イーツとオオカミたちの戦い
そいつは、ウッテがオークに刺した剣を引き抜いた。
「人型?」と呟くトッテ。
そいつは人形だった。
人に似せたつくりをしている。髪まで生えている。
「敵か!」と警戒を強めるクロード。
俺には過ぎた親父の剣を持ち構える。
その人型は剣を碌に構えることはなく。
ブラブラさせている。
なんだ?まるで達人のような気配がする。
クロードは警戒をしていた。ただ一瞬、瞬きをした。
その瞬間に剣で殴られた。
防具の個所をやられて吹っ飛ばされる。
一体何が?
立ち上がるが、すぐに背を殴られた。
俺は宙に投げ出される。
結構飛ばされたかもしれない。
木々が下に見える。
落ちていく身体の態勢を整え剣を構えなおした。
あいつは棍棒を構えている。
どこから出した?
今はそんなこと気にしていられない。
俺は剣を振り抜いた。
その剣は虚しく空ぶる。
「からの!」かかと落としがそいつの頭に決まる。
その人形は平気な様子だ。
「化け物かよ!」と俺が言った瞬間、意識が暗転した。
イースは最後に超加速を行い。
クロードの腹を棍棒で殴った。
さっきのオークから奪っておいて、良かったと言うべきか・・・
側に置いてあった。剣を拾うイーツ。
それを上段に構えた。もちろん殺す気はない。
クロードの前にトッテが現れる。
「こいつはやらせない!」と剣を構えた。
にらみ合う一人と一体。
ふっ。俺は思わず笑う。
ゴーレムの表情が少し変わったのかもしれない。
「今笑った?」とその微かに変わった表情を、トッテは感じ取った。
剣を下す人型。
くるりと回り、ここから立ち去って行った。
ずっと奴が去った方向を見ていた。
奴が戻ってきたらやられる。
たぶん、きっと、奴は気分で俺たちを見逃したんだ。
舐めた奴だ。気が途中で変わるかもしれない。
トッテは警戒を解かなかった。
タックルをしてくるシズクが現れるまで・・・
「無事ですか!トッテ!」と聞いてくるシズク。なんか近い。
「ああ。」と返事だけして、あの人型が消えていった魔の森の方を眺めるのだった。
「血の匂いがしますね。」とそちらを見ながらシズクが言う。
「わかるのか?」と返す。
「ええ。相当濃いい血の匂いです。これより先は進まない方がいいでしょう。」
その顔には汗が一筋流れていた。
俺はそちらの方を見た。
「一体何が起こっているんだ?」と疑問を口にした。
「思わず戦いに介入してクロードをボコってしまった。」
宿屋で不甲斐ない息子クロードを見ていて、殴って活をを入れてやらなければと思っていたのだ。
「あと、俺の妻を困らせていやがった。殴られても仕方あるまい!」
うんうんと首を上下に動かしている。
段々速くなっている気がするが、気のせいだろうか?
「テト様がなおしてくれた剣を、クロードに渡してしまったな。」困った顔になる。
「まぁやってしまったものは仕方ない。」と独り言ちる。
数々のモンスターを屠りながら、イーツは魔の森の奥地まで足を踏み入れていた。
無数のモンスターの目が・・・イーツを見ている。
「さて、第二ラウンドだ!」と気合を入れた。
そして剣と棍棒とこの体で立ち向かう。
そいつらはオオカミの群れだった。
「悪いが俺の経験値になってもらおう。」
一斉に飛び掛かってくる。
どこもかしこも噛みつかれるが。
中には歯が折れているオオカミもいた。
イーツは高速で回り始めた。
その回転は速く。
噛みついていたオオカミは全員目を回している。
一匹、一匹とオオカミが地面に倒れ伏した。
最後のオオカミも離れ。その回転を止める。
「むっ。」と自分も少しよろける。
そこを隙と判断したのか、今度はリーダーのオオカミが挑んできた。
他のオオカミとは違い巨体。
思わず地面にこけてしまう。
大きな口で顔に噛みついた。
しかしそれでもかみ砕けない。
「歯が刺さっている。それだけでも誇れ!」と言って剣を突き立てた。
「ぎゃー。」と言って離れる。
お互いににらみ合っている。
「ここからどうする?」とオオカミに問う。
オオカミは睨むのを止めて何かに警戒するようなそぶりをする。
「むっ。」イーツも気づいた。
何か大きなものが近づいてくる。
そこに現れたのは大きな熊だった。
「3メートル級か?魔の森らしい。」と思わず呟く。
元の身体なら汗が出ていたかもしれない。
「逃げるか?いや、糧になってもらおう。」と棍棒を投げ捨て剣を構える。
最初に動いたのはオオカミだった。
その大きな熊に飛び掛かる。
まるで何か恨んでいるかのようだ。
「?」と何かを感じ取って首を傾けた。
右腕に噛みつかれた大熊が暴れ出す。
イーツはそんな大熊めがけて左手に剣を振った。
肉の途中まで抉ったが思ったより硬い!
この剣が悪いのか?
あまりいい剣とは言えないか。
一旦距離を取るイーツ。
そこにオオカミが吹っ飛ばされてくる。
そのオオカミは泣いているようだ。
悔しいのだろう。
「ああ、俺と同じなのか?」と部下をやられた俺に似ている。
「少しお前のが、恨みは深そうだがな?肉親でもやられたのか?」
「オオン。」と鳴いた。
「そうか、なら俺が代わりに討ってやるさ!」と剣を構える。
「よく見ていろよ。これが・・・西方5剣の実力だ!」と言葉が通じたのかオオカミはそんなイーツを見ていた。
大熊が立ち上がり、こちらに向かって走ってくる。
イーツは左後方に剣を構える。段々と魔力が剣に集約していく。
大熊が目の前までやって来ていた。
「火炎・一閃。」とその攻撃を放った。
気付けばイーツは大熊を過ぎ去り。そこに立っている。
大熊の腹が焼けている。
持っていた剣が焼け焦げていた。
その柄だけになった剣を投げた。
「しぶといね。」とまだ立ち上がってくる。
今度は棍棒を構える。もう一撃だな・・・いや。
そこに飛び掛かるオオカミたちがいた。
「まぁお前たちの敵討ちだからな。決めてこい!」と思わず拳を突き上げていた。
それが通じているかわからない。
だけど、その気持ちは届いていた気がする。
「ガウ!」と噛みつくリーダーのオオカミ。
もう決して放すもんかと、思いっきり左腕に噛みつく。
暴れまわる大熊。
「ぶぉーー。」とオオカミたちの奮戦で、奴はドスンと言う音と共に倒れた。
「やったか!」と喜ぶ。
「おおんー。」とオオカミたちの声がこの魔の森に響き渡った。
イーツはオオカミたちと喜びを分かち合った。
舐められたり、じゃれつかれたり、仕舞にはオオカミに埋もれていた。
ふむ、どうしてこうなったんだ?
疑問に思ったイーツだった。
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