新たな獣人
俺は今、ミルクを飲んでいた。
そして背中に背負われているのだが・・・
何を見せられているのか、これは新手の拷問なのだろうか。
俺は今・・・
ウッテとクロンとのイチャイチャっぷりを見せられていた。
わかる。わかるよ。
一時は離れ離れになったカップルが、こうして一緒にいられるという反動に愛し合う行為は間違ってないと俺は思うよ。
俺の前でイチャイチャしなければね!
爆発しろウッテ!
「やりますか?」
「ああ、やるとも!って違ーう。」
「ちっ。」この人、舌打ち打っちゃったよ。
「まぁたまに、魔法で気付かれないようにちょっかいは出そう。」
「それは賛成です。」と二人して悪い顔になっていた。
しかし、こんなもの見せられながら旅を続けることは出来そうもない。
まるでなぜか新婚旅行についてきた親友の気分だ。
もちろんいないものとして扱われる。悲しい存在。
「はぁー。」
「そう言う体験があるのですか?」と聞いてきた。
「ああ、妹にな。そんな感じに連れ回されたんだ。主に荷物持ちとしてな。もう、関わらないことにしたよ。」と向こうの世界の妹の事を少し思い出して苦笑いをした。
「それでどうするんですか?あれは目の毒ですよ。」
俺達ボッチ同士はわかり合った。
とりあえず最低限度様子を見ながら、亜空間の様子を監視しよう。
「なるほど、そろそろ内政ターンですね。」
「ああ、まぁ間違ってないが・・・」
そこにはファーの指示で畑を作っている野盗の人達がいた。
種は一応あったらしい。
盗んだものの中にあったのかな?
もちろん武器なんかは全部取り上げている。
まぁファーは武器を持っているが・・・
「何が足りないかな?」
俺は大きな鶏がなぜかいる状況に、現実逃避しながら聞いた。
「衣食住で言えば、着るものと住めるところでは?」
ファーがそんな大きな鶏から大きなたまごをもらっていた。
「ふむ。」と考える。
皆で抑え込み、大きなたまごをのこぎりで切断しようとしている。
住めるところね?
なんとかのこぎりで削り取ることが出来たらしい。
おっ、なんだこれ。そこには様々なコマンドが現れた。
城、家、畑、製材、製糸、製紙場などなど。
削り取ったたまごのからの上の部分をを外して、下の生卵をかき混ぜ始めた。
「これはなんでしょう?」
「たぶん内政コマンドだよ。」
皆にそれをお椀に注いで飲み合っている。まさにファンタジーだ。
ここを押せばほら、そこには家が建っていた。
木造の家だ。
「な、何が起こったの。」とファーが慌てていたりする。
「わぁ、凄いですね!」ツクモ。
ああ、まぁこの手のゲームは多少やったことがある。
ゲームのコントローラーを握っていた。
この家を住宅街の近くに移動させ。
住宅街に建ててある掘っ立て小屋を壊し、その材料で立派な家を建てていく。
どんどん壊しては建ててを繰り返していった。
「ふふ。」とゲーマーの血が疼く。
「ははは!」と俺は調子に乗っていたと思う。
うん、人よりも家が多くなっちゃったな。
「てへ。」と可愛く反省したのはしかたない。
「しかし、男の数に比べて女の子が二人とは・・・」
これはあまりにもアンバランスだ。
ゴースがシェリーを口説いていたりしている。
皆が皆シェリーとファーを敬っていた。
「はぁー。」
どっかに女盗賊団とか転がってないだろうか。
そんな都合よくいないよね?と思っていたら敵勢反応が近づいてくる。
「あ、いた。」と俺の後ろ側から、何人もの女の獣人が近づいてきていた。
ウッテとクロンは全然気付いてない。
むしろイチャイチャしまくっている。
「こいつ等本当に・・・」と頭を抱えた。
「ここはこの二人に対応させた方がいいのでは?」と提案してくる。
「数が多すぎる。」
そう、意外にも二十人くらいいるだろうか?
全員女性みたいなんだが・・・
まぁいいか。と俺は考えることを辞めた。
まず後ろの音をこの二人に届かない様に魔法をかける。
サイレントフィールド。
そして戦闘が始まる。
落とし穴と亜空の罠。
水球バリアで絡め捕って、捕縛したのち亜空に送る。
二人はおしゃべりに夢中で、後ろの状況に気付いていない。
「おい、それで大丈夫か?」と思わず呟く。
最後に女頭目が出てきた。
中々強そうだ。
「よくも!私達の同胞を!」とぶ千切れている。
その声はサイレントフィールドの影響でウッテ達には届かない。
俺には届いているが、背中で背負われている。
なんとも変な状況だ。
その頭目には、後ろを見ずにウッテ達が撃退しているように見える。
舐められていると思われても仕方ない。
「お前だけは!」とその女頭目は罠を掻い潜り。
俺の元までたどり着いた。
「流石ですね。」とツクモさんが喋った。
その言葉にドキリとして、身を引こうとして絡め捕られそのまま消えてしまう。
「うん。」と後ろを振り向くウッテ。
しかしそこには何もなかった。
ただ通ってきた道があるだけだった。
「何かあったの?」
「いいやなんか。こう気のせいだったみたいだ。」とまたイチャつき出した。
「あーあ。胸やけがしてくる。」と胸を抑えた。
「やりますか?」
「やらないからね。」心の中でリア充なんて爆発すればいいのに!とか思っていてもやらないからね。
「ちっ!」と舌打ちを打つ。同じく胸を抑えていた。
「リア充なんて爆発すればいいのに!」とツクモさんが言ってきた。
「おいそれどこで覚えたんだ。」
「リア充なんて爆発すればいいのに!」がなぜか俺の声で再生される。
「お前、、まさか!俺の心の声まで録音できるのか!」と愕然とした。
「ふふん。」と勝ち誇った顔をしている。
どんなもんだい!と鼻を高くしないで欲しい。
俺は現実から目を反らすことにした。
「そんなことより仲良くやれるかな?」と俺は亜空を画面に映していた。
そうしたら、ファーと女頭目が喧嘩をしていた。
俺は頭を抱えたのだった。
「まぁそうなりますよね。」とツクモが言ってきた。
「何がそうなるんだ?」と俺は聞いた。
「獣人族と言うのは元来、強い者に従う生き物。今あそこでは、この亜空間の支配者を決める戦いが起ころうとしているのです。」
「なるほど?えっ大丈夫なの?」とファーの事を心配した。
「まぁ大丈夫でしょう。」とツクモが言ってくる。
俺はその画面に集中した。
「ここは一体どこだ!お前たちは何なんだ!」と抗議してくる女頭目。
「ここはテトの領土らしいのよ。それ以外は詳しくは知らないわよ。」私もわからないポーズをする。
「なんだお前も知らないのか?それになんだか同族の匂いがするぞ!ま、まさか!ガルル!」と威嚇してきた。どうやら同族を奴隷にしているんじゃないかと疑っている。
「なんだ、この私に喧嘩を売るのか?」と睨み合う。
二人の視線が交差した。
女頭目の爪が伸びる。
ファーは剣を構えた。
その剣に尋常ならざる魔力が流れ込む。
「あんたやるね。だけど盗んだ同胞は返してもらうよ!」となんだか楽しそうにする。
「ではやりましょうか!」
「ああ。」と二人が行動を起こした時。
「ちょっと待った!」とそこに割り込む者がいた。
「お前は!」
「何でここに!」と驚く二人。
そこにいたのはシェリーだった。
ファーは目の前に現れたシェリーに剣が当たると思い軌道を反らして態勢が悪くなり、そのまま倒れ込んだ。
対する女頭目も爪を仕舞い攻撃を途中で止めようとして、止められず反らすことしかできなかった。そしてよろけてこけてファーの上に乗っかる。
「ぐへー。」とファーは声を上げた。
「ハルお姉ちゃん止めて!」と声を出していた。
「お、お姉ちゃんだと!」と俺は驚いた声を出していた。
「どことなく似ていましたので、そうだったんですね・・・」と納得いった顔をするツクモ。
この日この時、亜空間のテトの領土は、シェリーを上に頂いた統治に代わっていくのだった。
もちろんそのさらに上に俺がいるだが、今は言わないでおこう。
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