やる気の起きない時の対応
ぽよん、ぽよんと飛び跳ねている赤黒いスライム。
どうにかこうにかあやされた俺は現実を直視出来ずに、しばらくぼーっとしていた。
ああ、異世界の空だなーと感動と共に、まったくやる気が起きないこの状況。
端の方ではぽよんぽよんと飛び跳ねている赤黒いスライム。
「あう。」と言ってしょぼんとしてしまった。
「もう少しだからな。」と言って俺を気遣うトッテ。
なんてできる勇者なんだろう。
さっきまでぽよんぽよんと俺をからかう様に飛んでいたスライムは、トッテが振り向くころには消えている。
「ああー。」ああ、今日も世界は青いというのに俺の状況は曇暗い。
ぽよんぽよん。父上!父上!と声が聞こえるが気のせいだろう。
最近は火の玉、人魂が話しかけたりして来て、俺は幻聴でも聞こえてくる種族なのかもしれない。
「はぁー。」と溜息をつく。
溜息をつくと幸せが逃げるっていうけど、溜息をつかないとやっていけないんだ!
「はぁー。」と今日も世界はあんなに暗いというのに?暗い?
「ヤバい!ストームが来るぞ!」とトッテが言った。
俺たちは逃げる。最近は逃げてばっかりだ。
「?」なんかこっちを追ってないか?
あれれマジですか?どうして!
土をえぐり、木々を吹っ飛ばしている。
あれに吞まれたら終わりだ。
「ちょっとちょっとマジ洒落にならないっす!」ウッテ君はいい味出しているよ!
「逃げてばかりですね。」とシズクが言う。
「仕方ないだろう!あれは無理だ!」トッテは現実を理解しているようだ。
三人は必死にその嵐に巻き込まれないように逃げ回る。
ウッテがこけた。
それに駆け寄るトッテ。
「くっもうだめか。」と目を閉じた。
何かこう淡い記憶が走馬灯のように駆け巡る。
「ねぇ、大きくなったら私を・・・」そう言う少女の幻影が見えた気がした。
「トッテさん。」と必死に呼びかけるシズク。
俺はなんかシズクさんのキャラが違うなーと思いながら・・・
「ああうー。いあー。」もうやめてくれないかな!と呟いていた。
それはこの世界に来てへとへとだった。
俺の癒しを求める声だったのかもしれない。
その願いが通じたのか嵐は収まって、中からとんでもないものが姿を表す。
「ドラゴン!」だって!と慌てだす。三人は固まる。
戦闘態勢に移るシズクさん。しかし勝てないとわかっているのか、冷や汗が流れている。
「ああう。ああう。」ドラゴンか、なんか気乗りしないんだよね。と思わず呟く。
話しかけられて喜ぶドラゴン。なんかクネクネしている。
「ああうあーい。」また後日、出直してくれと手をしっしっとした。
ぽかんとしているドラゴン。
「ああいうーうー。」今はなんか感動できないんだよね。
見つめてくるドラゴンがしょぼんとして、元来た道を大嵐で去って行った。
再び木や石や土なんかが抉れて去って行く。
赤黒いスライムも飛ばされていく。
なんか八つ当たりしているようだけど、気のせいだよね?
「ほー何だったんだ?」と首を傾けるトッテ。
「こ、腰が抜けた。」と立ち上がれなくなるウッテ。
「・・・情けないですね。」とへたり込むシズク。
「ああう。」あーあやる気でねー。
「あいうーえおー。」二千対十って、降参しようよ。
この間の火の玉との会話を思い出していた。
「とりあえず。少し休もう。」と提案する。
「あーどうしてこんなにトラブル続きなんだ。その子マジで疫病神なんじゃないですか?」
ウッテは心で思っていたことをようやく言ったような気になった。
「・・・」
「・・・」無言でシズクは俺を抱っこしなおす。
「どうしてなんも言わないんですか!絶対なんか持ってますよ!この子!」
ぐるると睨んでくる。思わず睨み返してしまった。
「うっ。」なぜか後ずさるウッテ。
「ウッテ普段の君の行いのツケが、回ってきているのかもしれない。」とトッテは頷く。
「ウッテさん、あなたの悪運の強さは誇っていいかもしれません。」うんうんと頷く。
「ちょっと、ちょっと二人とも俺のせいにしないで欲しいっすよ。」と項垂れる。
俺は親指をウッテに立てた。
「テトも俺を・・・」と項垂れる。
「三対一で可決、本件はウッテさんが悪いということで!」
「異議なし!」
「きゃきゃっ。」となんか調子が出てきた気がするぞ!
赤ちゃんだからもしかして浮き沈みが激しいのか?まさかな?
「ウッテ大丈夫か?」と心配そうに声をかけた。
何とか立ち上がるウッテ。
「あまり激しい運動はできないかも。」と痛さをアピールする。
「まぁ頑張れ。無理そうならお前だけ置いて行こう。」と立ち上がるトッテ。
「そうですね。それがいいかもしれません。意外に不幸は降りかからないかもしれませんので。」二人ともなんかウッテに冷たいな。
「置いてかないでくださいよー。」と痛い身体に鞭打って、歩き出す。
歩くたびにギョッとかギャッとか言って面白いかもしれない。
人を疫病神って言ったお返しに、つんつん出来ればいいのに!
寒気を少し感じたのかもしビクッとなるウッテ。
「ちょっともう少しゆっくり歩いてくださいよ!」と情けない声をあげるウッテだった。
そんなウッテを見てトッテとシズクは一緒に笑った。
「ほらよ肩かしてやるよ。」と男前のトッテが言った。
「ありがとうっす!」と感激している。
「まったくですね。」と俺を背中に背負いなおすシズク。
そういえば最近はシズクの背に背負われることが多いような?
まぁいいか。
「あうあうあー。」ありがとう。
その言葉が届いたかどうかわからなったが、ふふっと少し笑っているように見えた。
「さぁ行きましょう。」とトッテとウッテの後ろを押し出した。
「おい、もう少しゆっくり身体に負担がくるからー!」と抗議の声をあげる。
「ウッテを押してくれれば今日中に領都に着くかもしれないな。」と感心している。
「きゃきゃ。」と俺は何か童心に帰っていたような気がした。
父上、父上、おいてっちゃヤダ!ぷよぷよと追ってくるスライム。
「あうあうあー。」だからお前は何なんだ!?
父上の魔力で生み出された。父上の子供です!ぷよぷよ跳ねている。
「あっ?」はっ?と俺は子供を持ったことないのだが?
せつめいはわたしからはむずかしいのです。
でも父上が父上と言うことはわかります。
「あえ、あーう?」どういうこと?と困惑する俺を、このスライムはつけ回すのだった。
「あうあうああー。」赤ちゃんが父親ってないわー。
まぁウッテのおかげで、俺のやる気は少しは解決したみたいだ・・・
「ぎゃーうー。」と腰の痛みに耐えているウッテ。
遠ざかって言った嵐がまだ遠くに見える。
うん、あれ?
俺そう言えば、ド、ドラゴンに、メンチ切っちゃった!と頭を抱えた。
「ああうー。」やっぱりやる気が下がった。
もうダメかも・・・ガックリ。
俺の魂は抜け出したかもしれない。
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