シスコン・ミルンは愕然とした
私は領都ラーズの城門前まできていた。
城門はなぜか開いていて、瓦礫が辺りに散乱している。
どうやら、城門は壊されているようだ。
私は一旦止まり、息を整える。
赤煉で突っ込んだ!後ろの部隊の奴等も突っ込む。
城門で瓦礫の撤去をしていた兵達は驚き、道を開けていく。
気持ち兵が多い気がするが、ものの数ではない。
それを私は一人で突破した。
「わ、私の平穏無事な門兵スローライフが!!」とか阿鼻叫喚している門兵達。
突破したが、部下は私についてこれない。誰一人。
「あいつ等も辺境の城塞勤務で弛んだか?」と帰ったら訓練もしないとな考える。
朝の街の中を全速力で赤煉を駆けていく。
待っていてくれミーナ、悪漢からこの私が守ってやるからな!
決意を新たに進んでいくミルン。
「うぉぉぉ!」普段はこんな叫び声をあげない。
街の中を歩いている者はまばらで、朝市の準備のために集まっている人たちがいるくらいだ。
私が大声を出すことで道を開ける。邪魔するものなどいない。
そんな中を駆け抜けていく。
途中にも兵がいた。
どうやら瓦礫の下の人たちを掘り起こしているようだ。
そんな奴等が私の前に立つ。
やせ細った何人かの兵だ。敵ではなかった。
赤煉がぶつかれば吹っ飛んでいく。
だが、やる気はあるみたいで、後ろで立ち上がる気配がする。
ほう、中々に骨がある奴等だ。我が隊にスカウトしたい。
見知った執事の驚いている顔もあったが、今はミーナだ。
そして目の前に領主邸が見えてきた。
領主邸の門は焼き崩れ、壊れている。
物凄い攻撃に晒されたのが、わかる。
私は戦慄した。焦る私。
こんな状態で妹は無事なのかと、自問する。
「何をやっているのだ親父殿は!」とブち切れ。
絶対殴ってやる。死んでいても殴ってやる。と決めた。
赤煉で門を駆け抜ける。
屋敷を守る兵達が止めてくるが、ぶちのめした。
「あれは!」そこには師匠が指示をだしていた。
こんな状態になっているんだ今は敵だろう。と剣を向ける。
「ちょ、ちょっと待てミルン。」慌てている師匠。
「問答無用!」私は敵の声を聞かなかった。
馬上から剣を振り、一瞬にして師匠を倒す。思わず叫ぶ。
「見損なったぞ師匠。ミーナに危害を加えようとするとは!」ミルンは暴走していた。
「ご、誤解だ。」と言って倒れる。
赤煉から降りるミルン。
「ふん。剣が鈍ったな師匠。わが敵に組するからだ!ミーナ!ミーナ!」と言って屋敷の玄関のドアをバン!と、開け放つ。
周りにはメイドたちが後片付けをしている。
壁際が凹んでいたり、地面が焼けている。
倒れている兵がいて、そこでまだ休んでいる冒険者もいる。
焼け焦げで包帯でぐるぐる巻きだ。上を見れば人が天井に刺さっている。
凄まじい戦闘の後である。
近くにいるメイドの一人を捕まえ、聞き出す。
「ミーナは、ミーナはどこだ?」と私は必死だった。
「ひぃー。」と怯えていて話にならない。
そこにある男が近づいてくる。父上だった。
「お、ミルン?何でここに?」後ずさる父上。
後ずさると言うことは、やましいことがあるのかと判断。
「父上!」と私は思わず殴っていた。
「ぶべばー。」と言って吹き飛ばされる父上。
「見損なったぞ父上。こんな事になっているとは、ミーナ、ミーナは無事なのか。」と聞きながら殴るミルン。顔が原型をとどめていない。次は腹を殴り付ける。
「ミルン様、ミルン様、ミーナ様は自室です。自室におられますから・・・」と勇気を持って止めに入るメイドのリンズ。そして横に立っているキース。
私は一撃をその兵士の腹に入れる。兵士はぶっ倒れた。
このような状態だ敵の可能性もある!
「ミーナ、ミーナは無事なんだな。」とメイドのリンズを揺らしながら聞く。
「は、はい。」とさっき倒した兵を見ながら、何とか返事をしていた。
「おお、良かった。良かった。」と頷いてメイドを放し、ミーナの自室へと急ぎ足で向かっていく。
「キース、キースしっかりしてください。死んじゃダメーー!」と言う声が後ろから聞こえてきたが、今はミーナだ。
「ミーナ、ミーナ。」と連呼しながら、私は屋敷を抜けていく。
途中、天誅と書かれた。看板の前に裸にされた男達がいたが、無視だ。
私はミーナの自室前まで来ていた。
二人の兵が前で守っている。
見た顔だ。確かトッテだったか?と思いながら、一発ぶん殴る。
しかし私の攻撃を辛うじて避けた。
「何でここにミルン様が・・・」と呟く。
「お前たちがミーナを監禁しているからだ。」
「はっ?」と言う顔をした腹に拳をぶち込む。二発目で沈んだ。
もう一人の剣を構えた男にも腹パンを決めた。崩れ落ちる。
しかし、その手で、私のズボンの裾を掴んでいる。
ここから先は進ませないぞと言っているようだ。
「ほう、敵ながらあっぱれ、あれ敵だったか?」と考えた。
「まぁ、今はミーナだ。」と裾を掴んだ男を蹴とばしはがす。
私はゆっくりと息を整えてドアを開けた。
朝焼けの光が窓から差し込む。
何か神秘的でもあり、後ろを向いているミーナ(天使、ミルン視点)がいる。
ほー無事だったかと安心する私。
「ミーナ。」と声をかけた。
ゆっくりとスローモーションのように、私に振り向くミーナ。
今日もその横顔は天使だと思った。
「ミルン姉さま。」と驚いているミーナ。
見つかったら、まずいものが見つかった様な顔をしている。
そしてそこにはミーナに抱かれた赤ん坊がいた。
赤ん坊がにへらっと、悪魔のような顔で私を見てくる。
「はっ?」と私が愕然としたのは言うまでもない。
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