異世界のバレンタイン 後編 あの人らしい
異世界バレンタイン 3部の最後です。
俺は幸せの絶頂にいた。
大好きなリンズと結ばれたのだ。
そしてこの日、俺は夢を見た。
俺の横に飛んできたのは魔法だった。
凄まじい威力の魔法。
飛び散ったのは甘いなにかだった。
口に入ったのだろう。
そう感じる。
それを放ったのはリンズだった!
「何やっているの!」と俺は聞き返す。
「キースはモテるから、私のだってマーキングしなきゃ!」と言って再び魔法を放ってきた。
俺はそれを躱した。
「これはもしかしてチョコか?」と舐めると確かにチョコの味がする。
一度トッテに、少しだけかじらせてもらったことがあった。
美味しかったが、あんまり食べようと思わなかった。
それをなぜ?と心の中で思う。
「ふふふ。」と笑うリンズが少し恐かったりする。
たまにこういう時がある。
もちろんこうでも俺は受け入れる覚悟がある。
「俺はキミのことが好きだ!リンズしっかりするんだ!」とこちら側に戻ってもらうための魔法の言葉を言った。
しかし効果は薄い。最近は特にだ!
抱き締めてあげなければ・・・この状態は変わらない。
段々とこの状態が最近悪化している。
「幸せになるほど・・・それが壊れるのが恐い。」と言っていた。
俺はなんと答えていいのかわからない。
ただ真剣に向き合わなければならない。
俺は逃げるのを辞めた。
リンズの前にゆっくりと歩いていく。
リンズは俺に向かって魔法を放ってくる。
その魔法が直撃した。
それでも前に進んでいく。
それしか知らない。
それしかわからない。
優しくしてくれたリンズしか知らない。
もっと、もっとリンズを知りたい。
だから戻って来いリンズ。
顔面にチョコ魔法が直撃した。
くらくらする頭を何とか我慢してリンズまで届いた。
「リンズ、愛している。」
その言葉に次の魔法を放つのを辞めたようだ。
「だから恐がらなくていい、俺も恐い失うことが・・・」
「幸せが嫌だって言うなら、一緒に不幸に落ちてやる。だから戻ってこい!俺の愛しているリンズ!」
「キース。私、貴方を傷つけて・・・」と呟く。
「そんなこと今更だろう。お前に傷つけられるなんて最高さ。」
「うん、ごめんね、私もう大丈夫だから・・・」とお腹を擦った。
「どうしたんだ?」
「うんうん、なんでもない。」と答えるリンズ。
何かを決意するようにこれからのことをキースと話し始めた。
そして現実に戻ったキースはなにか嬉しそうだった。
ウッテ視点
俺は今ワイバーンに連れ去られている。
下をみれば落ちたら死ぬくらいだ。
そうして俺はその恐さに気絶した。
そうして夢を見た。
「ここは一体どこだ?」
「ウッテさん、何でここに?」とその隣には・・・
「クロンこそなぜここに?」俺達は驚愕した。
「もしかして手紙を見て追いかけてきたんですか?」
「うん、手紙?何のことだ?」と疑問を浮かべるウッテ。
「あーまぁ、ウッテさんですからね。」と答える。
「何を納得しているんだか。」
「しかしここはどこだ?」辺りを見回すと何かの魔物の背中のようだ。
どうやらその魔物の上らしい。
背中の上以外は辺りの様子はぼやけて見えない。
「とりあえず座るか。」
「はい。」
二人は黙る。
「これを・・・」とクロンの手にあったチョコを一緒に食べ出す。
チョコは何個かの詰め合わせだった。
「これは・・・昔一緒に食べたチョコか?」
「そうかも、ここに置いてあった。」
「そうか。」
一緒にこのチョコを食べ始めた。
このチョコはウッテの実家の店で、貴重品として取り置きされていた物だった。
大切な日に食べるために・・・そのチョコをウッテは幼い頃にクロンと一緒に食べた。
クロンの誕生日を祝って二人で食べたのだった。
もちろんウッテは怒られた。
そんな貴重品を断りもなく持ち出したのだから・・・
そんな思い出を笑って思い出した。
クロンはウッテの手を握った。
何かを決意したように話し始める。
「ウッテさん、私は王国を出ます。」俯きながら話している。
「そうか。いよいよ俺に愛想が尽きたのか?」と答えた。
「違いますよ。ウッテさんが酒を飲んでいたのは、私がいずれ王国を出て行ってしまうことへの逃げだったんですね。薄々気付いていたんでしょう?」とクロンは聞いた。
「・・・ああ、お前がおかしいことくらい、俺が気付かないわけないだろう。」
「幼馴染ですもんね。」
「そうだな。」と昔のことを思い出し懐かしむ。
二人はしばらく沈黙する。
「達者でな。」とウッテは言った。
「うん。」
「結婚できずにごめんな。」とクロンを抱き寄せた。
「う・・・ん。えっぐ。」と泣き出す。
しばらく泣いていただろうか・・・
「私は帝国に戻ります。」と顔を上げずに言う。
「ああ、元気でな。」とウッテは頭をなでてやる。
「私がいないからってお酒に溺れすぎないでね。」と小言を言う。
「ああ。」
「寝坊もしちゃだめだよ。」
「ああ。」
「それから、ちゃんとしなきゃダメだよ。」
「ああ。」
「ああ、ばっかり。行くなって行ってくれないの?」と涙目で問い詰める。
「行くなって言えば行かないのか?」ウッテはどこか諦めている。
「それは無理かな。でも、言ってもらったら嬉しいんだ。私愛されているって、愛されていたって・・・そう思えればきっとこれからウッテさんがいなくても生きていけれる。」
ウッテへの思いが溢れてきている。
「・・・」と悲しい顔をした。
「それは残酷なことだってわかっているよ!」
いないはずの人を愛し続けるのは無理がある。人は一人では生きていけないのだ。
「それは残酷なことだ。俺はお酒におぼれるだろうよ!」と文句を言った。
ウッテは涙が浮かんできている。
「どうして私たち違う国に生まれたんだろうね。」と嘆く。
「わかんねぇ、わかんねぇよ!」とウッテも泣き出した。
今度はクロンが抱き締めてあげる。
「行くな。行くなよな!」
「うん、ごめん。」
「・・・くそったれな俺の人生だぜ。」と俺達は別れのキスをした。
そのキスはチョコの味がした。
そうしてこの世界は崩壊した。
クロン視点
私は目を覚ました。
気付けば泣いていたらしい。
夜が明けようとしていた。
私はウッテさんの幸せをこの空に願ったのだが・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁー。」と言う叫び声が聞こえた。
その声は聞いたことあるような。
どこかあの人らしい声。
どこかあの人らしい展開。
どこかあの人ならやってしまいそうなそんな気がしていた。
私のもとに降ってきたのだ。
「ウッテさん!」
「クロン!助けて!」と、あまりにもウッテさんらしくて笑ってしまった。
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