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帝都の政変

「帝都ってなんだよ!」俺はその姿に圧倒されていた。


水が城壁から溢れ出ている。

まるで滝の城壁と言った所かも知れない。


それに物凄い大穴があってそれが周りを囲っている。

その中央に立派な橋がかけられている。

帝都に入るにはその水を被って入らないといけないらしい。


皆が皆その洗礼を受けている。

それが常識なんだろう。


「水が流れて向こうがよく見えないんだよね。」と文句を言う。


南に行けば海が見える。

なんか魚?モンスターが空を泳いでるんだけど・・・なんで?


裏側は山があり。

尖った山々はまるでそれぞれが防衛塔のような役割を担っていそうだ。


その麓にこれはまた大きな西洋風な城がある。

黒く塗られた異様な城だった。


「魔王でも住んでんのか?」と俺は思わず呟いてしまう。

「どうでしょうね。」とツクモが反応した。


「さて、どうやって中に入るか?」と俺は考えたがいい案が思いつかない。


「確かクロンがこの帝都に向かっていると言う話だったよな。」

俺は元々、クロンに背負われて帝都に入る予定だったのだ。


今から行って入れ替わろう。うんそうしよう。


ネズミに場所を案内させ、隙を見てリュックの中身と入れ替わる。


「ふぅー何とかなったか。」と俺は汗を拭く。


「む。」なんか知っているような、知らない男の顔がドアップで映った。


「どうしたんですかゴースさん。」とクロンが声をかけてくる。

「いや私の気のせいだった用です。」と俺から離れていく。


「やれやれ、怪しまれたと思った。」ホッとした。


今日は帝都に着かないようで、野営することになった。

俺は大人しくミルクを飲んでいる。


「ぷはっ。盗んだミルクの味は美味しいぜ!」

あの城塞都市に置いてあったミルクは極上で、飲んでは飲んでを繰り返して少なくなっていったのだ。


俺はそれに危機感を覚えて、飲む本数を絞り一日一杯と決めていた。


ブランド物のミルクを飲んでいる気分だった。


「はぁー幸せだ!」とこの至福の時を味わっていた。


周囲を見ればクロンの寝顔が見える。

それに優しそうに布をかけてやるゴース。


「ウッテさん。」と言って涙を流す。

それを何と言っていいのか、同情的な眼差しで見つめる。


俺はクロンの前にウッテを出してやるか考えたが、止めることに決めた。

周りの人間が賞金に目が眩んでいないとも限らない。

俺は諦めることにした。


せめて、帝都にいる間はウッテの代わりに守ってやろうと決めた。


ウッテ安らかに眠ってくれ!

「まだ死んでません。」と答えてくるツクモ。


「そうだったな。」と思い出す。



そんな俺の元にネズミが近寄ってくる。


「おおう、確か忠太!」

「違いますヤンバルです。」


俺は凹んだ。


「ちゅちゅちゅーちゅーちゅー。」ネズミが身振り手振りで現状を語ってくる。

「ちゅちゅちゅーちゅーー。」とやたら長いな。


一応頷いているが、まったくわからん。

あとでツクモさんに聞かねば・・・


「な、何ですって!」と芝居がかった声を上げて頭を抑えた。


「?」と首を傾ける。


「テト様、皇帝が崩御されたそうです。」

「はい?」と俺は困惑する。皇帝がなくなった?


「ちょっと今、帝都に入るのまずくない?」俺は聞いてみた。


まぁ崩御なら、それほど血なまぐさい事にならないだろうと思う。


「うーん、帝都の情報が何もないのでなんとも言えませんね。」とツクモさんが冷静に返してきた。


「俺はどうしたらいいんだ?」悩む。


ここから出てクロンに話すか、ダメだな。

敵対されるのが目に見えている。


いっそ全員を亜空間にでも放り投げるか?


いや、一人手強いのがいたな。


ゴースのこと・・・確か、あっ、思い出した。

この間、イーツとやり合っていた男か・・・


なるほどどこかで見たことがあると思ったんだよねと、得心が行った。


あいつがいる以上、うかつに行動は出来ないな。

取り敢えず考えるのはやめて、明日考えようと思考を放棄した。



帝都その晩。


帝都は皇帝の崩御で悲しみに暮れているはずだった。


そんな中、次の帝位をめぐって第三皇子が蜂起、第一皇子を刺殺した。

順当なら第二皇子がこの帝位に就くはずが・・・病弱でそれが出来ない。

このままいけば第三皇子がこの帝位に就く。

あまりに鮮やかな手口に政敵は黙るしかなかった。


「ふふ、計画通りだ。」とまだ帝位に就いていないのに皇帝の椅子に座っていた。


そんな自信の塊が第三皇子ルッソ・バーン・ロードだった。


「父上を毒殺した兄上を私が手を掛けただけだ。正義は我にあり!」と立ち上がりながら拳を突き上げた。

「正義は我にあり!」そんな歓声が城中に響き渡った。


それに満足そうな顔を浮かべた。

「さて戦争をしようか!」と悪い顔を浮かべるのだった。



そんな城から隠し通路を使って逃げ出すメイドがいた。

その手に赤ん坊を抱いている。


地下の通路から地上に出た所で、敵の気配が現れた。

その男は片手にナイフを握っていた。


「その嬢ちゃんをこっちに渡してもらおうか?」と交渉をする。

「渡しません。」とその赤ん坊を強く抱きしめ、片手でナイフを取り出した。


その戦いの最中、取り返しのつかない傷を負ってしまう。


その男の刺客を刺し違えて倒した。

何とか最後の力をふり絞り近くの孤児院に赤ん坊を置いて、去って行く。


「私が囮に・・・。」

その足取りはふらふらだった。


それでもと帝都のスラム街に消えていくのだった。



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