朧げなおねがい
俺たちは行動を開始した。
バンとミキシア、オオカミたちは領都ユーグに向かっていく。
イーツは子供のオオカミをバンに託し、娘に預けるように言っていた。
そのオオカミの子供も自分の子供のように思っているのかもしれない。
そして俺たちは自分のゴーレムを少し改造した。
いや、オプションを付けたといった方がいいかもしれない。
靴の裏側にローラーをつけてそれを履く、魔力回路を作り、推進力で回すことによって進んでいる。
制御バランス何かはツクモさんが取ってくれている。
俺がやろうとすると盛大にこけるだろう。
イーツの足にもローラーをオプションパーツとして付けた。
もちろん着脱可能な靴型にしている。
俺の方に両手を置き、引っ張る形でこの道を進んでいく。
「イーツが敵のいる所を知っていて良かった。」
「恐らくですよ。罠に掛かったのですから、いないこともありますぜ。」
棍棒を肩に背負いながらいう。
「ツクモ、お前知っててからかったな!」
「ふふ、たまにはいいじゃないですか!」とからかいモードだったのか?
「まったくいい性格してやがるな。」
「テト様、ありがとうございます。」
「褒めてねぇよ!」と落ち着く。
「待ってください。俺たちはここでなくなったんです。」と言ってくるイーツ。
「ブレーキは?」
「あっ!」っと声を上げるツクモ。
「まぁ俺も考えてなかったわ。イーツ離脱。」と言えばイーツ肩から手を放し、減速していく。俺は足元への魔力の供給を断って止まろうとしたが・・・
「うん、止まらないね。」
「そうですね。」
「山中に入る。木を利用してUターンしよう。」
俺たちは山中に入り、大木を利用してUターンを敢行してイーツがいる所まで戻ってきた。
徐々にスピードが落ちてくるのがわかる。
ブレーキを忘れずに!
俺はそこに辿りつくとコックピットを開けた。
「ぷはー。」と新鮮な空気を吸い込む。
「やはり通気性の問題が解決できないな?どうしようか。」と頭を抱えた。
「いっそのこと換気扇を取り入れるか?しかしな。魔力消費が大きくなる。」
空調機能を各種取り入れるか?
前面下部に排気、吸気をうまく混ぜながら交互に行える機能を取り入れる。
「ふーこの調整はツクモに任せた。最悪閉じることも考えておいてくれ。熱風とかに当てられたらヤバいからな!」
「はい、かしこまりました。」ツクモさんが優秀だ。マジ助かる。
イーツはそこに立っていた。
今はいない。部下たちのことを思っているのかもしれない。
俺はそんなイーツにかける言葉が見つからない。
そんな時ガサゴソと現れる者たちがいた。
「うん、あれはグール!」
グールとは死者たちが亡霊になり、モンスターになった姿の一つのはず。
俺、見たことない。
俺はコックピットを閉じ、戦闘態勢に移行する。
「イーツ!」と声をかけた。
それでもイーツは動かない。
「くっ。」と守ろうと動かそうとする。
そいつらはイーツに抱きついた。
「はっ?」と疑問を投げかける。
「おお、お前たち元気だったか?」と声をかけた。
「?」と俺は一歩引いてみていた。
「恐らくですが、同じ死霊として通じるものがあるのでしょう。」
その疑問に答えてくれるツクモ。
「ああ、そうですか。」と頭を抱えた。
「死んだと思っていた人たちがグール化して、コミュニケーションを取れている?」
なんてファンタジーなんだろうか。
しかし、グールの顔が恐いなー。うん無理かもしれない。
コックピットを一応開けた。
少し匂うかもしれない。
まぁグールと仲がいいゴーレムか。
これぞ!ファンタジーだな。顔は恐いが。
何人かこちらを見て多少ビビった。
しかし平和な時間を過ごしている。時刻は夕方ぐらいだろうか?
その光景を見ていて少しコクコクしていたら、イーツが話しかけてきた。
「テト様、こいつ等も連れていきたいんだ。」とイーツ。
「別にいいけど。」とシャキッとした。
やはり子供の身体では限界があるかもしれないな。
我慢をしたけど無理そうだ。
「ふぁあーー。」とあくびをした。
「わかった。とりあえず、そいつらと突撃してくれ。ここからはそいつらと行動を共にしよう。」
「ありがとうございます。」とイーツは答えた。
「うん。ちょっと寝るね。後、頼んだ。何かあったらツクモに・・・グーグー。」と寝だす。
「よしお前たち敵陣に突っ込むぞ!」と号令をかける。
「ぶぉー。」
「どうわー。」
「ぐぁー。」とか各々叫び声が違うのだろう。
歩みは少し遅くなった。
そんな奴らの前にアイツが現れた。
今度はそんなに嵐をまき散らしていない。
なんか下手に出ているドラゴン。紫の色をした奴だ。
「私もついて行こうと。」とイーツ達に声をかける。
イーツ達は未だ戦闘態勢を解いていない。
「貴方は一体何者ですか?」と代表してツクモが聞いた。
「私か、私は厄災の竜。その者の眷属になるもの、いやあたるものか?」
「どういうことでしょうか?」
「私にもわからぬ。されど私の心がその者が主だと言っている。」
ツクモとドラゴンの目線が交差した。
「一度振られてしまったが、再度お願いしにまいった。私を仲間に加えてもらえまいか。」と声をかけてきた。
「・・・私の判断ではつきかねます。現在テト様はお眠りの時間、また後日改めては。」
「むむ、しかし。」
「あまりしつこいと嫌われますよ。」と少々強めに言葉を返す。
「それは困る。また次の機会にしよう。」と去りかける。
そこにもう一言。
「テト様は面倒ごとを嫌います。次は人型で来られることをお勧めします。」と返事した。
「なるほど、参考になった。お主名前は?」
「私はツクモ。テト様の一番の理解者です。」
「私はリント・ル・オロチだ。いずれ一番の理解者になろう。」
そこにいる誰もが二人の火花が散ったように見えただろう。
リントは飛び立った。どこまでも高く、高く。
そして叫んだ。
「次こそは必ず!ぐっぉぉぉ。」と決意するのだった。
ここはどこだ?俺はまた女神様に抱かれていた。
「テト。よく聞きなさい。貴方には別の空間を作ってもらいたい。」と女神が声をかけてくる。
「別の空間?」とおぼろげな返答をする。
俺は魔力をそこに流し込む。
大きな穴が開いたような気がした。
そこに俺の小さな世界を作っていく。
村のような、街のような空間。なんとなく出来たような気がした。
「ふふ、ありがとう。」女神の声が遠ざかっていく。
今回はいやに不鮮明だ。一体何があったのだろうか?
頑張って!あなたが最後の希望だから・・・今いた世界が崩れ落ちた気がした。
「はっ!」と言って目を覚ます。
女神さまがなんか言っていたような気がしたけど・・・
そして俺が起きる頃にはすべてが始まっていた。
俺はゴーレムの中にいる。
そして目の前には檻に入った女の子が二人いた。
「あれ?何がどうなっているの?」と思わず声に出していた。
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