残念スパイコンビ
俺は現在、男爵領にいるスパイを洗っていた。
「ここかな?お邪魔しまーす。」と入ったら剣で切られた。
もちろんこの人型には効かないのだよ。
剣はその外殻の硬さのため逆に折れてしまう。驚いている所を俺は殴りつける。
男は吹っ飛ばされた。
家までダメにしちゃったかー。と呟いた。伸びているそいつを引きずり、イーツに渡した。
「拷問よろしく!」とイーツに敬礼した。
敬礼を返してきた。ノリがいい。
こんなことをしていると街の住人は俺たちに怯えている。
だからこそ!やらないといけないのだよ!
「何か悪いことを考えてますね。」とツクモさんが聞いてきた。
「それ今聞いちゃう?」と俺は逆に聞いた。
「わかりました。後での楽しみにしておきます。」
「よし!」と返した。
イーツとバンとミキシアは必要な時はゴーレムで喋る事ができる。
もちろん最小限だ。
あまりばかすか喋ると、意外と大量の魔力が消費されるらしい。
だから、最低限の挨拶しかしない。
それに身内にバレない様に話しかけるのを一応禁じた。
どうしようもない時以外は・・・ね。
それで成仏してくれるのならいいことだ。と青い空を見ていた。
「後、何人かな?む、なんか色々人が多くてな。」
帝国、魔族、連合それぞれのスパイに子爵の所の人間までいる。
スパイのオンパレードだ。
まるでスパイの溜まり場!
ま、まさか!
いや、まさかそれ暗黙の了解とか言わないよね。
一人怪しそうなのが、領主邸にいるが・・・あれはとりあえず味方なのかな?
そして今、俺の前から二人の奴がこちらに歩いてくる。
一人は魔族で、もう一人は連合の人のようだ。
「こんにちは。」と俺は一応挨拶しておく。
「こんにちは。」となんの特徴も掴めない連合の人間。不気味だ。今は敵ではない。鑑定すれば気付かれてしまうだろう。
「よお。」対してこちらは目立っている。女で角が二本生えていて、まるで鬼と人間を混ぜ合わせたかのような存在だ。
その二人は俺の行く手を塞いでいた。
「あの何か御用でしょうか?」と俺は聞く。
「いえいえ、私たちは一応挨拶にと思っただけでございます。」ともみ手の男。
一体何を考えているんだ。もみ手、すり寄りたいって事か?何のために?
「ジェーン。お前、まどろっこしいんだよ。こいつ私たちの存在に気付いているよ。」と直感がそう言っているのだろう。そう言うタイプのスパイってことか?
「キリカ、貴女バレずに潜入って言葉知らないの?」と声色を変える。
「そんな言葉俺の辞書にはない!」と断言する。
腕を組んでいて、男前でカッコいいぞ!
「なんでキリカと一緒に来ちゃったのか?」と頭を抱えた。
「それはあれだ。腐ったという奴だ。」わけわからないことを言う。
「それは腐れ縁ね!」
「そうとも言う!」
間違えたのに堂々としているな。
なんかこう残念な子なのか?
二人はなんだか息がぴったりのようだ。普段からよく会っているのだろうか?
「ああ、もう面倒な事はなしにしてもう直接聞くわよ。今どう言う状況なの?」
「うん?」俺はわからず首を傾げる。
「お前らがなんというか、約束破って帝国のスパイを取り締まっている。」
「そう言うのがあるのか?」俺は知らず存ぜぬを通す。なんとなく気付いたけど。
「なんだ新人か?私等と同じ匂いがしたんだけどな?」とキリカ。
「それでこの落とし前どうつけるのか!って聞きに来たのよ。」と鋭い眼光のジェーン。
「ああっと、俺らは一般人だよ。」とロボットのように片言で返した。
「違うな。」
「違いますね。」と二人が即答で答えた。
ギョッとする俺。
「この領では今、異変が起きてるの。城壁の掘に、野盗の存在。危うい状況なのよ。そこに貴方たちがどう関わっているのか興味があるわ。」
男の顔で女の声で言われるの違和感しかない。
この人も残念な人なのかな?まさかの残念コンビ!
「失礼な顔をしているぞ!」
「私もキリカと一緒に扱われたくないんだけど!」と抗議してくる。
「いっちょ身体に聞いてみるか?」と戦闘態勢を取る鬼切包丁を掲げる。
背中に背負ってたのか。
あれはさすがにこのツクモが傷つけられるかもしれない。
「ああ、もう。いつもいつも!」とこっちは小銃を取り出す。
「銃がこの世界にもあるのか?」
「へぇ、銃を知っているの?これは魔導銃と言って少ない魔力を圧縮、弾丸にして打ち出すの。最新式なのよ!」と後は永遠と魔導銃の素晴らしさを懇々と説明してくる。
ジェーンが狂気乱舞している。一体何が・・・
「ああ、そいつは魔銃マニアなんだ。説明は聞き流せ。長いぞ、放置しとけ、さてはじめるかね。」と鬼包丁を上段に構えた。
「どらっしゃい!」と言う音と共に俺のいた所に振るった。
地面に物凄い亀裂ができる。
「あれやばいでしょ!」とゴクッと喉がなった。
どうするともう一撃が来た。
「そこまでですよ!」とメイドが現れる。
頭にはカチューシャをしていた。
黒服のワンピにミニスカート、エプロンドレスに特徴はおでこだろうか?
「あんたも出てきたか、皆あっちの城壁にいるんじゃないのか?」
「私はこれから行くところですよ!最終組なんです!ふふ。」となんだか嬉しそうだ。
「それで、この落とし前はどう付けてくれるのかしら?」とおっさん顔で声女のジェーンが言った。
「なんの事ですか?」と首を傾ける。
「「こいつだよ!」」と俺を指してくる二人。
おでこちゃんが俺を上から下まで見てきている。
「うーん、知らないかな?こんなペット飼っていないんだよね?二人の所じゃないの?」
「知らん。」
「こんなのがいたら、ここに来させないわね。」となぜか眼鏡を上げる仕草をするがないことに気付いたジェーン。
「ぷっ。」と俺が笑ったのは仕方ないことだろう。
「ちょ、笑わないでくれる。」
そんなこと言っても腹が痛くなるだけだ。男の顔で女声。
なぜこんなにも笑ってしまうんだろうか。
「そんなに変か?」
「うーんどうでしょう。私たちにとっては当たり前なのですが・・・」と考える。
「それは私たちがスパイだからよ!知らない人にとってはこれが普通の反応なの。」と俺を指さしてきた。男の顔で・・・
「「なるほど!」」と二人頷いている。
「って事は一般人なんじゃないすか。」
「「あ。」」とようやく二人気付いたようだ。
「一般人に、二人とも自分がスパイだってバラして大丈夫なんすか?」
顔が青くなる二人。あーあ、やっちゃった。
うん、これからこの二人は〝残念スパイコンビ〟で行こうと命名したのだった。
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