バラバラなもの
そんなこんなのことがありながら、俺はスパイ狩りをして着々と準備をしていた。
今の状況をあまり敵に知られたくはない。
索敵で敵を見つけだし、亜空間にポイを繰り返した。
「これで最後っと。」と人型で蹴り飛ばす。
そうして最後のスパイをやっつけるころには時刻は夕方である。
そんな俺に近づく気配がした。バンだった。
「テト様、クロードたちの作戦がわかりました。」
「そうか・・・で、俺たちにできることはあるか?」首を振るバン。
「しかしな、たぶんここに来る敵の数は割と多いと思うぞ!」
「だからこそ、かもしれません。」
策とは何等かの綻びで瓦解するものだ。
それが大きなものでは、もはや策にはならない。
「む、わかった。それが策の一つなのか?だがせめて一回は打撃を与えておきたい。」
「そうですね。私もこの身体で戦ってみたいと思ってましたよ。」
「俺とバンとイーツで夜襲を仕掛けよう。」と提案した。
ついでにあいつ等も連れて行こう。とあの三人組を思い出していた。
「なるほど・・・二人で事足りるのではないか?」と俺は提案した。
「そうですね。一人は、あまり役に立ちそうにありませんから・・・」
ウッテの顔を思い出していた。うんズッコケそうだ。
クロードも目立つという意味では外した方がいいだだろう。
「そうなると、トッテとシズクさんか?」
「はい、その方たちなら問題ないでしょう。」と返答する。
「さて、この作戦はうまくいくかな?」
なんだかそのまま泥試合になりそうなんだよな。
ダスト達は順調に進軍を進めていた。
しかし、ここに来て一つの問題が起きる。
「何!野盗のアジトに人がいないだと!」ダストが聞き返す。
「はい、俺も何度も確認しましたが人がいませんでした。それと、何者かの襲撃の後がありました。」とその野盗は頭を下げて報告した。
「兄上、恐らくモンスターの襲撃でもあったのではないですか?」
「む?」とそちらを向けば弟のゴースが答えてくる。
「この間の事ですが、野盗団の最初のアジトが・・・ゴブリンに襲撃され取られたらしいのです。」
「それは・・・」
「シャラップ!」と何か言おうとした野盗団組のリーダーの言い分を止める。
「己の無能を他の人のせいにしないで欲しいですね。」とが嫌味たらしく言う元ユーグ男爵領の兵士。
「お前!」と二人の視線が交差した。
すでにこの団は戦後の覇権争いの真っただ中だ。
誰もが勝つことを疑っていない。
ならばよりよい立場に・・・少しだけでもいい、そうすればこの団への影響力が増す。
〝次は自分が上に立ってやる〟と二人は思っていた。
そんな二人に笑みを浮かべるダスト。
ダストは元からこの二人にすべてを渡すつもりはない。
今のままこき潰すつもりだ。
兵士の方は裏切者いつ裏切ってもおかしくない。
野盗の方は犯罪者。俺に近づいて欲しくないと思っていた。
今、野盗団はこのダスト派、子爵領の兵及び救出されたダスト、ゴースの私兵。
帝国に支援された野盗団の面々。
しかし、これは今、アジトを潰された事で勢力は減っていた。
さらに元男爵領の兵士たち裏切った事で、兵は少ないが一騎当千の者達。
野盗たちに数で遅れていたが、ここのアジトが潰れたことで少し多いかな?ってところまで来ていた。
元兵士たちにとってこれはチャンスだった。
「モンスターに怯えて逃げる役立たずの者たちなどいりませんよ。」
「お前!」と野盗のリーダーが掴みかかった。
「そこまでですよ。ジョンにパーカス。」と止めに入ったのはゴースだった。
ダストとしてはこの二人の争いは続けさせ、共倒れを狙い。
そして自分が確実に、この軍勢の指揮を取りたいと考えていた。
三者が三様に入り混じる中、バランスを取っていたのは意外にもゴースだった。
立ち位置もいい場所を確保している。
仲裁役なら、自分がいる意味があるとアピールしている。
ゴースの立ち位置は絶妙な場所をキープしていた。
しかし、その腹の中では・・・
兄上、早く死んでくれないかな?
そうしたらこの軍は僕のものになるのに・・・と腹黒いことを考えていた。
「ゴースよ。仲裁ご苦労。」ダストはこんなゴースを可愛い弟と可愛がっていた。
「それよりも・・・あのアジトに布陣することはおすすめ出来ませんね。」とゴースが言う。
「それはどういうことだ。あれは俺たちのアジトなんだぞ!」と抗議するパーカス。
「状況を見てください。あの砦に布陣するとして・・・モンスターに襲われて誰もいない砦なんて不気味すぎますよ。」
「うっ。」と固まるジョン。
「そうするなら別の場所に陣を引いて野営した方がいい。警戒は怠らずにね。」と答え返すゴース。
「勝手にしろ!」と話し合いから離れていくジョン。
「まったく野盗の方々には困ったものです。」と語りかけてくるパーカス。
「パーカス、寝ずの番と設営は君等の隊がやってくれ。」と命令するゴース。
「ゴース殿、夜警なら野盗団にさせればいいのです。」と抗議してきた。テントなどの設営はわかるしかし、夜警は疲れる。
そんなもの輝かしい私の未来には不要なものだ。
「やれ!」とその上で命令してきたのはダストだった。
「しかし。」と抗議するパーカス。
「俺は奴等を信用していいない。野盗なんだ。夜になると物取りのような事をやるに決まっている。」と説得するダスト。
「なるほど一理ありますね。」と納得したパーカス。
「お前には期待している。」とその声を聞き震える。
「拝命いたします。」と騎士の礼を取る。そしてここから離れて行った。
「良かったのですか?」と聞いてくるゴース。
「奴等を信用していないのは事実だ。そして使えるものを使って何か悪いのか?」
「いいえ悪くありません。しかし奴等の中にパーカス殿を入れて良かったのですか?」
ダストとゴースの視線が交差した。
「お前にはわかったか、流石我が弟だ。」と褒めた。
「必要なのは俺とお前だけだ。後はいらん。だから、この戦いで切り捨てるさ。」と持っているのはワインのボトルだった。
それを口に含み飲んでいく。
「ぷはー、そして俺を庇って敵の矢に打たれると言う名誉を与えてやろう。そうすれば騎士にでもさせてやるさ。」ボトルに再び口につけ飲み干す。
そして悪い顔をした。
「死んだ後にな!天国で泣いて喜ぶはずさ!」
「なるほど、それは素晴らしい!」と酔っぱらいの相手をするゴースであった。
「見ていろよ。この世に俺の名前を轟かせてやる!」と意気込んで再びボトルに口をつけた。
しかし、そのボトルは空だった。
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