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疫病神と呼ばれてますが、バレないように影で活躍中!!  作者: 矢斗刃
第二章 ユーグ男爵領vs大野盗団
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悪役、ダスト再び!

そこは子爵領の領都。

その男はご飯を食べていた。

背は低く身体も引き締まっている。

だが、その男の特徴は顔に包帯が巻かれていることか・・・


一体何十に巻かれていることだろうか?

この男こそ、ドン・フォン・ドレーノ子爵。


「おおう、これはこれは子爵殿。」

そこに入ってきたのはダスト・フォン・ラーズだった。


しかし、話しかけられてもご飯を食べるのをやめない。

それに苛立つダスト。

憤慨やるせない顔をしている。


「ダスト殿、子爵はご飯の時間を大切にしているのです。あまり話しかけられると、ご迷惑になります。」と不気味な男が言った。


「ふん、次期辺境伯のこの私が言っているのに無視とは!」と怒りの抗議を上げる。


子爵は食事を止めた。そのナイフをダストめがけて投げた。

ナイフはダストをかすめ、壁に突き刺さる。


「ひぃー。」と倒れるダスト。


「すまないな、私は食事を邪魔されるのが唯一、大っ嫌いなんだ。邪魔された相手を殺してしまうかもしれないほどにな。」と睨みつけ、フォークでステーキを刺し豪快に食べる。


「ぐちゃぐちゃ。」と咀嚼する。その間にダストは立ち上がった。


子爵を睨みつけるダスト。

「わたしから説明いたしましょう。」と隣の男がダストに声をかける。

「ふん。」と声を出した。


「ダスト様には、我々としては、いずれ辺境伯になっていただきたいのです。」

「ふん、当たり前じゃないか!俺意外がなる選択肢はない!」と力説する。

そんなダストを睨みつける子爵。何が気に障ったかわからない。

食べ終わって口元をナプキンで拭った。


「まずかった。」と一言言った。


「お前がいるからだ。」と子爵は指を刺す。

「はあー、ふざけたことを言うなよ!」とぶちぎれるダスト。


「ふん、ならば期待はずれでないことを証明してもらおう。」とそこに立っている男に説明を促す。


「ダスト様には男爵領を攻めていただきたいのです。」と答える。

「な、なんと!」とびっくりする。


「お前が辺境伯に成れずに鉱山行きにされそうになったのを助けたのだ。同じ裏切者の同志としてな。」

「おおう。」と今度は一変して表情を歓喜に染める。


「だが、結果を出せぬものは帝国に必要ない。それが、現皇帝、いや、次の皇帝の意志だ。」

「わかっている。」と決意する。


「わかっているならいい、男爵領を取り、そこから辺境伯に圧力をかけれるようにするんだ。」執事がワイングラスにワインを注いでいる。


「お前に言われずともやってやる!」と意気込む。


「それが出来れば辺境伯になれる道が開かれるさ。」とワイングラスを手に持つ。


執事がダスト用のワインを持ってきていた。

もう一つ隣の男にも渡す。


「我々の未来に野望に・・・乾杯!」と宙にグラスを掲げた。


それを三人とも一気に飲み干した。



ダストとがこの部屋から出て行った。


「あの男で良かったのですか?」と聞く。


「使い捨てができるのはあの男ぐらいしかいまい。むしろどうこけるか期待したいぐらいだが、男爵領は弱りすぎている。収穫してご飯を作り、後は食うだけのご飯だ。」


「なるほど。」と頷く百面相。


「むしろ落とせなかったらどう落とせなかったか聞きたいくらいだな。ふっ。」と笑う。


それもまた面白いと考えている。

ダストやゴースに、自分たちが毒を吹き込むように仕向けて辺境伯領を得ようとしたが、失敗した。


それもまた面白い!


「私と同じ考えの人がいるとは素晴らしい。」とその男、百面相も同意してくる。


「くくっ、精々男爵領の健闘とダストのこけっぷりにでも乾杯しよう。」


この二人本当は何を考えているのか、お互いの腹の探り合いを楽しんでいる。言わば同類だった。どちらかが失敗すれば、どちらかを生贄にする。そう言う関係だ。

まさか、辺境伯乗っ取りに二人が同時期に動いていたとは・・・

そこで手を組んで今は一緒にいる。


今度は二人で本当にグラスを合わせた。

「面白くなって欲しいものですね。」と言ってワインを飲み干した。



ダストは怒り狂っていた。

自分を下に見る二人の態度が気に入らなかった。


それでも何とか我慢できていたのは自分が辺境伯に返り咲くため。

そのためなら何だってやる。

「正当な辺境伯は俺だ!これは聖戦だ!」と意気込んでいる。


「兄上、準備が整いました。」とそこにいたのは弟のゴースだった。


「うむ。」と領主邸から出ていくと、野盗の集まりと、兵士の格好をした者もちらほら見受けられる。そいつらが中核の人間。

ダストは領主邸から輿に乗って、ある場所に向かう。


そこは大きな広場だった。

集まった数は大体千五百くらいいだろうか。


ダストは輿から降りて壇上に上っていく。

しかし途中で踏み外した。


「ぐぎゃ!」と言う声が辺りに響き渡った。


鼻からは血が出ている。

それをなかったかのようにしながら壇上に上がった。


「ここに集まった兵士諸君、これは聖戦だ!」

辺りで喋り続ける兵士たち・・・それでも構わず演説を再会するダスト。


「私は次期辺境伯ダスト・フォン・ラーズ!」ここに来て皆がそちらに注目する。

辺境伯の権力は大きいのだ期待を持ってその男を見た。


鼻から血が出続けている壇上の男に・・・


「私のもとにいる限りすべてのことは許される!皆、戦え、私のために!そうすれば地位やお金をくれてやろう!」と説得する。


その部分だけしっかりと野盗たちの耳に入ってくる。

そして男爵領から離反した兵士の耳にも・・・


「やったるでー。」

「辺境伯が言うんだったらやちょる!」誤解である。

「おおう。」と皆口々に言い出す。


なぜか士気は最高潮に上がっていた。


もはや最終決戦である。


「私に続け!男爵領など何するものぞ!」と言って剣を抜こうとして抜けない。


その様子に戸惑う集まったならず者達。


その剣を叩きつけ。変わりに拳を突き上げた。

数舜遅れて慌てて、皆の声が一つになる。


「「「「おおおう。」」」」


この軍は今、最高潮だった!


ダストは今、最高の気分だった。自分に酔っていると言ってもいい。

「やはり天は私を見捨ててはいなかった!」と壇上で叫ぶ。


なぜかさらにそのステージが盛り上がった。


「俺たちも天に愛されている。」

「神だ神だ!」

「俺たちに導きを・・・」


ここに後にこの世界を揺るがす男が現れた。


「俺の時代が来ている。」と今度は両手を天に掲げた。



「ふふ、私もこの時に確固たる足場を!」とゴースもやる気に満ちていた。

その顔は数々の傷ができ身体にも切り傷が出来ている。

やる気ではあるが、いつでも逃げられる準備も怠らない。


「流石ですね。」と声をかけてきたのは、辺境伯にいた時の隊長だった。


「お前は、私を見捨てた!」と睨む。


「ふふ、だから助けたじゃないですか。」と言葉を紡いだ。


「うるさい、あの時私は・・・」とあの時馬に引きずられて死ぬ思いをした。

その事を思い出し恐怖で震える。


「ふふ、良かったじゃないですか。これでちゃんとした恐怖を感じた。」

「何を言っているんだ?」と理解できないように言う。


「恐怖とは危険信号です。私たちにとってそれは生きるか死ぬかの瀬戸際、それを体感すると言うことはより危険に敏感になるということです。」と持論を言ってくる。

「逆に鈍感になるかもだろう。」とゴースは返答をした。


それに驚く隊長。

「ええ、ええ、だから貴方のことは良い上司だと思っていますよ。」と答える。

「どうだかな。」と今更になってこの男がうさん臭く見えてくる。


「ふふ、そう警戒しないでください。今はまた仲間じゃないですか。私は再び会えた事を神に感謝したい気分です。」と言ってダストに向かって祈っている。


その姿を見たゴースは。

「いや、なんか違うくないか。」と呆れることしか出来なかった。


キリがいい所なのだろう。

ダストは壇上から降りようとして今度は気を失って倒れた。

俺達はその手当に追われたのは仕方ないことだろう。


気付けば・・・あの隊長は消えていた。

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