて、酷い奴だとわかっているからあえて口にしないが、ずっと探していた女性……ローナが、まさかジョセフ殿の教え子だったとは。本当に驚いた。


 本当は早く彼女を俺のものにしたい。

 そうすれば無駄に期待して泣く女性とやらが、減るのだろうか。


「まぁ、ローナちゃんが王宮に顔を出すことはあまりないだろうから大丈夫だとは思うけど、気にかけてやれよ?」

「もちろんだ」


 先日カフェに二人で行ったときも、昨夜の夜会でも。

 一部で、彼女は誰だと噂になっていることは知っている。

 ホーエンマギーを突き止めて押しかけるようなことは今のところないが、これからも頻繁に店を訪ねよう。


 まぁ、単純に彼女に会いたいという理由もあるが。


「そういえば夜会前の一週間、わざとローナちゃんに会いにいかなかったんだろ?」

「まぁな」

「で、彼女の反応はどうだった?」

「……わからん。彼女が美しすぎて……それどころではなかった」

「はぁ? なんだよそれ! 自分の作戦に自分で陥ってどうするんだよ!」

「……放っといてくれ」


 確かに、駆け引きのために夜会までの一週間、あえて彼女に会わずにいてみた。

 毎日会っていた俺と一週間ぶりに会って、どんな反応をするか。俺のことを少しは気にかけてくれていたか。

 それを見ようと思ったのに、こっちがそれどころではなかった。


 会えない時間が辛かったのも、久しぶりに彼女に会えた感激が増したのも、ますます好きになってしまったのも、全部俺のほうだった。


 ドレスアップしたローナは、想像以上の美しさだったのだから。


 もう二度と、余計な駆け引きはやめよう。俺には向いていないことがわかった。


「俺としては、もっとローナちゃんにおまえが振り回されるところを見たいね」

「エディ、おまえなぁ」

「はははっ、だってこんなグレン、なかなか見られるもんじゃないからな!」

「……」


 陽気に笑う友人に、俺は内心で溜め息をついた。


 しかし、夜会でガス・マレー――彼女の元婚約者が接触してくるとは。

 あの男がローナとの婚約を破棄してくれて本当によかったと思うが、そのせいで彼女は結婚や恋愛を避けるようになってしまっている。


 今後ローナに近づくことがないよう祈るが、そろそろレイシー家の者たちは彼女の存在の大きさに気づく頃だろう。


 まぁ、彼が後悔して復縁を望んできたとしても、俺が絶対にローナを守ってみせるがな。



お読みくださりありがとうございます!

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