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疫病神と呼ばれてますが、バレないように影で活躍中!!  作者: 矢斗刃
第二章 ユーグ男爵領vs大野盗団
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裏切りの狼煙

「なにーーー。」と辺りにダストの叫び声が木霊した。


「どうして食料がなくなっている。」とぶち切れている。

「それは残念ながら、敵の襲撃にあったのです。」と答えるゴース。


「くっ。」と置いて会った机に拳をぶつける。

「いてぇー。」という叫びを出した。


「兄上、そんなことをしても状況は良くありません。」

「ならばどうしろと!」と八つ当たり気味に聞く。


少し考えるゴース。そして答える。

「我々がやれるべきことは二つ。逃げるか、進むかです。」

「むむ。」と考えながら座った。顎で続きを促す。


「まず、逃げる。食料がない我々は戦うことができない。これは子爵領に退却し、食料を補充してもらうべきです。そして再び進軍する。これは私がお勧めします。」

食料がない軍が、悲惨な末路を迎えるのはわかり切っている。


「そんなことできるものか!」と怒鳴り散らす。まったく兄上は!


「では進軍するのですか?そうして一日か二日で男爵領、領都ユーグを落とさなければなりません。」

それは確かにできる。

男爵領の領都はそれほど防備に優れているとは報告に聞いていない。

たぶん余裕で、しかしさっきの襲撃のことがある。

一筋縄では行かない相手だろう。あまりお勧めできない。

しかし、この状況ダスト兄上はもう、戻れない。


ダストは立ち上がる。

「進む、進むぞ俺は!」と決意を固めた。


自ら天幕を出て兵達に激を飛ばした。


兵達はやる気になっている。一部を除いて・・・


その部隊はジョンの部隊だった。

リーダーのジョンの不在もある。

昨夜の出来事。土人形たちが俺たちの仲間の声で叫び声を上げていた。

最後のトドメとして、リーダーがあのパーカスに変わったことだ。


パーカスは何かにつけジョンの部下たちにジョンの悪口を吐いていた。

そして俺達にも辛く当たる。

今までの鬱憤を晴らすように暴力が振るわれた。


中には俺たちの元から離れ、パーカス側に付いた者たちもいる。


「俺たちは何のために・・・」


優しく、気やすげに話しかけてくれるお頭の顔が思い浮かぶ。

意外に人望があった。


俺と一緒に大きいことをしようと言ったことが頭から離れない。


俺たちは元は帝国の食い詰め者だった。


日々の食に困り、さ迷っていた。

そんな奴等を集めて行って、物を奪ったり、人を襲ったりした。


気付けば大きな野盗団になっていた。

食っていけるようにと、豊かな土地に住みたい。

最後の依頼でここを取ることを決めた。


ジョンを領主にして、俺たちはそこに住むんだ!


皆の思いは一緒になった。

だけど、結局元に戻ってしまうのか。

あの時みたいに権力者にすべてを奪われて・・・

俺たちは立ち上がれなくなっていた。


「それでいいのか?」と俺の耳元で囁く声が聞こえる。


「このまま行ったら殺されるよ。」もう一人が違う耳元で囁いてきた。


まるで悪魔の囁きに聞こえる。

だけどそれが悪魔でも・・・と俺の決意は固まった。


皆を一人一人説得していく。

信用できる奴から・・・信用できない奴は説得しない。

最後の最後に選択を突きつける。

それでこっち側に来ない奴はやるしかない!つまり敵だ!


俺は時を待つことにした。


号令がかかる出発の時だ。


まだだ、まだ・・・決起するのは領都についてからでいい。

男は焦らなかった。

暴力にも耐え、パーカスに従順になった。


牙を研ぎ澄ませ、やる時は一瞬だ。



「うまく乗せられたようだ。」

「ええ、首尾は上々ですね。」と二人はほくそ笑む。



ダスト達は強行軍で進んでいた。

早く着き、早く落として、早く食事を確保をするために・・・

無理を押して進んでいた。


二日後着こうとした時、すでに軍は疲弊していた。


「食い物ー。」

「ご飯!」

「おっかさん。」と一部幻影を見ているものがいる。


そうして俺たち煙を吹き上げている街にたどり着いた。


「一体何が起こっているんだ。」とダストは己の手にあるボトルを投げ捨てた。

自分の分のワインは確保していたらしい。



時間は少し遡る。


俺はファンタジーを体験していた。

城門の堀のお湯に身体をつかる。もちろんそのままだと溺れてしまうが、ツクモによって洗われていた。


「これもファンタジーという奴なのか。」


そのお湯の中にどこから現れたのかスライム達が泳いでいる。

そのスライムはヒートスライムと言う種類のスライムで、体が熱くその熱でこの水をお湯に変えているらしい。らしいというのはファンタジーだからだ。


もしかしたら原理自体が違うのかもしれない。

水が冷めないとか・・・そんなことあるわけないと思ったらそれは現代人だ。


ここはファンタジー覚えておいて欲しい。


「ファンタジーサイコー。」と俺はツクモに洗われているのである。



街から湯気が上がっていることに唖然としているダスト君。

視力強化で良く見えているよ。


俺は風呂から上がり、ツクモの中でゆったりしていた。

もうそろそろ来るかなーと見ていたのだ。


「向こうはどう出てくるかな?」

「攻めてくるしかないでしょう。」ツクモさんが冷静に答えてくれる。

「その心は。」

「腹が減った。ご飯。目の前にある。暴走しない方がおかしいですね。」

「ほう、動いたか。」と風呂上がりのミルクをごっくん。


俺よ、大きく育て!


隊列も何もない攻撃が始まる。


「おいおいまだ距離があるのに走って大丈夫かよ?」と疑問を口にする。

実は城門からの橋はまだ架けられてなかったりする。

純粋に乗り込もうと思ったら、水堀、いや温水掘りを越え。城壁を越えないといけない。

それは非常に難しい。

なぜなら堀の深さが一メートル、城壁も一メートル近くある。

合わせて二メートル。

これを乗り越えようと思ったら身長が高い者でなければまず無理かな。


それに中ではスライムが泳いでいる。


このヒートスライムは意外に敵意には敏感で、人を溺れさせようとしてくる。


実は恐い魔物だった。


お湯につかる時には平和に・・・それがこのスライムの願いなのかもしれない。


「うれしい誤算なのかもしれないな。」と俺はつぶやき、目の前の敵を見ている。

ダスト・・・俺はこいつを一発殴りたいと思っていた。

妹ちゃんにひどいことをした奴は万死に値する。

妹ちゃんに世話になっていた恩を返すべく闘志に燃えるのであった。


何人かが縄を使って中に入ったみたいだが、冷静にクロードたちが対応していた。


案外に余裕だな。

まぁだけどまだこっちは攻められないんだけどな・・・

数の差は意外に大きい。


夜襲で百人位いなくなったとしても、まだ千人くらいの兵がいる。



パーカスは焦っていた。

この領都はもっと簡単に落ちると思っていた。

中にいるはずの仲間からの情報でも、こんなの出来ていなかったはずだ。

一体何がどうなっている。

俺はどうしたらいいんだ!と頭を抱える。


「そうだ。ジョンの部隊を使おう。使いつぶしてしまえばいい。」と悪い顔になる。

野盗の奴等にこの命令を届けるように部下に連絡した。


「なるほど、なるほど。」と頷いている。

「パーカス様のご指示です命令を遂行しろ!」と頭ごなしに言ってくる。


「要するに我らに捨て駒になれと言うのですね!」と鋭い眼光で睨みつける。

「汚らわしい野盗風情が、この我々に使われるのだ光栄に思うことだ。」と言って踵を返す。


その背中を俺は切った。

「ぐはっ!う、裏切ったな!」と言い倒れる男。


「もう、始める準備は出来ています。やりましょう。」

「今こそ我々が立ち上がる時です。」


皆の声を聞き。己を奮い立たせる。

「我々はジョンの意思を継ぎ、非道なる男パーカスを打つ!」と宣言する。


「ウナイ!やる!」


「「「ウナイ、ウナイ、ウナイ!」」」とならず者たちはウナイコールだった。


「俺に続け!」と裏切りの狼煙を上げた。

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