ボスゴブリンとの対決!
どうするよ!
ここに敵がいるのがわかる。
尋常な数のモンスター達が俺らに気付き始めている。
「走れ、突っ切るぞ!」トッテの叫び声。
「ちょ!冗談じゃないっすよ!」と文句を言うウッテ。
「仕方ないですね!」とシズクさんも同意。
「ウッテ、いやならダンジョンに戻ってもいいんだぜ!」涼しい顔で言う。
「いやだ!うん、頑張れそうな気がする。」
よほどさっきのダンジョンが恐かったのだろう。
「お先に行きます。」と言って飛び出す。
俺はその背で、過ぎ行くゴブリン達に感動していた。
「あうあうあー。」これぞ!ファンタジー!と目を輝かせる俺。
しかしそう思っていたのも。束の間だった。
俺たちは逃げるようにゴブリン村の門の前に来ていたのだが、意外に立派な門だった。
「これは人が作ったのかもしれません。」
「どうしてこんなものを?」トッテ。
「恐らく盗賊とかが廃棄したものを、ゴブリンが再利用したのでしょう。」
「それってヤバいんじゃ。」と青ざめるウッテ。
「ヤバいですね。こんなものの中でゴブリンが増えて行ったら、後々脅威になりますよ。」
「今のままでも十分脅威だよ!」と後ろから矢が飛んでくるのを剣で何とか弾くウッテ。
ウッテ意外にやるのか!と驚愕する俺。
トッテはかんぬきを外した。
「開いた。開けるぞ。」と扉を開け始める。
「これでようやく、一息つける。」
おいおいウッテさんや!それは異世界ではフラグって言うんだよ!
俺がそう思ったのがいけなかったのか、ウッテがそれを言ったのがいけなかったのか。
奴が現れた。それは大きなゴブリンだった。
そんなゴブリンが俺たちに迫ってきている。
おれは、おれは・・・ボスモンスターきたー!と感動で打ち震え。
「あうあうあー。」と思いっきり叫んだのだった。
目がキラキラしていたのは言うまでもない。
「ちょ、この場面で赤ちゃんが喜ぶって!」ウッテは焦っている。
「将来大物になる。」と返すシズク。
「そうだな!走れ!」と命令を下すトッテ。
俺たちはとんずらだ。と思っていたら、意外にも奴のスピードは速いようだ。
「ヤバい、ヤバいっすよ!」と叫ぶ!
このままじゃ!追いつかれる!
「まずいな!」と前方に何かいるのを視認するトッテ。
「まずいですね!」とシズクも確認したみたいだ。
「な、何がまずいんですか!」と恐くて目を閉じながら全力で走っている。
そんなウッテが目を開けるとゴブリンの群れが前方にいた。
何かの獲物を担いでいる。
俺たちに気づいたようで、戦闘態勢を取っていた。
「狩りに行っていたゴブリンが戻ってきたか。」と。
「タイミング的には最悪ですね。」
「だから、山越えなんていやだったんだ!危険手当!危険手当!」と叫び続けるウッテ。
「きゃきゃ!」そんなウッテを面白がる俺。
「あんたは本当に大物になるっすね!」とそんな俺を見て余裕ができたウッテ!
「突っ込むぞ!」と武装しているゴブリンたちに、俺たちは向かっていく。
しかし奴らは意外に組織だって動いているらしく統率が取れている。
矢をつがえるように指示するゴブリン。
その矢が俺たちに飛んできた。
「こ、これは!」と驚愕するトッテ。二十ほどの矢が飛んでくるのだ。
盾はなく。これは当たる!避けられない!
「お前たち。俺の後ろに。」と覚悟を決めたように言う。
その矢を何本かクナイで落とすシズク。
「くっ!もう数が!」とクナイの本数があまりない。
「いや十分だ。」と剣を構える。
「ウィンドスラッシュ!」と横なぎする剣。
矢は落ち跳ね飛ばす。
「まだ走るぞ!」とトッテたちは走り続ける。
ボス戦で逃げる?
残念ながらボスからは逃げられないのだよ!
俺はリッテの背中で奴と対峙していた。
交差する視線、レベルの低い俺には荷が重い相手。
強敵を倒す瞬間はいつだって燃えるものだ!
俺は奴の弱点を、意外に冷静に観察していた。
奴の走り方は大ぶりの走り方で、飛んでスキップをしているかのように見える。
手には大きな棍棒を握っており、それを使って敵を倒すのであろう。
タイミングを計るように俺は魔力を練っていた。
我慢だ!しっかり見極めろ!
奴が足をあげ、着地をする瞬間。
その場所に打ち込むように!
今!カッと目を開き。
「あうあうあー。」アクアバレット。
奴の地面がえぐり取られ水浸しになる。
態勢を崩すボスゴブリン。
まだまだ!
態勢を整えようと踏ん張って立とうとする。
水が絡みつくイメージ。締め付けるイメージ。
生きている水。
「あうあーああー。」ウォーターバインド。拳を握る。
拘束に苦しむボスゴブリン。さらに締め付ける。
血が微かに流れているようだ。
アクアバレット、ウォーターバインドからのコンボ。
「あうあうあー。」ブラッド・エロ―ジョン(血への浸食)俺は拳を突き上げる。
血が流れていた場所から水が浸食を始めた。
奴の身体が膨れる。
水がまだまだ体内に入っていく。
「あうあう。」さらばだボスゴブリンよ。
せめて安らかに眠れ。ぶくぶくと膨れ上がったボスゴブリン。
惜しむらくは、序盤のボスだったということだろうか。
俺は自分の拳を開く。
奴の血管が膨張して爆発した。
お前のことは忘れない。と敬礼ポーズをした後に俺は意識を手放した。
そりゃそうだ。
かなり無理をしたからな。
後はまかせた勇者よ!
トッテを見たがボスが倒れたことに驚いているようだ。
ふっ。と気付かれてないようで何よりだ。
「ぐー、ぐー。」と寝だした。
「一体何が?」と思わず呟く。
「こいつこんな状態で寝てやがる。」とウッテ。
「いきますよ、ゴブリンたちが戸惑っている間に!」とちらりと背中の赤子を気にした。
シズクは二人に指示を出す。
「大盤振る舞いだ。ウィンドスラッシュ!」とトッテは技を連発した。
「私も行きますよ!」とゴブリンから奪った剣を使っている。
「あれ?俺って要りますか?というか逃げるんじゃないんですか!」と戦闘に中々加われないウッテ!
そのゴブリンたちは二人とおまけの活躍により潰走した。
やはりボスが動かなくなったのが動揺を誘い、戦意をそうしたようだ。
ボスゴブリンの所に集まる三人。
「一時はどうなるかと思ったけど、おおう。これはお宝かも。」と大きな棍棒を持ち上げるウッテ。
「・・・」
「・・・」そのボスの死体を見て言葉を亡くす二人。
「一体なにが起こっているんだ!」とトッテは気にする。
「・・・」シズクは背負っている赤ん坊を前で抱きしめる。
まさか?この子が?と訝しんでいる。
私が走っている間、何か大きな衝撃が背中に来た。
今は寝ているその子を見る。
だがトッテの声に、顔をあげた。
「おい、これを見てみろ!」
ゴブリンの血が集まってくる。
そしてそこには見たこともない赤黒いスライムがいた。
そのスライムは大きなゴブリンの身体を咀嚼しているようだ。
「一体何が起きて?」と困惑するシズク。
「このスライムがこのゴブリンを倒したのか?」と疑問を口にするトッテ。
「なるほど、口から変なものを食べてしまってそれが、スライムの核だったと。」
シズクは納得して言った。
魔物がよくやってしまうことだ。
魔物は基本的になんでも食べてしまう。もちろん好き嫌いはある。
しかしそれが自分より強い魔物だったら、魔核だったら・・・
体内の魔力を糧に成長して、新たな生命体としてこの世に生まれることがあるらしい。
私たちはその魔物と関わらないように、慎重にゆっくりとその場を後にした。
「なんで逃げるんですか、剥ぎ取りしましょうよ。」と抗議するウッテ。
「バカ野郎。危機管理ぐらいしろ!」とゲンコツするトッテ。
「痛てぇ。」ウッテだけはいつものウッテだった。
そんな中、赤ん坊のテトを見ていたシズク。
「そんなことはないわよね。」と頷いて俺を背負いなおした。
こうして俺への疑いは晴れていたのだ。
あのスライムがこれからどうなるのか、誰も知らない。いや・・・
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