準備と理由
俺の周りに何匹かのネズミがいた。
「ちゅうちゅうちゅー。」
「ちゅちゅ!」とか言っている。
俺は首を傾げるだけだった。
なにを言っているのかわからない。
「貴方たち!」ツクモの声にビクッとなるネズミたち。
「どうしてそんな失態を演じてしまったの?」と聞いてくる。
「ちゅーちゅちゅ。」
「ちゅーちゅー。」
「言い訳は結構です。それで!」ツクモさんがネズミたちと会話している。
俺はその会話に相槌を打つことしかできない。
一体なんの会話をしているのだろうか?
「わかりました。こちらで対処します。」
「ちゅーちゅー。」とネズミたちが声を揃えて言った。
そうしてネズミたちが消えていく。
「はぁー。」と溜息を付いた。
ネズミたちが報告に来たということは、ウッテ達のことか?
「一体何があったんだ?」と俺は聞いた。
「話がわかっていて頷いていたのでは?」と驚いた顔をしていた。
「ああしておけばかっこいいだろう!」
「なるほど!眷属の前では、威厳も大事ですもんね。」と納得して、うんうんと頷いていた。
「端的に言えば、ウッテさんが捕まりました。」
「うむ、あいつならやらかすと思っていたぞ!」と俺は納得した。
「一体誰と喧嘩したんだ?」
俺は精々が酔った勢いで、街のチンピラと喧嘩して殴り合いになったのではないかと見当をつけていたが・・・
「不審者として、軍に捕まったそうです。」とツクモさんが報告してくる。
「軍?俺の考えの斜め上だな。」
「はい、帝国軍侯爵領の軍だそうです。精強だそうですよ。」淡々と報告してきた。
一体何のために?
この間の獣人達を捕えるつもりだった?
なら敵なのか?
「まぁすぐに解放されるんじゃないのか?」
「近くに王国のラーズ辺境伯領の息子ダスト様が一緒だったそうです。」
「はー。」と俺は口を開けて驚いた。
「何でここに!」と思わず声に出す。
「クロン様と合流した荷馬車に乗せられていたそうです。」俺は頭を抱えた。
「殺されるか、外交の道具にされる?」
「その可能性は高いでしょう。」
俺は頭に右手を当て、人差し指で何度も頭を叩きながら考えをまとめて行く。
辺境伯領の面々の顔を思い浮かべる。
そうして少し経って答えを出した。
「中々思い通りに行かないな。まぁ助けるしかないよな。」と俺は捕まったところに乗り込む決意をした。
「勝利条件はどうしますか?」
「ウッテとダストの救出だろろうな。」
「二人共ですか?」疑問を呈してきた。
「王国への外交の道具にされても堪らん。」
辺境伯領の皆に迷惑をかけるわけにはいかないだろう。
それに俺の本当の家族にも利するだろう。
「しかしウッテの巻き込まれ体質はどうにできないのか?」
「それを貴方が言いますか?」と呆れて聞いてきたが・・・
何のことだと言う顔をしてやった。
俺はウッテ達を追いかけた。
「こちらの方ですね。」そこにあったのは城塞都市だった。
大きな城が見える。
高い城壁に水堀が周りを囲っていて、人の出入りは橋を渡った門扉だけだった。
城の上には数々の旗が立ち、ずいぶんと物々しい。
一体何が起こっているのだろうか?
「あそこにいるんだな?」
「それで間違いないようです。」
まさか今度は俺が脱獄させる側に回るとはな。
どうやって入ろうか、城門は開いている。
隠密で潜り抜けるか?と心の中で思っていると。
「あまりオススメ出来ませんね。」
「どうしてだ?」
「あれを見てください。」
ツクモは指を画面に丸印で囲んだ部分を拡大していく。
「これは、アーティファクトか?」とそこには眼鏡をかけた男がいた。
「はい、恐らくですが魔力視を使った鑑定眼鏡です。」
「なるほど、気付かずに向かえば見つかっていたかもしれないと言うことか?」
それに敵か味方も識別する。
「となるとあの城壁を越えるしかないか。」
「そうなりますね。」
「この人型で届くと思うか?」
「届くかもしれませんが、城壁を壊しかねないのでは?」
「それでバレるリスクも考えないといけないわけか。」
城壁の高さはそれほどに高い物だった。
「ならこのゴーレムを仕舞って、浮遊と隠密でこの城壁を乗り越えるしかないか?」
「もしくは地下水道をこの人型で乗り込む事も可能です。」
「それはお前が仕舞われたくないだけじゃないか?」
「ふふふどうでしょうか?」
確かに一理あるな。
万が一見つかれば、赤ちゃんの生身では攻撃に耐えられないかもしれない。
「水深ようにパーツを組み替えないといけないか。」と言ってコクピットを開ける久しぶりのシャバの空気だ。
「私のコクピットを刑務所のように扱わないでください。」とぷんぷんしていた。
「ああ、はいはい。」水中に潜るならコクピットの隙間は埋めて、いや逆に人型をすべておおってしまうか?
パージ機能を付けて潜水艦のようにして、その部分を外して元の人型に戻る。
大きすぎるな。
いやなんのために、取り外し可能な手足にしたのか。
これを最大限に利用してこれ自体を潜水艇にするか?
あのヒートスライムがお湯の中を泳いでいたように・・・
この体の中心部をスライムが水の中を泳ぐようなイメージか?
なんかさっきからツクモさんがもじもじしている。
ふむ?なんでだろう。
まぁいいかと続きを始める。
俺はこの身体をとがらせてみたり、変形がある程度は自由自在になるように調整をした。
「これで完璧かな?」と赤ちゃんが乗る潜水艇の完成だった。
中にはコントローラーとハンドルを用意して、場合によってはすぐに機能を変形可能。
ボタン類が多くなってしまった。
そしてちょっと分厚くなってしまったか?
仕方ないだろう。
画面を覗き込めばツクモさんがぐったりしている。
どうしたんだろう?
俺も少し休憩をしよう。
ミルクを出そうとしたが・・・俺のエネルギー源が空になっているようだった。
俺は絶望した。
「ミルクがないと力が、生きていく力が・・・俺のヒットポイントが!」と何やら芝居がかっている。
そして俺はこの城塞都市のミルクを奪う決意を固めるのだった。
「ウッテやダストなんかよりもそれが一番大事だ!」と闘志を燃え上がらせるのであった。
ブックマーク、評価お願いします。




