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気にしたところで悪い噂は千里を走る

 ゴクエンは広い平野と東国の各都市とつなぐ要所となっていて、海から程よい距離のために貿易の商業の場所でもあるため、カの国第二の都市にまで発展した商業都市である。

 ショウゴクからも近く、道も整備されているため、シンたち人形使いの主要な活動拠点にもなっていた。

 ゴクエンに着くと先回りしていたゲンが出迎えた。

「ずいぶん遅いから何かあったのかと思ったよ。」

 今回の旅では、ゲンは斥候として行き先の状況を先行して確認する役割を担っている。

「いや、何もなかった。おそろしく遅い以外は。」

 センが疲れた顔で合流したゲンに答えた。

「それで、ゴクエンはいつも通りか?」

「まあ、町自体はいつも通りだな。」

 センはゲンの報告を聞いて少し安心した顔をしたが、報告の続きを聞いてすぐに眉を寄せた。

「ただ、気になるのが空絵師が今日来ることがもう噂になっている。」

「もう?いつ頃からだ?」

「俺が町に入った時にはもう広まっていた。」

 ゲンがゴクエンに来たのは前日のことだ。出発の日程が正式に決まったのはさらにその前の日になる。

 早過ぎる。

 明らかに内部の人間が意図的に噂を広めている。

 センにはそうとしか考えられなかった。

「空絵師の者だろうか。」

 ゲンに訊ねたようにも独り言とも取れる声量でセンは呟いた。

「第一容疑者はそうだろうな。だが、なんのためにだ。」

「分からない。言えることは奴らは俺たちとは全く別の思考で動いているということだけだ。」

「シンにも一応、言っとくか。」

「まあ、そうだな。」

 センは少し考え込んでいたが、構わずゲンは続きを話す。

「ああ、あと婚姻の件も一緒に広まってるみたいだな。まるでもう決まったみたいな感じで。」

 何でもないことのようにゲンが言ったことの方がセンを驚かせた。

「なんだって?奴らそっちが本命か。」

「まあ、気にしてもしょうがないだろ。」

「お前な。」

 センはゲンにひとこと言おうとしたが、ゲンはさっさと話を切り上げてシンの方へ歩き出していた。

「空絵師の調子はどうだ?」

「相変わらずだ。人を苛つかせるのが上手い奴らだ。」

 突然、軽口を叩いてきたゲンにシンも笑って調子を合わせる。

「シン、婚姻の件がもう噂になっているらしい。」

 後ろからセンが割って入る。

「既成事実をなんとかして作りたいんだろ。ますます断りたくなってきたな。」

 シンは動じず、鼻で笑った。

「それでその空絵師どもはどこだよ。」

「向こうさ。」

 シンが顎で指した方を見ると、そこにはまたも黒山の人だかりができていた。

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