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疫病神と呼ばれてますが、バレないように影で活躍中!!  作者: 矢斗刃
第二章 ユーグ男爵領vs大野盗団
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ナルミの涙

ナルミ視点


「?」と言う顔をした。


正直、外に出るのは恐い。今でもすぐに部屋に閉じこもっていたいくらいだ。

お父様やお母様がいない世界なんて・・・と思っているのは仕方ないことだと思う。


私は天涯孤独になったのだ。


そんな私を変えることが出来たのはクロードへの思いだった。

両親もそれを応援してくれていた。

いつもいつも、クロードからのプロポーズはされたのかしらというお母様。

クロードはいい男だ。と頷いているお父様。


そんな両親が私を逃がすために囮になり、私を連れて逃げたクロードを憎く思ってしまった。どうしてあの時一緒に死なせてくれなかったのだろうか・・・


私は引きこもった。

両親の事もそうだが、クロードを見ていたら殺してしまいそうな気がしたからだ。


食事も食べなかった。そうしたら死んでしまえると思ったからだ。

それでも空腹には勝てなかった。


クロードが来ても返事はしなかった。

震える手でナイフを持っていた。


しかし、ある日からクロードが来なくなった。

何日も、何日も・・・

私は食事を運んでくるメイドに話しかけた。

そうしたら、クロードは大切な仲間たちを失ったそうだ。


クロードは私と同じ思いをしていると思ったら、自分の苦しさが和らいだ気がした。


ここから出てクロードに会おうと、何度もドアノブに手を伸ばした。

けれど私に掛けられた恐怖は再び襲い来る。

お父様やお母様がいない。

私はどう生きたらいいかわからない。


クロード助けて!といつしか思うようになった。


しかしクロードは来てくれない。

メイドに聞いたところクロードは酒に逃げ、暴力を振るう様になり、この屋敷から追い出されてしまったそうだ。


ああ、もう私はこの部屋から出られないんだ。と思ったら、この部屋が牢獄のように見えて来た。


部屋は真っ暗で、また再び私はご飯を食べなくなった。


そんな時、もう少しだよ。もう少しだから待っていてと両親の声が聞こえたような気がした。そんなことあるはずないのに・・・


その二日後だった。急にクロードが部屋のドアの前で話しかけてきたのだ。


私は嬉しさ半分、戸惑い半分だったと思う。


「お嬢様、クロードです。」


クロードが来てくれた私を助けに!と思った。


「クロード!」私は叫んだ。


「お嬢様、お願いがあります。私と一緒に見てもらいたいものがあるのです。」


私は戸惑った。そして怯えだす。外が恐い。お父様、お母様がいない世界が・・・


「ごめんなさいクロード。私はここから出られないの。」


「お嬢様、私クロードが護ってみせます。どうか一歩、歩き出してくれませんか?」


私はそんなクロードの言葉を嬉しく感じた。

心強く。私は一人じゃなかったって思い出した。だけど・・・私は鍵を空ける。


「お嬢様。」と言う声が聞こえた。


「ごめんなさいクロード、私ドアを開けるのが恐いのお父様やお母様がいない世界が恐いの。」と涙ながらに訴えた。今まで流れなかったものが溢れてくる。


「俺も親父を失って、その大事なものに今まで護られて来たんだって思った。」とクロードが話し出した。私もわかる気がした。両親に護られて生きてきたんだって。


「そして親父が親父の剣が、今度はお前が護れと言っているような気がするんだ!」


私は無言で聞いている。聞かなきゃいけない言葉を・・・


「だからどうか、俺に・・・ナルミお嬢様を護らせてくれないだろうか。頼む。護らせてほしいんだ。」とクロードの決意が聞こえた。


「頼む、お願いだ!」

私は嬉しかった。クロードにこんなにも思われていたんだって・・・


どうするか私はドアノブに手をかけるか、かけないか決めかねていた。


そんな私の前にお父様とお母様が現れてドアノブを握っていた。


「お母様、お父様!」と私は泣いた。その幻は消えてしまったけど、どれだけ泣いたのかわからない。


「ええ、私も歩き出してみます。」とドアノブに手を伸ばして向こう側に、そしてドアをゆっくり開いた。


「痛。」と言う声が聞こえる。どうやらクロードの頭に当たってしまったようだ。


「ごめんなさい、大丈夫?」と声をかけた。そうしたらクロードに思わず抱きしめられていた。私も抱きしめ返す。


「ただいま。」と聞こえるか聞こえないかの声で私は言った。

「おかえり。」とクロードも返した。


私たちはギュッと力を込めて抱き合った。


「ただいま。」とクロードが言った。しばらく会っていなかったからだろう。

「おかえり。」と私が返した。


どれだけ抱き合っていたのだろう。


「ごほん!」と言う声が聞こえた。


私たちはは離れた。もう少し抱き合っていたかったのに・・・


そんなことを思っていると、クロードとセルスが話し合っていた。

どうやら話が終わったようで、セルスがここから離れていく。


「何かあったのですか?」と私が聞いた。


私はいきなりお姫様抱っこをされた。


「えっえっ?」と戸惑う。

「ふふ、ちょっと連れていきたい場所があるんだ。」

「あのそこに一体何があるのですか?」


「ああ、それは行ってからのお楽しみだ。」と笑顔でウィンクしてきた。




私は街中をお姫様抱っこされながら歩いていた。


「ちょっと恥ずかしいわよ。」と抗議の声を上げる。

「おおう、そうか?」とあまり気にしていないクロード。


「むむ。昔からそう言うところあったけど。はぁー。」とデリカシーのなさに溜息を付く。

あの部屋から出たの失敗だったかしら・・・と頭を抱えた。


それから私たちは街の北側に向け歩き出していく。


「・・・」

「・・・」話したいことがいっぱいあるはずなのに・・・言葉が出て来ない。


「ごめんな。」と謝ってくるクロード。

「何が?」と思わず聞いてしまった。


「俺が強ければ、お嬢様の両親を救えたかもしれない。」私は返答に困った。


「強くなりたい。だから俺は西方5剣になると決めた。」とクロードは決意を述べる。


「バカ、無茶だけはしないで、私をもう一人にしないで・・・」と顔をクロードの胸に埋めた。


「ああ。」と返事をしたクロード。


私たちは階段を登っていく。

そこから城壁を歩いていく。


「ここだ。よく見ろよ。」私は下ろされ。クロードは肩を抱いて来る。

まず初めに目に入ったのは上空まで上がる水しぶき。

そこから、湯気が出ているようだった。


「あれは?」

「うーん、たぶんお湯だと思う。」


「お湯?まさか温泉の水?なんでこんなところに・・・」

その水が流れて城壁の下の堀に入っていく。

「なっ、堀までできている?どうして!」と驚きクロードに聞いている。


「さぁそれは知らない。」とそっけなく答える。


「クロード達がやったんじゃないの?」と私は聞いた。

「違う、少なくとも昨日はなかった。」とわけがわからないことを行ってくる。


そもそも城壁の堀を作ろうとするとモンスターが現れて邪魔をする。

そんなことを繰り返して諦めていたのだ。


それができているなぜ!と驚く。



「ああー、問題と言うか、大事なことはそこじゃねぇ。」


「?」


「あー見る場所が違う。あっちだ。」と言って、指を指す。

私が指の指す場所を追っていくと、そこには銅像があった。


思わず声を上げそうになって、口に手を当てて目から涙が溢れ出ている。

「えっぐ。お父様、お母様。」とボロ泣きする。


ナルミが見ているのは両親とイーツの銅像だった。


「死んでも見守っているって事なんだろう。」とクロードは言ってきた。


「ええ、ええ。まったくお母様も、お父様も・・・」と泣き崩れる。


「ああ、まったくだな。」とクロードはイーツの銅像を見ていた。


「あと、よく見てみろ。小さいが・・・ミキシア様の抱いているものを!」と力強く言ってきた。


「あれは赤ちゃん?私ってこと?」

心なしかお父様とお母様が若いように見える。

きっとあれは昔の姿で、そのころ私が授かったから・・・


「お父様、お母様、隠れてこんなものを作っていたなんて・・・」と私の涙は止まらなかった。

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