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シスコン・ミルン 対 護衛隊長ヤン

冒険者はゴース麾下の兵達に攻撃を仕掛けていた。

このままなら勝てる。と皆が皆思っていたことだろう。

しかしゴースの姿が見当たらない。

「逃がしたか?」とある冒険者が呟く。


だがその時、馬の足音が聞こえた。


「なんだ。」と顔をあげた瞬間、目の前に赤い馬に跨った女がいる。と理解した瞬間。

冒険者の俺は宙に浮いていたのはわかった。

それからの意識が途絶える。

そこにあったのは屍達だった。いや殺してはいない。


「後続部隊に先ほど倒した奴等を捕まえろ。と命令しておけ。」私は赤煉を駆りながらマイクに指示を出す。

「はっ。」と答え私の側から離れていく。


あんな数、私の敵ではなかった。一人ですべて打ち倒し私は駆け続ける。

心の中は妹の事でいっぱいだ。


むしろ私が後見して、妹を辺境伯にしてもいいくらいだ!

と、妹に任せた辺境が見る見る王国に変わっていく姿を想像出来てしまう。

私は私が怖いくらいだ。

「妹浸りしている所、悪いんですけど前に何か見えますよ。」と言って指摘してくるヨン。


「もちろん蹴散らす。私とミーナとの感動の再開を邪魔する奴は敵だ。」と言って赤煉の速さをあげたミルン。

「邪魔だ!どけ!」と声を出して威嚇した。

その兵たちは意外に統率が取れているらしい。

私たちが通る道を開けていく。


「赤煉のミルンがなんでここに!」とか言っている。声が聞こえたが、そんなものに構っている暇など私にはない。



夜明けが近づいていた。

冒険者がゴースの部隊に追いつき交戦中であることが判明。

しかしそこにゴースはいない。

もちろんスパイらしい男の姿も見当たらなかったらしい。


「くっそ!どこだ?どこに行った?!」と頭の中でこの辺の地図を思い浮かべる。

「もし逃げたのなら、この先の森の中から出てくる。ならここで待ち構えれば来るはずなのに来ない。」と言って爪を噛む。


「ああ、ゴースはどうでもいいがスパイは捕まえたいのに!」と思わず一人ごちる。

馬の上で考えているが、逃げられたのかもしれない。と帝国方面に向かい出そうかと、馬を引こうとして、微かに振動音が聞こえる。


「な、なんだ?」とヤンは身構えた。

「どうしました。父上。」と聞いてくる部下。決して父上とかではない。

目を細める。少し遠くになにか見える。

夜明け前で良く見えないが、砂塵があがっている。


「お前たち戦闘態勢!何か来る!」と言って、兵の皆が身構える。


それは一瞬にして目の前まで迫ってくる。


「分断!後ろに回る!」とそれだけしか言えなかっただろう。


赤い馬が走ってくる。

それを躱す。兵もわかっているのか躱した。


「赤煉のミルンが何でここに!」馬を操り、走り抜けていく兵の邪魔をするな。と命令することしかヤンには出来なかった。


「とりあえず後ろについて追うぞ。何人かはここで捜索の・・・。」と言おうとして近づいてくる奴がいる。


「守銭奴か?」とヤンは聞いた。

「ふふ、娘の気配はわかるんですね?」と答える。

「で、何の用だ。金はない。」と俺は答える。

「失礼な!いつもお金で動いているわけじゃないですよ!」と両手で頂戴のポーズをしながら言ってきている。説得力はない。


「はっ、でなにがあった?」と短刀直入に聞く。

あの将軍を追わないといけないんだ。時間がない。焦っている。


「うーん、どうしよっかな?」と頭の中で計算する。


あ、っと何か採算があったのか閃いたのか手をポンとした。


「教えるから、後で、弁護してね!」と俺の馬の後ろに乗る。


「うん。」とこの瞬間。

通り抜けた馬の後ろにゴースが引きずられている。


「あー追うぞ。」と馬で走り出す。部下たちがついてくる。


「娘さん可愛いですね。」

「護衛長代理から、どうしてこんないい娘さんが・・・」

「娘さんとかウソに違いない!ヤンが結婚していたとか嘘に違いない!」とか好きかって言いながら後ろからついてくる部下達。


娘のシズクは満更でないようで顔を赤らめている。いやあれは演技だ。

たぶん気付いたら彼奴らの財布はなくなっているだろう。

可愛そうに・・・いや、全然可愛そくないな。

うん、彼奴らにとっていい薬になるだろう。

顔に騙されてはいけないと。だから俺はこの波に乗ることにした。



「ああん、負け惜しみか?」と勝ち誇ったように言うヤン。


しかしそれにめげずに言う。

「「「お父さん、娘さんをください!」」」

「やだ!」と後ろを振り向きながら答えるヤン。


「で、何か用だったのか?」と聞く。

「弁護してね!」と抱きついて耳元で声をかけてくる娘のシズク。


「ああん、なんかやらかしたのか?いつもの事じゃないか?」と疑問に思った。


目をそらすシズク。

「お父さん、世の中聞いちゃダメな事があるんだ。だからね。お父さんのせいにするだけでいいからね?」といつもと違って甘えてくる。

「お、お前・・・どんなヤバいことやらかしたんだよ!」と頭を抱えるヤン。


「わ、わかった。一緒に謝ってやるからそれで手を打て!」とヤンは言った。

「はい、言質取りました。これで死なずに済む。お母さん、真犯人はお父さん。」とうれし泣きをする娘。

「お、俺、死なないよな?」と娘に聞く。

「さぁ。」と笑顔で言う娘。


「で、話せ。」

「うーん、二つあるけどどっちが聞きたい?」後ろを見ないとわからないが、ほっぺに右人差し指を当てながら聞く。


「二つとも話せ!」とヤンは言った。


「えーお金もらえないのに・・・一つだけでも大赤字なのに!」と抗議してくる娘、たぶん頬を膨らませている。

「なら一緒に謝ってやるのはなしかな?」と脅す。

「えーそれとこれとは別だよ!」と背中を叩かれた。


「ごっほ!」と咳き込む。

「お前、殺されるくらいヤバい案件なんだろう?それに彼奴らから財布は取っていい!」と親指を立てグッとサインをしてくる。


「うんーま、いっか?お父さんは百面相って聞いたことある?」

「それはまぁ。まさかお前!」驚く俺。

確か王国の暗部の連中の半数を戦闘不能にした奴だ。

相当ヤバい。あの将軍並かもしれない。

いや、いつの間にか戦闘が終わっていると考えると・・・それ以上かもしれない。


「そうさっき会ってね。遠目だったけど、あれはヤバいね!マジで!もう会いたくない!」と心なしか抱きついてくる力が強い!


「くっ!なんて羨ましいんだ!」

「ズルだ!」

「うそだ。神は死んだ!」とか言っている声が聞こえる。


「「「お父さん。」」」もう彼奴らは無視だ。


しばらくそうして馬で駆ける。前の将軍たちは速いな。もう見えなくなっていやがる。

「さすがにヤバくて逃げてきたよ。お母さんも彼奴に遭ったら逃げな。って言ってたからね。」

「そうか。」としか言えない。


「だからスパイ逃げちゃった。辺境伯家の情報駄々洩れだね。」と背中に顔を押し付けて言ってくる。

任務に失敗して落ち込んでいるのだろう。


「そうだな。仕方ない。」むしろ百面相がいて、その程度で済んで良かったと思うべきだ。

「で、もう一個の情報は?」と切り替えるように言う。


「ああ、将軍様はね。シスコンなんだ。」

「はっ?」と言って思わず馬を止めてしまう。


「どうしたんですかお父さん?」


「将軍がシスコン?だから何だ?」ヤンはわけがわからなくなる。

しかしここで娘が言ってくるってことは、それはとてつもなく大事な情報なのだろう。

「シスコンだからってなんだ?」とわけがわからないように再び聞く。


「言い方が悪かったですね。ミルン様は重度、過度のシスコンなのです。」楽しそうに言ってくる。


「・・・」

「ミルン貴族子弟襲撃事件と、ミルン将軍王国学園襲撃事件は聞いたことありますよね?」と確認を取る。


「ああ、今じゃ本になってるからな。それに酒場の話のネタだ。たまに旅芸人が面白おかしく、歌や楽器で語っている。有名なことだ。」


「あの二つの事には共通点があるのです。まぁ裏事情ですかね?」

「なんだそれは?」嫌な予感がした。


「妹ミーナ様ですよ。将軍のモットーはすべては妹の妹による妹のための将軍って冗談のように言ってたそうですが・・・あれ本気ですよ!」と真剣な顔で言ってくる。


「まさか・・・おいお前たちの中で誰かミルン将軍のことを知っている奴がいるか?」と聞く、手を何人かあげる。


「ふぅー将軍はシスコンなのか?」とそいつらに聞く。

「まぁミーナ様を溺愛していたな。父上。」

「毎日世話してたぜ!お父さん。」

「妹のためならとか言って剣を握っていたな。パパ!」


ああ、頭を抱える。

最後につけた言葉達は聞かなかったことにしよう。


「魔法を使える奴。いるか?」何人か手をあげる。

「気絶しても構わん、同時に全力で空に魔法を放て!向こうに知らせるだけ知らせないと対処もできまい。」とやれやれだ。


魔法を唱える者達。

決して強力ではないが、狼煙程度にはなるだろう。気付いてくれよ。

クーガーさん。弟子の事なら任せた。


「後は任せた作戦だ!」と呟くヤン。

「他人任せな。」と呟くシズク。


「まぁ、頼れるクーガ―さんがいるからな。合図さえ送れば何とかするだろう。」と呟いて、ゆっくりと馬で歩き出す。


「お前等、疲れるなよ。」と言った時。

もうそこにシズクがいないことに気が付いた。


「あん、もう盗み終わったのか?」と呟いた声に首をかしげる兵達がいる。

そんなことより。

「「「お父さん、娘さんは?」」」と聞いてくる。


こいつら平和ボケしてやがんな。

訓練もう少し厳しくやるかなと心で誓った。

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