赤煉のミルン貴族子弟襲撃事件
私、ミルン・フォン・ラーズは、そう妹に救われたのだ。
父上は私を政略結婚の道具としか見ていなかった。
そして兄の一人はあれだった。傲慢で不遜であまり好ましい人ではない。
母はそんなゴースを溺愛した。
もう一人の年齢の近い兄は真面目だったが、早々に家族から距離を取った。
仕方がない側室の子なのだから・・・
そうして私は家族に絶望していた。
〝だが、私は天使に出会った。〟
そのほっぺはとろけ落ちそうで、可愛い丸い目。手もにぎにぎと柔らかく。足をバタバタとさせている。
笑顔はとっても可愛い。私はそんなミーナを守ろうと決めて剣を握った。
毎日でも抱きに行き、剣を振っては様子を見に行った。
父上とミーナの取り合いをして喧嘩をしたこともあった。
母上に怒られて表面上は笑顔で仲良くいることにした。
母上も私には、もう少しお淑やかになってほしいと思っていたようで、ミーナを抱く代わりに貴族の作法も多少は習ったが、私には性に合っていなかったらしい。
手習いの先生を殴ってしまって、それ以来先生は付かなくなった。
そして二番目の兄リースと剣術勝負で圧勝した。
もう戦わないからな!とか言っていたが何度も戦ってくれた。
意外に良い兄なのかもしれない。
私は増々剣術にのめり込み、隙を見てはミーナをあやし、母に怒られ、父には呆れられた。
そんなある日、一番上の兄のなんだったか、が私にペットになるように言ってきた。
思わず私が切れて殴ってしまったくらいだ。
そしてそんな私をどこかの貴族に売り渡そうとするぐらいだ。
もちろんそんな貴族もぶち殴り、ボコボコにして兄の目の前まで持って行った。
あいつは、ひぃーとか言いながら後ずさっていたな。
その件があって父は私の結婚は諦めたようだ。
本当は教会に入れ、お淑やかに育てるつもりだった。
だが、一応学園には通わせてもらった。
貴族には馴染めず学園では不良と言うものをしていた。
よく学校をサボって冒険者をしていたな。
誰も声を掛けず。
先生さえも怯えていた。
ああ、一人だけ友達もいたか・・・といつも笑顔のお嬢様のことを思い浮かべた。
一応ルームメイトだったからな。
学校に来ないことでプリプリ怒っていた。
そんな友達が今や王国の王妃さま候補とはね。わからないものだ。
そして休みは必ずミーナに会いに行った。
その王都の辺境伯邸では護衛長をしているクーガーに訓練をつけてもらい。
増々強くなっていくのだった。
「ミルンお嬢さま、まだやるんですか?」とクーガー。
ふらふらになって立ち上がるミルン。
「まだまだ!」と気合を入れなおす。
躱しきれず痣や、擦り傷を作っている。
真剣な顔をしているが、しかし楽しそうに剣を振るっている。
わずかな変化が長年対決してきたことでわかっている。
もしかしたらミルンお嬢様は狂戦士バーサーカーなのかもしれない。
将来この子は化ける。その才能に嫉妬したくなる。
「行きますぞ!」もう一段階、私はギア(戦闘力)をあげて、お嬢様をボコボコにした。
私が思い通りにならないと悟った兄は、今度はミーナに目を向けていた。
私にやったようなことをミーナにしようとしていたのだ。
そう、あの時を境に父の考えが変わったのだ。
それは王都で行われた妹ミーナの10歳の誕生日会だった。
私が一瞬目を離した隙だった。
誕生日会と慣れない貴族の挨拶に疲れたミーナは、一休みするために離席したのだ。
その一瞬で、手を引っ張られたのだろう。
「お前もすでに成人だ。」と言うダスト。
屋敷の庭には高位貴族の子息たちがいた。
「一体、何をするのです。」と怯えたように声を出すミーナ。
「へへへ。」
「ははは。」と笑い声を上げる男達。
心なしか段々と男達が近づいてきている。
そして複数の手が伸びてきた。
「いやいや。」と声を出して、ミーナは思わず目を閉じた。
「やめろ、嫌がっているじゃないか。」とミーナの前に出る男の子。
私はミーナが居なくなったことに気付いて探していた。
しかしそこで壁にすがり倒れて、震えているメイドがいた。
それはミーナについていたメイドだった。
何かの毒でも飲まされたのか?顔が青い。
私はそのメイドに声をかける。
「おい、何があった?」と私は聞く。
「お、嬢様がダスト、連れて・・・」と言って気を失う。
ゆっくりそのメイドを横たえた。
「おい、お前このメイドの面倒を見ろ!」オレンジ髪をした男に言う。
男は自分を指さす。
「そうだお前だ!メイドに変なことをしたら殺すからな!」と言って任せて、ミーナを探し出す。
「おら、兵士になったばっかりなのだどんも。」と言ったキース。
メイドの女の子を見る。
「めんこ。っち。どうすっけ。」と顔を赤くする。
「隊長っち探しってっと。どっけいなっけ?」とお姫様抱っこでメイドを運んでいく。
そこで灰色の髪の男を発見した。駆け寄って行く。
「めんこ、っち。くるっち。ばったん。」と言う。
「うん、ああ、ってこのメイド倒れたのか?」と聞く。
「うんだ。うんだ。」と頷いてくる。
「とりあえず医務室に運ぼう。ついてこい。」と案内する。
「あんがとー、あんがとー。」必死になってって言ってくる。
これがトッテとキースの出会い。
今後一緒に組むこと多くなり、その度言葉を直すように、話しかけていったのだ。
「うん。」と目を覚ます。メイド。
「だいじょうっぶだっぺ?めんこっち。」と聞く男が目の前にいる。
「貴方は?ここはお嬢様は?」とメイドが真剣に聞いてくる。
「おら、兵士になったばっかりなのだどんも。」とその方は言ってくる。
「トッテ!」と言う。助けを求めたようだ。
「うん、なんだキース?」と現れる兵士。
士官?その人物はキースと呼ばれた方とは違って、兵士らしかった。
「めんこ、おっきた。おら、わか、わかない。」と声をかけてくる。
「おおうそっか、ええーと。とりあえず何があった。」と私に声をかけて来る。
「貴族の子弟達が、お嬢様を攫って何かするって。」と必死に訴えてくる。
「なるほど、わかった。俺は探しに行く。キースお前はここで彼女の面倒を見ておけ。」とキースの返事を聞かずに、急いでこの場を出ていった。
「トッテいった。」と呟くキース。
「・・・」
「・・・」と沈黙する二人。
「私はどうしてここに?」とキースに聞く。
「・・・めんこ。ひめさんた、たのまった。」
「それで?ゆっくりでいいわ。」と彼を落ち着かせるように言う。
「めんこ、だっこはっこんだ。とっっちゅう、トッテあった!」と明るく笑う。
その笑顔をリンズは一生忘れないだろう。
「私はリンズ。」と自己紹介する。
「リンズ、リンズ、おらキース!」
「キースさん、もっとお話ししましょうね!」とリンズは返していた。
キースはリンズと話すことで、急速にさらに言葉を覚えていくのだった。
私はそれから必死になってミーナを探した。
「やめろ!嫌がっているじゃないか。」とミーナの前で身体を張っている男の子がいる。
「なら、お前が代わりに殴られろ。」と言って男の子が殴られた。
ふらふらしてぶっ倒れた。弱い。軟弱ものだ。もっとしっかり守れ!
ミーナが男の子に寄り添う。ちょっとあとで私も殴ろうかな?
そんなミーナに手を伸ばした愚か者の手を私は握り潰した。
「ギョアー。」と言う声にならない声を出すゴミ屑。
「おい、お前たち、ただで帰れると思っていないだろうな!」と私はブチ切れていたのだと思う。
「ちょっとまてミルン。早まるな!話せばわかる!ぶべっ」と腐った兄が言っている。
ワンパンだった。倒れたところを、ついでにもう一発殴っておく。
その場にいた男たちを一人一人血祭りにあげていく。
折っては砕き、折っては砕きを繰り返す。何を折っているかって?
私にもわからない辛うじてミーナだけは殴ってはいけないと思う。
〝そうそれだけでいい!〟
ひとしきり折っては砕いた。
そうだもう一周だ。と目がカっと開く。
始めに倒した兄だったものを左手で持ち上げ、右の掌に魔力を集めていく。
その背中に抱きついてきた妹がいた。
「もういいです。もういいですから。それ以上やったら死んでしまいます。」と泣きながら抱きついてきた。憑き物が落ちた様に冷静になっていく。
私はその頭をゆっくり撫でた。手には血は一切ついていなかった。
「ありがとう、お姉さま。ありがとう、お姉さま。恐かった。」と泣きながら笑顔のミーナ。
「ミーナ。」と優しい声をかける。
しかし私は私が恐くなった。
この力でいつかミーナを殺してしまうんじゃないかと。
この力のコントロールを学ばなければと思った。
後日、途中であったメイドは無事のようだった。
なぜか近く通りかかった男にお弁当を渡していたが・・・
「仲がいいことはいいことだ。」とその二人を睨んでいた男たちをボコボコにした。
「ミルンの姉御の公認とは!くっ!」と悔しがる声と。
「おおう、幸せになるんだリンズ。」泣いている男達。
「今日は勝たせてもらいます師匠。」と言って二本の剣を師匠のクーガーに向ける。
「こい、まだ早いことを教えてやる。」
その戦いを目で追えるものがいるだろうか?
凄まじい風圧と凄まじい剣戟の音。
「この間の事件で覚醒したか!」と思いっきりのいい攻撃をしてくる師匠。
今まで見えなかった攻撃が見える。
今まで捌けなかった攻撃が捌ける。
いける。私の世界が加速した。いや周りの世界が遅く視える。
師匠の攻撃を搔い潜り、私は師匠の首を二本の剣で挟み込んだ。
「ま、参った。」師匠の剣は私に届いていない。
「ふー。」と私はため息をついた。
「もう少し、師匠でいられると思ったんだがな。」とがっかりしている。
「いえ、これもすべて師匠のおかげです。」と礼を取る。師匠は空を見上げる。
「そうか、行くのか。」何かを感じ取ったのだろう。
「はい。」
「お前なら天下を取れるかもしれない・・・天下無双になってこい!」と私の目を見て言う。
「はい。」と笑顔で返す。
「それとこれは餞別だ。」と剣を渡してくる。
「こ、これは!」鞘から抜けば光輝く。
「ミスリルの剣だ。俺の知り合いに頼んで、作ってもらった。」と何気なく言ってくる。
私は膝をついて両手で剣を掲げるように持った。
師匠からの賜りものなのだ。
「ありがたく。」と礼を取る。
「ふっ、いつかお前の名が世界に轟けば、俺が師匠だって誇れるもんさ。」と本当は悔しそうに言う。
私はそんな師匠が好きだった。
事件の件で私は父に怒られなかった。
父は本当は褒めたかったに違いない。複雑そうな顔をしていた。
父は関わった貴族家を許さなかった。
最低でも廃嫡、もしくは家からの追放を求めたのだ。財産を差し出してきた奴等もいるらしい。
断った貴族には容赦しなかった。
王にお伺いを立てた上で不正の証拠を抑え、容赦なく取りつぶしていった。
王もそこに自分の駒を入れていけるので喜んで協力していた。
そして父に珍しく呼ばれた。
私に渡したいものがあるらしい。
王都にある屋敷の父の書斎で私たちは向かい合っている。
いや、にらみ合っている。
「押収した剣だ。お前が持っていろ。」と私に押し付けてきた。
「これは?」鞘から抜いた剣は、何かが宿っていそうなほど黄色かった。しかも軽い。
「さぁな?魔剣の類らしい。この世の物とは思えない金属で作られているそうだ。」
渡したら話は終わりらしい。さっさと出て行けと手で合図をしてきた。
「ふん、次は私がミーナを助けて見せる。」と言う声が聞こえてきた。
負け惜しみだろう。
なぜか兄は裁かれなかった。
母が取りなしたのかもしれない。
納得出来ない。
このうっぷんは兄をサンドバックにしようと思った。
「ちょちょっと待て!」と言っていたが知らない。
しかし、ワンパンしか耐えられなかった。
サンドバックには使えない。
この事件のせいで私は学園を退学した。もちろん後悔はない。
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ミルンのキャラは結構好きかもしれない。




