ナルミの涙
ナルミ視点
「?」と言う顔をした。
正直、外に出るのは恐い。今でもすぐに部屋に閉じこもっていたいくらいだ。
お父様やお母様がいない世界なんて・・・と思っているのは仕方ないことだと思う。
私は天涯孤独になったのだ。
そんな私を変えることが出来たのはクロードへの思いだった。
両親もそれを応援してくれていた。
いつもいつも、クロードからのプロポーズはされたのかしらというお母様。
クロードはいい男だ。と頷いているお父様。
そんな両親が私を逃がすために囮になり、私を連れて逃げたクロードを憎く思ってしまった。どうしてあの時一緒に死なせてくれなかったのだろうか・・・
私は引きこもった。
両親の事もそうだが、クロードを見ていたら殺してしまいそうな気がしたからだ。
食事も食べなかった。そうしたら死んでしまえると思ったからだ。
それでも空腹には勝てなかった。
クロードが来ても返事はしなかった。
震える手でナイフを持っていた。
しかし、ある日からクロードが来なくなった。
何日も、何日も・・・
私は食事を運んでくるメイドに話しかけた。
そうしたら、クロードは大切な仲間たちを失ったそうだ。
クロードは私と同じ思いをしていると思ったら、自分の苦しさが和らいだ気がした。
ここから出てクロードに会おうと、何度もドアノブに手を伸ばした。
けれど私に掛けられた恐怖は再び襲い来る。
お父様やお母様がいない。
私はどう生きたらいいかわからない。
クロード助けて!といつしか思うようになった。
しかしクロードは来てくれない。
メイドに聞いたところクロードは酒に逃げ、暴力を振るう様になり、この屋敷から追い出されてしまったそうだ。
ああ、もう私はこの部屋から出られないんだ。と思ったら、この部屋が牢獄のように見えて来た。
部屋は真っ暗で、また再び私はご飯を食べなくなった。
そんな時、もう少しだよ。もう少しだから待っていてと両親の声が聞こえたような気がした。そんなことあるはずないのに・・・
その二日後だった。急にクロードが部屋のドアの前で話しかけてきたのだ。
私は嬉しさ半分、戸惑い半分だったと思う。
「お嬢様、クロードです。」
クロードが来てくれた私を助けに!と思った。
「クロード!」私は叫んだ。
「お嬢様、お願いがあります。私と一緒に見てもらいたいものがあるのです。」
私は戸惑った。そして怯えだす。外が恐い。お父様、お母様がいない世界が・・・
「ごめんなさいクロード。私はここから出られないの。」
「お嬢様、私クロードが護ってみせます。どうか一歩、歩き出してくれませんか?」
私はそんなクロードの言葉を嬉しく感じた。
心強く。私は一人じゃなかったって思い出した。だけど・・・私は鍵を空ける。
「お嬢様。」と言う声が聞こえた。
「ごめんなさいクロード、私ドアを開けるのが恐いのお父様やお母様がいない世界が恐いの。」と涙ながらに訴えた。今まで流れなかったものが溢れてくる。
「俺も親父を失って、その大事なものに今まで護られて来たんだって思った。」とクロードが話し出した。私もわかる気がした。両親に護られて生きてきたんだって。
「そして親父が親父の剣が、今度はお前が護れと言っているような気がするんだ!」
私は無言で聞いている。聞かなきゃいけない言葉を・・・
「だからどうか、俺に・・・ナルミお嬢様を護らせてくれないだろうか。頼む。護らせてほしいんだ。」とクロードの決意が聞こえた。
「頼む、お願いだ!」
私は嬉しかった。クロードにこんなにも思われていたんだって・・・
どうするか私はドアノブに手をかけるか、かけないか決めかねていた。
そんな私の前にお父様とお母様が現れてドアノブを握っていた。
「お母様、お父様!」と私は泣いた。その幻は消えてしまったけど、どれだけ泣いたのかわからない。
「ええ、私も歩き出してみます。」とドアノブに手を伸ばして向こう側に、そしてドアをゆっくり開いた。
「痛。」と言う声が聞こえる。どうやらクロードの頭に当たってしまったようだ。
「ごめんなさい、大丈夫?」と声をかけた。そうしたらクロードに思わず抱きしめられていた。私も抱きしめ返す。
「ただいま。」と聞こえるか聞こえないかの声で私は言った。
「おかえり。」とクロードも返した。
私たちはギュッと力を込めて抱き合った。
「ただいま。」とクロードが言った。しばらく会っていなかったからだろう。
「おかえり。」と私が返した。
どれだけ抱き合っていたのだろう。
「ごほん!」と言う声が聞こえた。
私たちはは離れた。もう少し抱き合っていたかったのに・・・
そんなことを思っていると、クロードとセルスが話し合っていた。
どうやら話が終わったようで、セルスがここから離れていく。
「何かあったのですか?」と私が聞いた。
私はいきなりお姫様抱っこをされた。
「えっえっ?」と戸惑う。
「ふふ、ちょっと連れていきたい場所があるんだ。」
「あのそこに一体何があるのですか?」
「ああ、それは行ってからのお楽しみだ。」と笑顔でウィンクしてきた。
私は街中をお姫様抱っこされながら歩いていた。
「ちょっと恥ずかしいわよ。」と抗議の声を上げる。
「おおう、そうか?」とあまり気にしていないクロード。
「むむ。昔からそう言うところあったけど。はぁー。」とデリカシーのなさに溜息を付く。
あの部屋から出たの失敗だったかしら・・・と頭を抱えた。
それから私たちは街の北側に向け歩き出していく。
「・・・」
「・・・」話したいことがいっぱいあるはずなのに・・・言葉が出て来ない。
「ごめんな。」と謝ってくるクロード。
「何が?」と思わず聞いてしまった。
「俺が強ければ、お嬢様の両親を救えたかもしれない。」私は返答に困った。
「強くなりたい。だから俺は西方5剣になると決めた。」とクロードは決意を述べる。
「バカ、無茶だけはしないで、私をもう一人にしないで・・・」と顔をクロードの胸に埋めた。
「ああ。」と返事をしたクロード。
私たちは階段を登っていく。
そこから城壁を歩いていく。
「ここだ。よく見ろよ。」私は下ろされ。クロードは肩を抱いて来る。
まず初めに目に入ったのは上空まで上がる水しぶき。
そこから、湯気が出ているようだった。
「あれは?」
「うーん、たぶんお湯だと思う。」
「お湯?まさか温泉の水?なんでこんなところに・・・」
その水が流れて城壁の下の堀に入っていく。
「なっ、堀までできている?どうして!」と驚きクロードに聞いている。
「さぁそれは知らない。」とそっけなく答える。
「クロード達がやったんじゃないの?」と私は聞いた。
「違う、少なくとも昨日はなかった。」とわけがわからないことを行ってくる。
そもそも城壁の堀を作ろうとするとモンスターが現れて邪魔をする。
そんなことを繰り返して諦めていたのだ。
それができているなぜ!と驚く。
「ああー、問題と言うか、大事なことはそこじゃねぇ。」
「?」
「あー見る場所が違う。あっちだ。」と言って、指を指す。
私が指の指す場所を追っていくと、そこには銅像があった。
思わず声を上げそうになって、口に手を当てて目から涙が溢れ出ている。
「えっぐ。お父様、お母様。」とボロ泣きする。
ナルミが見ているのは両親とイーツの銅像だった。
「死んでも見守っているって事なんだろう。」とクロードは言ってきた。
「ええ、ええ。まったくお母様も、お父様も・・・」と泣き崩れる。
「ああ、まったくだな。」とクロードはイーツの銅像を見ていた。
「あと、よく見てみろ。小さいが・・・ミキシア様の抱いているものを!」と力強く言ってきた。
「あれは赤ちゃん?私ってこと?」
心なしかお父様とお母様が若いように見える。
きっとあれは昔の姿で、そのころ私が授かったから・・・
「お父様、お母様、隠れてこんなものを作っていたなんて・・・」と私の涙は止まらなかった。
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