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01.腹黒令嬢、家を出る

新連載始めました!よろしくお願いいたしますm(*_ _)m

「ローナ・レイシー! 君との婚約は破棄させてもらうぞ、この腹黒悪女め!!」


 婚約者、ガス・マレー伯爵令息の大きな声が、パーティー会場である広間に響き渡った。


「婚約、破棄……?」

「当然だろう! 君がこんなに腹黒い女だとは思わなかった!!」


 ガス様の焦げ茶色の髪が怒りに揺れ、その目は憤怒に燃えていた。

 親の決めた相手だけど、ガス様は私のことを好きだと思っていたのに。おかしいわ。何が起きたの?


「今まで僕に優しくしていたのは、金のためだったんだろう!? すべて君の義妹(いもうと)であるジーナに聞いたぞ!!」

「えっ、ジーナに?」


 興奮しているガス様の隣で、継母の連れ子であるジーナが赤い髪を揺らしながら扇で口元を隠した。その瞳には冷たい光が宿っている。


「そうだ!! 裏で僕のことを〝取り柄は金だけのグズ〟だとか〝実家が太いだけの能なし〟だと言っていたらしいじゃないか!」

「そんな……! 酷いわ、ガス様! 私がそんなことを言うわけないじゃないですか!」

「うるさい! 言い訳は聞きたくない!! 僕は本当に君のことを愛していたというのに……!!」

「……」


 涙ぐみながらそう叫ぶガス様だけど、彼の左手がジーナの腰に回されているのを見た瞬間、その愛は嘘のように感じられた。


 一応否定してみたけど、どうやらだめみたい。


「僕は君との婚約を破棄して、ジーナと結婚することにした!! 僕のことを心から愛してくれていて、君に騙されていることを教えてくれた、このジーナと!!」


 確かに、私に愛はなかった。


 ガス様は伯爵家の次男で、うちに婿入りする予定だった。

 うちは裕福ではない子爵家で、家のためにガス様との結婚を受け入れたのは事実。

 だけど、〝グズ〟だとか〝能なし〟とまでは言ってない。

 ……別にそこまでは思っていない。


 私はガス様が機嫌を損ねないよう、いつも気を遣っていた。


 それなのにジーナったら、一体どういうつもり?

 彼女に『ガス様のことを愛しているか?』と聞かれて、『愛してはいない。家のための結婚だから』と答えたことがあった。


 ……まさか、その返答を大きく曲解したの?

 なぜ?

 ジーナがガス様と結婚したかったのなら、そう言ってくれればよかったのに。


「……わかりました。婚約破棄は受け入れます」


 心の中でどれほど動揺していたとしても、顔には出さない。

 声が震えそうになるのを抑え、冷静に答えた。


「認めるのだな。ということは本当に僕のことを……っ。君のような腹黒悪女の顔はもう二度と見たくない! 君は今すぐレイシー家を出ていってくれ!!」

「え……っ?」


 家を出ていけ? そんな急に、なんと勝手な。


「突然そんなことを言われましても、私の家はあそこですし……」

「レイシー子爵の了承は得ている! もう二度と戻ってくるな!」

「そんな、お父様が?」


 私を嫌っている継母はともかく、父の了承も得ているなんて。

 ガス様との結婚がなくなればうちは破産する。

 だからきっと、私が出ていくことを条件にしたのだろう。

 再婚してからは、父も継母の言いなりだった。


「……わかりました。お元気で」


 声が絞り出すように出た。

 胸が締めつけられるような感覚が襲う。すべてが崩れ去った瞬間、孤独感が全身を包み込んだ。


「ふん……っ! 君のような性悪女は、地獄に落ちるに決まっている! 後で泣いて謝っても遅いからな!」


 ガス様は最後までグチグチ言っていたけれど、こうなった以上、私にのんびりしている暇はない。

 冷たい視線に耐えながら、ドレスの裾を掴んで一歩踏み出した。


 すぐに帰って、家を出る準備をしなければ。




「――ローナ……、本当にすまない」


 父の声は震え、いつもよりも小さく感じられた。父の目には深い悲しみが宿っていた。


「いいのです、お父様……お父様もお辛いのでしょう?」

「ああ……おまえは本当に、なんて優しい子なんだ」


 父の声には後悔と愛情が混じり、私は胸が締めつけられるような感覚を覚えた。


「いいえ、そんなこと……」

「そんなおまえを、私は……本当にすまない」


 涙を堪えながら答えると、父は目を伏せ、苦悶の表情を浮かべた。


 家に帰ると、既に私の荷物はまとめてあった。

 トランク一つにまとまるほどの、少しの量だったけど、その中には私の大切な思い出も詰まっている。


 一刻も早く私が出ていけるよう、継母がまとめておいたのだろう。容易に想像できる。


 父は申し訳なさそうに謝ってくれたけど、元々気が弱いから継母の言いなり。

 いつもそうだった。

 六年前に母を亡くして父が再婚してから、私が十八歳になった今までずっと。


 父は、気の強い継母に何を言われても言い返すことができず、この家は継母の思い通りになっていた。


 そして、ついに私まで追い出されることに。

 これもすべて、継母の策略なのだろう。


〝謝ってばかりいないで、なんとかしてよ! お父様!〟


 心の中で叫びたくなる思いを必死に呑み込んで、小さく首を横に振る。

 私にとってこの家は、とても居心地が悪かった。

 継母により一新された使用人からも私は冷遇されていたし、この家を出て行けるのはむしろ好都合かもしれない。


 すまないすまないと泣いて謝る父を責めることはできず、私は最後まで〝いい娘〟を演じて子爵家を後にした。



お読みくださりありがとうございます!


私事ですが本日作家デビューしてちょうど2年になりました!

これまで楽しく執筆できたのも優しく応援してくださる読者様のおかげです!

いつも本当にありがとうございます( ;ᵕ;)

2周年の記念に『腹黒令嬢』の連載を始めました\(^o^)/

面白そう!続きはよ!応援してるよ!

などと思っていただけましたら、ぜひぜひブックマークや評価、いいねをぽちぽちして作者の背中を押していただけると嬉しいです!( ;ᵕ;)



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何卒よろしくお願いいたします!!(*ˊᵕˋ*)

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