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怒りの行方

俺はその後、召喚したシェリー達を亜空間に送り返し、スライムたちも亜空間に放り投げた。


「あーれー。」とかスライム達が言っていたが知らない。

帯び回しではないぞ。

一瞬、シェリーでやっている事を想像したが首を振ってそんな妄想は搔き消した。


スライム回しになるのか。ポンポン放り込んでいった。



向こうの画面を見たら、知り合いの所を飛び跳ねているのでうまくやれているのだろう。

進化して人型にでもなれればいいがな?

弱小のスライムが・・・進化は無理があったか?


まぁ獣人の戦士たちとパーティーを組めばいけるかもしれない。


それに今考えても仕方ない。やらないといけないことがある。


時刻は朝方だろうかずいぶん時間が経ったものだ。


俺はその光景を見て思う。


焼けて炭になった場所。遺体の数々。


「すべて消えてもらおう。」そう思ったのがいけなかった。


そこにあったものが溶け出す。それが正常であったように・・・

俺はその光景をぼんやりと見ていた。


「あーあ。」と頭を抱えるツクモさん。

何もかもなくなって整地された土地だけが残った。


それが正しい事だったのか、間違ったことだったのか俺にはわからない。

ただ、ここであった現実を受け入れたくなかっただけなのかもしれない。


あいつ等は許せない。


俺は震える手でコントローラーを握った。


「テト様ができないのなら、私がやりますが?」

ツクモさんに心配そうに言われて、俺の震える手は止まったのだった。


「いや、俺がやる。これは俺がこの世界で生きるために、やらないといけないことだ。」


俺はヘタレだ。

この武器を持つのも恐い手。

でもそうしないと、救えない者たちがいるかもしれないと学んだ。


正直恐い、それでも俺は護ってやりたいと思ってしまったんだ。

俺は画面に映るシェリーやファーを見ていた。


「行くぞ!」と決意を込めて言った。


足の裏にあるローラーが回りだす。

スピードが上がる感覚が、今は妙に俺の心を支配しているようだ。



俺は索敵機能で敵になっている者達を探していた。


貴族は馬で進む。

道が出来ているこちらに来るのが普通だ。


いや、もしかしたら別の獣人の集落にでも行ったのか?


「そんなことはありませんよ。」とツクモさんが答える。

そこで索敵に反応があった。


野営の設営がされている。

昨夜はそこで休んだのだろう。


迷わずに突っ込んで行った。

土煙で敵は何が起こっているかわからないようだ。

慌てて兵が集まってくる。


「襲撃!襲撃だ!」と声を上げている人達。


段々と土煙が晴れていく、そこにいたのは幻術で俺とツクモさんの融合した姿だった。

これを疫病神形態とでもしておこうか。


「バカな黒髪だと!」と慌てている男達がいる。


皆が皆武器を構える。


その中で一つ魔力反応を感じた。

どうやら敵には魔力持ちがいるらしい。


「まぁ、そんなの関係ないか!」と恐い顔になっていたと思う。


俺はアイテムボックスから4メートルはある大剣を取り出した。


俺はそれを振り回す。ただ力任せの一撃。

それだけで、俺を囲んでいる兵たちは吹き飛ばされていく。


ただそれだけで今回はやめない!


「アイスランス!」と唱えトドメを刺して行った。


「別に何も思わないな。」

「それはこの方たちが・・・屑だからですね!」と俺達の意見は一致している。


長い髪が鋭い刃になり、敵を切り裂いて行った。


それがツクモさんの優しさなんだろう。

俺はそれに何も言わない。


俺達は集まってきた兵相手に無双した。


俺が剣を振るごとに舞い上がり地面とキスをする。

そこにアイスランスを放った。


ツクモさんも攻撃を止めない。

後ろの兵を重点的に倒しているようだ。


兵達を粗方倒しただろうか、貴族の一団が見えた。


俺はそいつらに容赦はしなかった。

兵達は逃がしても、こいつ等は逃がすつもりはなかった。

恐怖の顔を浮かべ、崩れ落ちる貴族達。



「ひぃー、疫病神!」

貴族の指揮官らしい男が馬に乗り逃げようとしている。


俺はそいつに大剣をぶん投げた。回りながら飛んでいく。

当たりどころがわるかったのだろう絶命した。


「おいおい、そりゃないぜ!」と俺達に声をかけてくるものがいた。

そいつは魔力持ちで俺と戦いたがっているように見える。


周囲に火の玉が浮かんでいる。


俺はそいつを睨みつけた。


「俺は炎のブレイブ。コ・ブタだ。」と名乗った。


名前の通りの姿のようだ。

こいつこれでも豚の獣人じゃないらしい。


世の中不思議でできているなと思った。


「雑魚に用はないのだが?」

「この俺が雑魚だと?黒髪は僕のことを知らないらしい。」と呆れている。


「知る必要はない。覚える価値のない者は無価値だ。」


「黒髪!ファイヤーボール!」とブチ切れて火の玉を飛ばしてきた。


俺はその攻撃をあえて受けた。

全身に衝撃が来るが、ただそれだけだ。


「ばかな!無傷だと!」

慌てるコ・ブタ君。

再び何発ものファイヤーボールが直撃するが、まったく効いていない。


「確かお前たちは獣人を狩ることで、貴族としての証を立てると言っていたな。」

俺が喋っている間も攻撃を止めない。


「それがどうした!」と叫ぶ。コ・ブタの顔に汗が伝う。


「ならば俺も貴様と言うブタの獣人を狩ろうではないか!」


「俺は貴族だ!獣人なんかじゃない!黒髪!」大きなファイヤーボールを放ってきた。


俺はそれを叩き落とした。


「えっ。」と絶望した顔をしていた。


「終わりだ。」と言って俺は大剣でぶん殴った。それも何発も。


焼け焦げた死体の分まで!怒りに任せて!

殴っては追って、殴っては追ってを繰り返した。



「そこまでですよ!」とツクモさんの声で現実に戻ってくる。


「俺は一体?」と周りの様子を見ると、木々が倒れ、地面は抉れ、斬撃の跡が残っていた。


「これもスキルの影響か?」

「いいえ、ただ単に感情に流された結果です。」何それ恐い。


「そんなものか?」

「そんなものです。」


あれ?何か乗りうつるように?

でも、やったことの記憶はある。

だがやろうとしてやったというより、無意識に身体が動かされた?

そんな状態からツクモさんの声で戻ってきたのか・・・


「そうか、ありがとう。」

「いえいえ。」と返してくる。


暴走した結果か・・・気を付けないといけないのかもしれない。

改めて俺はこの世界のことを知らな過ぎると感じた。


この感情の暴走のこと、人族たちのこと、獣人たちのこと、そして黒髪のこと。


「帝国でこのことも知らないといけない。怖いけれど、知ることはここで生きると決める事だ!」


決意を新たに進むことを決めた俺だった。


「その前に寄り道をしよう。」

「そうですね!」と決意する俺達の向こうには、獣人の里がいくつもあるのだった。

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