イーツとクロード
クロード出発の数日前。
「お嬢様。」と心配そうにドアの前で声を掛けるクロード。
今日も部屋に引きこもり、悲しみに暮れている男爵令嬢のナルミ。
一か月前のことだろうか。あの日、父親と母親を野盗団に襲われた。
それを聞いたナルミお嬢様は誰の言葉も聞かず。引きこもられた。
事情が事情なため、領主の暫定的な執務はクロードがとった。
そんなクロードは、今日もこの部屋で報告を行っていた。
誰とも会いたくないのか、布団に包まって隠れている。
「・・・というのが現状で、俺は数日後に野盗団討伐に向かう。」と決意をするクロード。
「必ず仇は討ってくる。だから、待っていてくれナルミ様。」と語りかけて部屋を出ていった。
廊下では皆が皆、挨拶をしてくれるが、屋敷の雰囲気は暗い。
それはそうだ。お嬢様が塞ぎ込み、男爵様とその婦人が亡くなったのだ。
この暗い雰囲気を野盗を討伐することで、払拭しなければ!と改めて決意をする。
今日は久しぶりに親父と呼んで慕っている西方5剣のイーツとの訓練の日だった。
「久しぶりに訓練でなまっているのではないか?」と聞いてくるイーツ。
「試してみればわかりますよ。」と挑発する。
木剣を振って鍔迫り合いをする。
「やるようになったな。」と笑うイーツ。
「まだまだ。」と半刻近く打ち込み、倒れたのはクロードだった。
「まいった。」と言う。やはりまだまだ届かない、そんな大きな目標だった。
「親父、西方5剣はさび付いていないみたいですね。」
「はっ!お前と比べて、毎日訓練だからな。ぐはは、俺に勝つには十年早いわー。ぐははー。」豪快に笑う親父。
「早く超えたい!」と悔しがる。
「ふふ、焦るな。俺もそう呼ばれるチャンスを掴んだだけだ。いつかお前の元にもそのチャンスが転がり込んでくるさ。そのときグッと掴んで放すなよ。」と笑顔で言うその笑顔を俺は思い出していた。
「何が西方5剣だ!こんなこんな!」と後日、遺品となった剣が俺の前に届けられた。
おれは震える手でその剣を取って、抱きかかえた。
「親父、俺はまだあんたを超えてないんだ。」と拳を握りしめる。
後日現場に向かわせた兵から聞いた話では、親父はズタズタにされ、親父とわからなくなるほど血まみれだったそうだ。
「親父ーーーーー。」と俺は叫んだ。泣いた。
「人はあっけなく死んじまう。親父も同僚も・・・皆死んじまった。」と壁を何度も殴る。
「俺は一人ぼっちになっちまった。」と一緒に訓練に明け暮れ、一緒にモンスターを退治して、一緒にご飯も食べた。酒だって飲んだ。
「俺を下戸と言って皆からっていたっじゃないか、どうして皆いなくなるんだ!またからかってくれよ。」と言って、涙を流しながら俺は酒に手を出した。
そして俺は逃げ帰ったあと、酒に溺れるようになった。
どうしようもなくなった現状に逃げるように、お酒を欲した。
仕事をサボり、ただ酒を飲んでいた。
髭もぼうぼうで、髪もぐしゃぐしゃだった。
俺は親父を失ったことに悲しみを癒すように、執事やメイドに暴力を振るう様になり、そしてこの屋敷の雰囲気は最悪の状態になっていた。
執事やメイドは怯えて、俺に近づかない。
辞めるものも出始める始末だった。
そんな時、執事長が俺に文句を言ってきた。
「こんなダメな奴は当家には要りません。ここから出て行ってください!」と何人かの使用人が俺を捕え、男爵領の郊外の家に軟禁した。
俺はそれに抗わなかった。
あの時の盗賊に勝てないことに嘆き、悲しみ。さらに酒に溺れていった。
もぅ、お酒の事以外考えたくなくなっていた。
そうしてどれくらい飲んだだろうか。
部屋は酒瓶で散らかり、酒臭がする。
「いつに間にか酔えなくなっちまった。酔えなくなっちまったよ。」と頭を抱え、再び泣き出す。いっそ死んだ方が楽になる。そう思い剣を抜き。自分の首に持ってくる。
その剣は親父の剣だった。
刃こぼれが沢山あり、死ぬまで戦っていたことがわかる。
「切れなくなるまで、人を切ってたのか。こんな剣じゃ死ねやしねぇじゃないか。」といないはずの親父に文句を言いながら泣いた。
「ああん、死ぬなって言いたいのか?死んでも俺にまだ、説教してくれんのかあんたは。」
剣を見続けながら言う。
「はっ、西方5剣か、悪くねぇな。悪くはねぇ。気が向いたらな。」と俺は久しぶりにこの家を出たのだった。その腰に隊長の剣を差して・・・
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