対照的な二人の共通点
「貴方!なにをやったかわかっているの。」と言って、魔法を放ってこようとする。
「まだだ、少し落ち着け!」と俺は声をかけ、その首輪を片手で持ち首に持っていく。
「形状変化。」から、分厚い首輪は細くなっておしゃれな首輪に変わっていく。それを魔族女の首につけてやる。
「お前はこれから貴族の奴隷を名乗ればいい。その首輪はそれで納得されるだろう。」と俺は次にシェリーの所に向かって行く。
「あなた・・・」
「カッコつけすぎですよ。女装の人。」
「お前は妙に聞き分けがいいな。」とシェリーに聞いた。女装の件はスルーだ。
「私は・・・貴方みたいな人に・・・仕えたいと思ってましたから。」と恥ずかしそうに言った。
「はっ?俺の名前はテトだ。覚えておけよ。」と何言っているのだろうか?と思いつつ首輪に手を伸ばした。
「ブレイク。」といい、首輪を壊し、形状変化でさっきの魔族の女と同じような首輪を作っていく。
「ひとまずこれでいいか!」と聞く。
「わぁ、なんか身体が軽くなったような気がします。」と抱きついてきたシェリー。
「それならよかった。さてこれからどうするか。」と考える。
「ねぇ、貴方何者?」
「あ、私も気になります。この間あった時はもっとこう人間ぽかったけどなんか違うような。」抱きついたまま言ってくる。
「ああ、まぁそう言うものだと思っておいてくれよ。」と言葉を交わした。
「ふーん、今は聞かないでおくわ。それと私の名前は・・・ファーと言うのとりあえずよろしく。」と顔を背けながら言ってきた。
「ああ、俺の名前はテトでコイツは。」
「ツクモと言います。よろしくお願いします。」
「?」
「なんにゃ。」と二人とも戦闘態勢に入る。
「ああ、まぁとりあえず。今はスルーしておいてくれ。」
アイテムボックスからさっき財宝の中にあった剣を取り出す。
豪華だが使い辛いな。まぁいいか。
「お前たち武器は?」と俺は聞いた。
「私は魔法、一応剣も使うわ。」と魔族のファーが言ってくる。
「私はたぶん拳です。なんかいけそうな気がする。」とシュシュとシャドーボクシングをやっている。
「うわーー。」と言う声が聞こえだした。
「作戦が開始されたようです。」と答えるツクモ。注目が向こうにそれたってことか。
「ここから脱出するぞ。」と答える。
「よろしいのですか?」と聞いてきた。
「おい。」とさっきの剣をファーに投げた。
「ちょ、ちょっと。」慌てて受け取っている。
俺は新しい剣をアイテムボックスから取り出した。一、二度振る。
「まぁこんなものか。」と納得する。抗議したそうにこちらを見ていたファー。
「この二人のお荷物を抱えて、食糧庫に火を放てると思う?」と俺は聞いた。
「無理でしょうね。」
「ちょっと私をお荷物のように言わないで欲しいわ。」
「私もです。たとえ地獄に行こうともお供致します。」まったく対照的な二人である。
「ふむこれはこれで・・・面白いかもしれない。」
「体のラインのことじゃないんですね。」
「あほか、こちらは一応、赤ん坊なんだ。まだはぇーよ。」と答え返した。
シェリーは細身の獣人の女の子。今でも可愛いのに、たぶん将来美人になるだろう。
対するファーはナイスボディーの女と言ったところか。
「ふむ、確かにそう言われれば・・・」
「やっぱり、男は男と言うことでしょうか?」と真面目に聞いてきてハッとした。
「違う、違うからな。」と全力で抗議した。
俺たちは走り始め、山から降りていく。
「おめぇ侵入者か?」と戦闘態勢に入る。十人くらいの野盗。
騒ぎで起きてきたか?
「どいて、邪魔よ!」とさっき渡した剣で次々と野盗を倒していく。
「どいてください。」と拳で殴り飛ばすシェリー。
「おお、すごい!」とそんな戦いを見ていたのがいけなかった。
「あれ?」と首を傾ける。
「どうしましたかご主人様?」と答えたツクモ。
「俺の獲物がいない。」と辺りの野盗は恐ろしいこの二人によって、成敗されていた。
「俺、別行動で良くない?」
「そうだったかもしれませんね。」と答える。
「このまま、殲滅するわよ!私を捕まえたことを後悔させてやる。」と気合を入れるファー。
「私もなんかあたたまって来たような気がします。」
この二人同類だった!
さっきまで性格違ってたよね!
もしかして、合わせたらいけない二人だったのか!
「テト様、よろしいのですか?」と聞いてきた。
「俺にあの二人を止める力あると思う?」
「シェリーはともかく、ファーは言っても聞かないでしょうね。」
「はいはい、そうだよね。もうなるようになれ!」とヤケクソ気味に二人の後を追った。
その盗賊たちは本隊が来るまで留守番をしているだけだった。
「ふぁー。」と夜明け前に起き出した頭目代理。
「この間の砦は俺たちが男爵を襲撃した最中に、ゴブリンに奪われてしまったが、今回は守り切ったな。」とあとは今日に帰ってくる野盗団本隊に託せば、頭目代理としてはそれでおわり。
「本隊が帰ってきたら、しばらくゆっくりしたいぜ。」と呟いた。
街で酒とか飲みたいぜ!と、野盗生活が長いせいで街が恋しくなっている。
しかしそんな平和な時に終わりの鐘が鳴らされた。
カンカンとなっている。
「む、なんだ?」
「報告!報告!」と駆け寄ってきた男が告げる。
「どうした。何があった!」
「グールの襲撃です。」
「グールだと!」と頭目代理は驚愕した。
「・・・まさかあの時倒した、男爵領の兵士がグール化したのか!」と驚いた。
死体の処理は、汚らしいという理由でしなかったのがいけなかった。と後悔する。
「数はどのくらいだ。」
「数は三十ほどと。」
「それくらいなら、対応できるな。」と楽勝だと思ってました!
そのグールたちは攻撃しても起き上がり、再び牙を向く。
数で押しつぶそうとすると、やたら強い奴がいやがる。
「何やってんだ。囲ってやれ!」と命令する。
さすがに数の暴力で、押し切ろうと命令した。
楽勝だと思って弓じゃなく、剣で戦いに臨んだことに後悔した。
被害は百ほど行ったかもしれない。
わずか三十のグールに!と歯を食いしばる。
また何人かやられた。
「このままじゃ!罰を受けちまうじゃないか!」と叫んで物凄い顔で、歯噛みしている。
「むっ、そういえばおかしい。」
冷静になった頭目代理は、誰も援軍に駆けつけて来ないことに訝しがる。
気付けば鐘の音さえも聞こえてこないではないか。
「まさか・・・他にも敵がいるのか?」
答えにたどり着いた時にはすでに遅かった。
後ろから二人の猛者が近づいてくる。
一人の剣からは血が滴り落ち、柄が血で染まっている。いや、一体化している。
「ま、魔剣!」と思わず呟く。
「ひぃー。」ともう一人の方に向かえば、全身血だらけになっていて敵兵から奪ったのだろう。ガントレットをつけていた。
まさかそれで殴り付けて、やったのか!と恐怖する。
「お前で!」
「最後だ!」
二人にボコボコにされた頭目代理は一番の被害者だったのかもしれない。
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