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疫病神と呼ばれてますが、バレないように影で活躍中!!  作者: 矢斗刃
第二章 ユーグ男爵領vs大野盗団
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クロードの説得

時間は少し遡る。


テトはバンが機動停止状態になった後。

バンを獣人と魔族の女の子達に任せ。

トッテ達に訓練と称した土人形を召喚してけしかけていた。


それはもう何度も何度もである。

トッテ達を鑑定して、見る見るうちにレベルがアップしていくのは嬉しいことだった。


「こういうのやって見たかったんだよね!」と思わず独り言を言ったのは仕方ない事だと思う。


さてとバンが掘り当てた温水は見る見るうちに溜まっていく。

確か、バン達が堀を作っていたから、それに流し込む道を作ってと、流れていく。


「とりあえず、ひと段落。もういっちょ土人形達を召喚。」トッテ達にけしかけた。


見ればイーツも同じことをクロードにしているみたいだ。


真似させてもらってますと親指を立てている。

向こうのが強いのだしてて容赦ないな。とか思っている。


「テト様!」と声をかけてきたのはミキシアだった。


「なんだ?」


「ちょっとこれ運ぶの手伝ってくれませんか?」とそこには土のシートで覆われた、なにかがあった。


「これなんだよ!」と思わずツッコム!なんか嫌な予感がするんだよね!


「これはですね!」

「うん。」


「あとでのお楽しみです。」と言われたので俺はこけた。


「ふふふ。」と嬉しそうにしている。

「はーまぁいっか。で、これをどうするんだ?」

「それは街の近くまで運びます。手伝ってくれますよね!」


そう笑顔で言われたら、男性は誰だって断れないだろう。

「はいはい。」と言って二人で押し始める。


意外に重いかもしれない。

ズルズル運びながら土人形を召喚!


城壁に近づいた所で・・・


「この辺でいいかしら。」とミキシアが言った。

俺はその言葉に止まった。

「はー。」と一息つく。

土のシートで覆われたものが姿を現す。



そうそれは、人であるバン、ミキシア、イーツの像だった。

「どう、力作よ!」と言ってドヤ顔する。

俺はその銅像を見て出来は素晴らしいものがあるかもしれない。

細部まで表現され、皆に慕われてもいいかもしれない。

町のシンボルになるかもしれない。


「で、これはなに?」と指を指したところに、ミキシアの腕の中で抱かれている赤ん坊がいる。


「それはね!テト様よ!」


「あっ!」と口が開いていた。


「これから私たちと野盗団の壊滅をする。その偉業を称えてここに作ったのよ!」


「あーあ。」と頭を抱えた。


それはミキシアの行動に呆れたのか、プレッシャーをかけられたことなのか、色々混ざりあっていたと思う。


俺はそんなミキシアを放置してイーツのところに向かった。

再び土人形を出して、段々と倒すスピードが早くなっているなと感じていた。

そうして後のことはイーツとツクモに任せ、俺はおねむタイムに入った。



クロード視点


俺は目の前の宿敵を睨みながら、周りの土人形を倒していた。

「この間の借りを返させてもらう。」と、剣を持つ手に力を込めた。

何度も何度も、倒したがキリがない。


しかしその都度、力が溢れていくのがわかる。強くなっていくのがわかる。

俺はこのことに笑みを浮かべる。


「お前を倒すときは案外に早いかもしれないな。」と剣をそいつに向けていた。


しかし、そんな俺の視界に何か映る。

「そんなどうしてこんなところに?」とその銅像を見ていた。


相手の人型も、なんだか戸惑っているようで、この事態がイレギュラーであることがわかった。


「すまないトッテ、いや兄、やることが出来た。ここはお願いしていいか?」と普段と違う様子に、トッテはこう返す。


「なんだか知らないが、行ってこい、お前がそう言うってことは、やることができたんだろう。」と返してきた。


「ふっ死ぬなよ!」

「ああ。」とそんな風に返してきた。


クロードがこの戦線から離脱した。


「ちょっと友よ、俺も逃げたいよー。」と言うウッテの声が聞こえたが、気のせいだ。



俺は急ぎ足にまだお湯が溜まり切っていない堀を走り抜け、とある場所に向かっていた。

城門を走り抜け。街の中を走っていく。


そこは領主邸だった。

領主邸の前には二人の見張りがおり、俺を通せんぼしてくる。


「お前はクロード。」と言って槍をこちらに向けてきた。

「どいてくれ!俺はナルミ様に用事があるんだ。」とその剣をこちらに向けてきた。


三人がにらみ合う。


「どうしましたか?」と執事長のセルスが言ってきた。

セルスはクロードの姿を見たら睨んできた。

「セルス入れてくれ、ナルミ様に見せたいものがあるんだ!」と必死になって訴えた!


「貴方は、ここから追放されたのです。もう二度と来てほしくないのですが・・・」と強めに言ってくる。

しかし俺は引き下がらなかった。


「はー。」と溜息を吐く。

「わかってくれたか?」と聞くクロード。


セルスは二人の兵に、槍を構えさせるのをやめさせる。


「ならば、貴方には誓いを立ててもらいましょう。」と言葉を発してくる。


「それはなんだ。」と喉がゴクッとなった。


「お酒を一生断つと決めたならば、ここから通してあげますよ!その決意が出来ない間はここを通すわけには行きません。私の命に変えましてもね!」と鬼の形相で言う。


「そ、それは。」と俺は後ずさる。

酒は俺にとって親父との絆。

断たれるわけにはいかない。


俺は考える。考える。考える。

「うーん。が、我慢する。」とめちゃくちゃ嫌そうな顔で答えた。


「話しになりませんなぁ。」とセルスの顔が恐くて近い。

後ろを向き去って行こうとする。


「頼む、この通りだ!」と俺はセルスに土下座した。

生まれてこの方、土下座なんかしたことのない俺が頭を下げた。


驚いているセルス。

二人の兵士も驚いていた。


「そこまでの覚悟なのですね。いいでしょう。」と答える。

「本当か?」とクロード。


「ただし、領主邸での飲酒は禁止、外で飲んできた場合は外に泊まること、あと迷惑をかけた相手全員に謝ることです。」


「わかった。」と頷いた。

セルスにはこの時、領主邸にいたころのクロードが帰ってきた事をような気がした。


「しかしセルス様!」と抗議してくる兵士達。

「責任はすべて私が取ります。」と答えを返した。

「わかりました。」


「では行きますよクロード様。」

「ああ。」と俺は立ち上がる。


そこは久しぶりの男爵邸だった。

「何も一緒に来なくても・・・」と抗議する。

「前科があるのです。当たり前の事ですよ。」と睨まれた。


「なにか変わったことはあったか?」と俺は聞いた。

「なにも・・・ただ、部屋からは出られませんでしたが、ナルミお嬢様が御心配されていましたよ。」


「苦労を掛けたな。」

「そう思うならこれから取り返してください。」

そこからの会話はなかった。俺たちはナルミお嬢様の部屋まで歩いていた。



「お嬢様、私です。クロードです。」と呼びかける。セルスは近くで待機していた。

「クロード!」とドアの前に来ているのがわかる。


ナルミお嬢様はどうやら返事をしてくれるまでは回復しているようだった。

「お嬢様、お願いがあります。私と一緒に見てもらいたいものがあるのです。」


「ごめんなさいクロード。私はここから出られないの。」と怯えている声が聞こえる。


「お嬢様、私クロードが護ってみせます。どうか一歩、歩き出してくれませんか?」


お嬢様の反応を待つ。俺とセルスは緊張をしていた。

少しすると鍵の空く音がする。


「お嬢様。」


今まお付きのメイドしか入れて来なかったお嬢様が鍵を開けたのだ。

物凄い進歩かもしれない。


「ごめんなさいクロード、私ドアを開けるのが恐いのお父様やお母様がいない世界が恐いの。」と涙ながらに訴えてきた。

「俺も親父を失って、その大事なものに今まで護られて来たんだって思った。」と親父イーツのことを思い出していた。


「そして親父が親父の剣が、今度はお前が護れと言っているような気がするんだ!」


ドアの向こう側のお嬢様が無言で聞いている。


「だからどうか、俺に・・・ナルミお嬢様を護らせてくれないだろうか。頼む。護らせてほしいんだ。」と決意を込めて言った。


「頼む、お願いだ!」と目を閉じながら頭を下げた。


それからどれだけ経ったのかわからない。

俺は頭を下げ続けた。


そして、ドアがゆっくり開いた。


俺はそれに気づかずまだ頭を下げていた。

そうしてドアが俺の頭に当たるまで下げ続けていた。


「痛。」と大して痛くないのに声を上げてしまったクロード。


「ごめんなさい、大丈夫?」と声をかけてきたお嬢様を、俺は思わず抱きしめていた。


お嬢様も抱きしめ返してくれる。


「ただいま。」と聞こえるか聞こえないかの声でお嬢様が言ってきた。

「おかえり。」と俺も返した。


俺たちはまた力強く抱きしめた。


「ただいま。」と俺がここに帰ってきたことを言うと。

「おかえり。」とお嬢様が返してきた。


どれだけ抱き合っていたのだろうか。


「ごほん!」と言う声が聞こえた。


俺たちは離れた。


「そう言えば、クロード様は急いでここまで来られていたようですが、何かあったのですか?」

「ああ、そうだった。お嬢様と会った感動で忘れるところだった。」と返す。


「セルス、お前には屋敷の全員を、北の城壁の上に連れてくるように言っておいて欲しい。」


「・・・かしこまりました。大丈夫とは思いますが、お嬢様に手を出したら地獄の果てまで追って行きますので!」


「恐いな。わかったよ。」と俺は歩き始めた。


「何かあったのですか?」とあまり食べていないのだろう。頬がこけて身体も痩せている。

俺はそんなお嬢様をお姫様抱っこした。



「えっえっ?」と戸惑うお嬢様。

「ふふ、ちょっと連れていきたい場所があるんだ。」

「あのそこに一体何があるのですか?」


「ああ、それは行ってからのお楽しみだ。」と笑顔でウィンクした。

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