火の玉たち
はっ!と目覚める俺。
辺りをきょろきょろ見渡す。
どうやら普通に街道に出て来れたようだ。
三人は無事のようだな。
俺は少し離れたところで、シズクと一緒に寝ていたようだ。
そんな俺の近くをさまよう火の玉がある。
俺はもう一度目を擦り。
見るがその火の玉達は消えていない。ふ、増えてる!
俺はもう一度周りを見て、目を閉じ・・・
「おおう目を閉じないでくれまいか!」という声が聞こえた。
俺は再び目を開きその蒼い火の玉を見た。
確かにファンタジーだ。
こういうファンタジーはいやなんだけど!!と少しおびえた。
ちょっとシズクさんの方に抱きつきそうになったのは仕方ないことだと思った。
「あらあら元気な赤ん坊。」もう一人の淡い火の玉が言ってくる。
「良い戦士になるかもしれないな。」と今度は金色に輝く火の玉だ。
俺は意を決して言う。
「あうあー。」なんか様ですか。
うむ、赤ちゃん言葉だから聞こえまい。
次の瞬間、俺の目に文字が躍る。
3体のモンスターをテイムしました。
「あう?」はっ?
「む。」
「お?」
「えーと?」火の3玉連合も、そのことが伝わったらしく驚いている。
「あうあうあーばー。」オーマイガー。と俺は頭を抱えた。
異世界なんだ最初にテイムするモンスターはスライムとか、オオカミとかドラゴンとかもっと、もっとあるだろう。俺の異世界ライフを返せ!
赤ちゃんが両手をブンブン振っていることに困惑気味の3玉。
「あうあうあー。」俺は断固拒否するぞ!
「そう言われましても・・・」
「まぁ!」
「しかたないこととは言え。すまぬな!」
「あう。」むっそこまで言われたら納得しないといけないじゃないか!と未だ納得できないように、片手がブンブン振っている。
「あん?」あれれ俺なんかこいつ等と普通に話してない?
「・・・」
「どうされました?」
「どうしたの?」
「どうされた。」
そうかそう言えば俺も一度死んでいたな!
そう思えばこいつ等と話せるのは理にかなっているのか?
「あう。」ふむ。
そいつら一人一人を見るが、別段敵意を向けられているわけじゃない。
「まぁいいか。」と納得して俺は再び寝ようと。
「ちょっと待ってもらっていいか?」と蒼い火の玉が話しかけている。
「あうあうああー。」なに?現実逃避したいんだけど?
「いや、少しだけお時間いただきたく。」と話しかけてくる。
なんかその火の玉たちから真剣なオーラが漂ってくる。
「あうあー。」まぁ話だけなら聞くか。
「ありがとうございます。」
「ありがとう。」
「すまんな、坊主!」と言ってくる。まぁ悪い人?じゃなさそうだしね。
「あれは私たちが、王都からの帰り道の出来事でした。」と蒼い炎が揺れる。
「いつものように子爵領を抜け男爵領に帰ろうとしました。」
「そしてあの時、私たちを野盗が襲ったのです。」と悲しそうに言った。
「百はいたかもしれない。大人数だった。数で敵わないと悟った私たちは、娘を若い兵に託し最後まで戦いました。」
「私は娘を逃がすために囮として別方向に逃げ、殺されました。」と淡い炎が言った。
「私は最後までその襲ってきた野盗たちと戦い、力尽きてしまいました。」
「あうあー。」そうか。としか言えない。
ご冥福を祈りたいけど・・・こいつ等今ここにいるしな。
「さて私の番ですな。そうしたことがあり、その報告を受けた私は、その若い男と共に敵討ちに向かいました。が、敢え無く返り討ちに遭いました。」
「あうあうーあーう。」それはまた。元気出して!いや何か違うか?と首を傾げた。
「普通なら成仏するのですが、私たちにもどうしても気になる者達がおりまして・・・」蒼い玉の人。
「あの娘が、私たちの死で引きこもってしまったらしく。」と淡い玉の人が困った顔で言う。
「ああ、俺もあーあ、息子が気になってな。」となんとなく照れくさそうに言ってくる黄金の玉。
俺は今、大事なことを考えていた。
幽霊を成仏させるって、ファンタジーなのか?
俺は考えていた。
俺はこの三人に取りつかれることになる。
それはどう考えても、ファンタジーじゃない。
オカルトの領域なのだ。
俺は悩んだ。
しかし選択肢は一択しかないことに気付いてもなお、迷い続けた。
それは明け方になったと思う。
「あうあうあー。あーあ。」わかったお前たちを受け入れよう。と言っていた。
「おおう、よろしくお願いします!」
「よろしくね。」
「頼むぜ!」
三者三様だった。
「あうー。あーあーううい。」と状況をもう少し詳しく聞きたいな。
「はい、我々男爵の兵はこの間の野盗団討伐に失敗。何十人の兵が・・・討たれました。」
「あう。」うん。
「それと共に、裏切者がいたらしく。」悔しそうな顔になる。
「何十人の兵が裏切りました。」
「あう?あう?ああああ。」ちょっとちょっと待って!もしかして!
「そうです我が男爵領の兵力は恐らく今、十人を切っております。」と言い辛そうに言い切った。
「おーあういー!」と悲鳴をあげる赤ちゃん。
「うあーーーーー!ん」うそーーーーーん!
シズクを起こしてしまったみたいだ。
「どうしたの?」と俺に声をかけてくる。
「あうあ。」やばいよー。と言うが聞き入れてもらってないな不思議な顔をしている。
「あうあうあー。」他に報告は?
「野盗の数なのですが・・・恐らく二千はくだらないかもしれません。」と真剣な顔の蒼い玉。
「あっ?」嘘!と思わず聞き返す。
「本当です。二千はいます。」
「あうあうい。」マジ?
「マジです!」
「すみませんが、我々の時間はとりあえずここまでです。また夜にでも・・・」
「またね!」
「頑張れ!」そう言って三人は消えていった。
「あうあうああー。」軽々しく言うな!
「うううええん。」これ詰んだーーーー!
俺は赤ちゃんらしく泣きじゃくった。
俺、本当に疫病神に憑かれてんじゃねーだってあいつ等も幽霊じゃん!
シズクがあやしてくれたが、無理!耐えられそうもなかった。
「うえええええん。」だ、誰か助けて!これハードモードだよ!
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