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お前はどこに行く?

トッテ達は男爵領の問題を解決して、この領から去ろうとしていた。

テトをクロードに託した。

意外にもあっさりと受け入れてくれる。


なぜだろうか?


その傍らには俺達に敵対していた。

人型がいたりした。


もう一度見たらいなくなっている。


俺はぞっとした。


アイツが本気を出したら俺はやられるんじゃないかと。

改めて強くなろうと決意した。


「じゃあな兄貴。」と挨拶する。

「そんじゃあトッテ。」

俺は昨日一対一の模擬線をして負けてしまった。


その代償に兄貴と呼ばなければならない。


それが昔からの決まりだから。

「これで5分だからな。」と拳を出してくる。

「そうだったか?俺の方が勝ち越してたと思うぞ。」


「帰る前にもう一戦するか?」と二人が剣の柄に手をかける。


その頭にゲンコツが飛ぶ。

ナルミとシズクだ。


「クロード!お世話になったんだから、しっかり挨拶しなさい。」とナルミ。

「いてぇー。」と頭を抑える。


トッテの頭にもゲンコツが落ちる。

「あ、痛!」

「トッテさんも最後は笑って別れましょう!」と言うシズクなんだか前より距離が近いような気がする。


「そうっすよ。」とウッテ。


「クロードさん、俺達ずっと酒友だからな!」

「ああ。」と固い握手をしていた。


二人の友情を覚めた目で見ている周りの人間。


「まぁなんだ。元気でな。」とトッテに挨拶するルシール。

「はい。」と返事を返す。


ルシールはトッテ達に感謝していた。

まるでトッテが亡き旦那に被って見えたりもする。


まさかそんなことないのにね。とどこかで思った。


「お姉ちゃんもありがとう。」とシズクに声をかけたのは娘のルンだった。


「はいはい。」とその頭を優しく撫でてやる。

それを生暖かい顔で見ていたトッテ。


「あうあう。」とルンが抱いているテト様が、まるで元気でなーと言っているような気がした。

「ふふ、テト様も元気でね!」と撫でてやる。

少しお別れに時間が掛かった。



皆が皆、手を振っていた。

見えなくなるくらいに・・・・


俺達はそれに振り返り、その度に手を振っていた。


「これでリースの兄貴に報告ができるな。」

「また、あの山越えですか。」

「うわー、もう行きたくねぇ―。」と嘆くウッテ。


「仕方ないだろう子爵領がきな臭いんだ。」

「早く帰って報告した方がいいですね。」

「うへ。」と声を出す。


「行ってしまわれましたね。」と聞くナルミ。

「ああ、だがまた会えるさ。」と答えるクロード。

「そうですね。あっ、そう言えばこの子!」とテトを抱きかかえる。


「私たちの子供になるのね。」

「あ、ああ。」とそう言えば結婚するって男爵夫婦に誓ったんだったと思い出した。

汗をかくクロード。別に今更結婚しないとかないけど。

あの場の勢いとかそう言うのに飲まれてしまったような気がしてならない。

少し頭を抱えた。


「どうしたの?」とナルミが聞いてきた。

「別にどうもしてない。」と答えるクロード。


「そう言えばこの子名前なんて言うの?」ルンの手から赤ちゃんを受け取る。


「ああ、テトって言うんだって、トッテ達が言ってたな。」

「そう、テトよろしくね。」と赤ちゃんを掲げる。



「それよりもクロード様、誓ったこと破るわけじゃありませんよね?」とクロードの肩を掴む者がいた。

「セルス。」汗をかくクロード。

「まさか今更、あの誓いを裏切るなんて言いませんよね!」

肩を掴む力が強くなる。


「言わない、言わないから!」と言って引きずるようにクロードは連行されて行った。


これからクロードは迷惑をかけた人達に謝るのだった。

それに付き合ってセルスも頭を下げていた。


そのことによって許され、屋敷に帰る事が出来たのであった。



気付けばお嬢様の服を引っ張る子ルンがいた。

「うん、どうしたの?」と聞く。

「私、テトのお姉ちゃん。」と恥ずかしげに言う。


「そう、よろしくね!お姉ちゃん!」と言って再びテトを返した。

「うん!」と笑顔のルン。


その後ろでは子供の狼がルンにじゃれていた。


「この子も可愛い。」と抱き着くナルミがいた。


この日、再び家族が出来たのだとナルミは嬉しかった。


「お父様、お母様、私やっていける気がします。」と空に向かって報告した。




俺達はあのダンジョンの洞窟の所まで来ていた。

周りを見るがゴブリンの一匹もいない。

砦で一夜を明して英気を養った。


「よし行きますか。」と皆に声をかける。

シズクも準備が出来たようで立ち上がった。


ウッテは嫌々ながら向かおうとして・・・浮いているのに気付いた。


「あれ。」と下を見れば地面が遠ざかっていく。


「ウッテ!ウッテ!」と叫ぶトッテの姿が小さくなって行った。

その隣ではシズクが何か呟いている。

たぶんこう呟いたんだろう。


「やはりこう言う運命なのですか。」と天を仰いでいる。


「ちょっと、ちょっと!」と叫びながら上を見上げるとワイバーンがいた。


俺はワイバーンの足に捕まれ飛んでいたのだ。


「ぎゃおうおがかぎは。」声にならない叫び声を、声が枯れるまで上げ続けたのは言うまでもなかった。



「行ってしまいましたね。」

「そうだな。」


「どうしましょう?」

「どうしたらいいと思う?」と二人はこの後、ウッテを追うかどうか大いに悩み、結局ウッテなら大丈夫だろうと結論付けた。


「頑張れウッテきっとお前なら・・・」

「ウッテさんお元気で・・・」と二人はウッテが消え去った方向に願うしか出来なかった。



そのおかげで二人は急接近することになる。邪魔者は消えたのだ。


「助けてくださーい。」

後日二人はそんな声がいつまでも聞こえてきてならなかったと語った。

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