埋伏の毒と奪った物
俺たちはあの後、宿屋で晩飯を食い終わった3人組のうちトッテとシズクを連れ去った。
ウッテは置いてかないでーとか言っていたが、知ったことじゃない。
頑張れウッテ。
ここでお前が頑張れば何とかなるはず。
トッテは抵抗したが、シズクは諦めてツクモの肩に乗っている。
イーツはトッテを抱えていいた。どうやらイーツが気絶させたようだ。
俺たちは二人を連れてダストの元へ向かっていた。
「貴方たちの目的は一体何なのでしょうか?」と俺の肩に乗っているシズクが聞いてきた。
俺は答えてやる義理はない。
しかし、ツクモが答えてしまう。
「ふむ、目的と言われても困りますね。」
「喋った!」と反応するシズク。
「おい、こら!」と喋った事に対して抗議する俺。
「問題、ありません。ただ、目的は一致しているとだけ答えておきます。」
それだけの言葉でシズクは理解する。
「なるほど、敵でないというならいいでしょう。特に今、貴方達の素性を聞くのはやめておきます。」と納得は一応しておいた。
「ただ一点、いや二点忠告しておきます。王家、この国に敵対するなら私は貴方達の敵になります。」
「それは仕方ありませんね。」と返事をするツクモ。俺も頷いた。
「もう二点目、今どこにいるかわからないけど、この辺にとんでもなく関わっちいけない奴がいる。会ったら逃げなさい。勝てないわ。」と深刻そうに言ってくる。
「そんな人がいるのですね?」
「ええ、私も会ったことあるけど手に負える相手じゃなかったわ。逃げるので精一杯。」と首を振る。
「そんなに強いのですか?」真剣なようだ。まるで戦いたいような。
「ってバトルジャンキーじゃないんだから、そう戦いがるなよな!」
「ちぃ。」とツクモさんが舌打ちを打つ。
「おい。」とツッコんだ。
注、俺の声は人型の防音機能で漏れていない。
「それでその強い人はどんな人なのですか?」興味は尽きないらしい。
「そうですね。帝国の情報部の人間で、色々な顔を持っている事で百面相と呼ばれているわ。」会った時の事を思い出したのだろう震えている。
「そうなんですね。覚えておきましょう。」
「ふーん。」と俺は聞き流していた。
「俺は着くまで寝ている。ツクモ後よろしくね。」と俺はゴロンとなった。
中は振動がなくかなり快適な空間なのだ。もちろん戦闘中は除く。
ツクモとシズクは情報を交換しているどうやら仲良くなっているようだ。
あとで俺は、この時の話しをもう少し聞いておけば良かったと後悔することになる。
「そろそろ起きてくださいテト様、始めますよ。」と深夜皆が寝静まった頃だった。
もちろん夜警の人たちは立っている。眠たそうにあくびをしていた。
そいつを気絶させる。監視の目が緩んだ。
計画通り、野盗の集団に土人形を嗾ける。
俺たちはある部隊を狙うことにした。
そこはジョンの部隊だった。
土人形とジョンの部隊が交戦を始める。
深夜の戦いと言うのは分かり辛いのだ。
特に何が起きているのかとわからなくなる。
イーツとバンは食料を奪いに行ってもらった。
俺はこの土人形達が喋る事を知っている。
ある土人形はこう言った。
「俺たちは嵌められた。」
「なんだ?」とジョンが聞き耳を立てる。
「子爵にやられた。」
「親分。」
「お前たちはゲーツ、ババルム、二コラムなのか。」と青ざめる。
「俺たちは嵌められた。」
「子爵にやられた。」
「親分。」と発言を繰り返す。
「殺される。」とか言っている。
そうこれが・・・アイツらの言葉で惑わせよう作戦。キラーンと目が光った。
ボイスレコーダ風に再生される。
「まさか、そんな!」と後ずさるジョン。
「一体、お前たちの身に何が?」と戸惑っている。
周りを見れば俺たちの仲間も戸惑っている。
「殺されたのか子爵に・・・」と拳を強く握った。
地面を思いっきり拳で叩く。
そんな時にパーカスの軍が土人形を相手にし出した。
「殺せ!」と命令する。
「まて、やめろ!やめてくれ!」と泣き叫ぶ。
しかしパーカスの部隊は攻撃をやめない。
俺は止めようと駆け寄ろうとしたが、部下の奴等に止められた。
「ゲーツ。ババルム、二コラム!」と俺は叫ぶ。
そんな言葉は届かなかった。
俺は膝から崩れ落ち、顔を地面に伏せった。
「ふん、こんな弱いモンスターにも勝てないとは。」とこっちに来るパーカス。
「お前、お前ー!」とジョンは暴れ出した。
「軍紀を乱すとは良くないことだ!」と言ってジョンを殴った。
「ぐっ。」と堪える。だが何度も殴られた。
ジョンは気絶していた。
「ふん。この男が裏切り者だ。引っ立て!」と言って部下たち運んでいく。
「そして君たちは私の部下になった。以降私に従え。」と命令を下した。
ジョンの部下たちは嫌々ながら従った。
パーカスはこれで軍内部で自分の立ち位置が上がる事を喜んだ。
「ふふ、俺は勝つる。」爵位だって受けてやる。
この俺の成り上がり劇が始まるんだと震えていた。
しかし、そんな部隊に潜入する二人がいたことをパーカスは気付かなかった。
さてこっちの毒は撒いた。
向こうの薬を回収しようか?と俺はほくそ笑んでいた。
そこはイーツとバンが行動を共にしていた。
できるだけ気付かれずに中に潜入していた。
気付かれそうになると倒して、食料があるところまで向かっていく。
「ここか。」そこには食料が山のようにあった。
ちょっと前に俺たちはあることに気付いた。
なぜか知らないが俺達人型はアイテムボックスを共有している。
つまりこれらの食料をアイテムボックスに収めていく。根こそぎ。
まるで野盗にでもなったような気分だ。
ああ、相手が悪い野盗だから義賊になるのか?
「誰だ!」とどうやら見つかったようだ。周りに兵士が集まってくる。
「ふふ。」バンが笑った。
「楽しいですな。こう言う悪だくみも!」イーツが言う。
「そうだな。死んで自由になるのも悪くない。願わくば世界の果てまで行ってみたいものだ。」
「それはいいですな。」
気付けば周りを囲まれていた。
「こうなっては仕方ないですね!」
「そうですな。少し暴れますか。」と言ってそこにはなかった剣を握る。
剣戟が交差し、バンの魔法が火を吹く。二人の無双が始まった。
気付けば辺りは怪我人の山になっている。
「そろそろ引き時だ。」
「わかってますよ。」と言って最後の魔法を唱えた。
俺たちは撤退した。
その撤退をグールが援護してくれている。
それを追える者は誰もいなかった。
「あーご苦労さん、ご苦労さん。」と労ってくれるテト様がいる。
「ただいま戻りました。」とバンが答えた。
「へへ、やってやりましたよ!」とイーツ。
「二人ともやりすぎだよ!反省!」という言葉と共になぜか正座させられた二人だった。
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