キースとリンズと・・・ピンチ!
余白を多めに入れました。読みやすいかな?
キースは屋敷を迂回しながら、警備の兵に見つからないように使用人たちがいる部屋に向かっていた。
途中に三人組とすれ違ったが隠れてやり過ごした。警備の人間か?
どうやら執事とメイドともう一人いるみたいだが、暗くてよくわからない。人影だけが見えていた。
「おっと、リンズの所に向かわなくては・・・」思い出したように向かいだす。
まさかリンズの所に行くためのルートが役に立つとは、何が役に立つのかわかったものではないなと思った。
だから俺をヤンさんが選んだんだろうか?
ゆっくりと使用人達の所に近づいている。確かリンズの所は一階の角だった。
近づいていくと何やら争う音が聞こえた。
「お前、言うことを聞けよ。このグラウス様の相手をすることができるんだ。光栄だろう?」と執事服の男が言っている。
「いやいや、近づかないで。」と短剣を握って相手を威嚇しているリンズ。
「ふふ、いいのか僕はダスト様と仲がいい。僕に逆らったら君と付き合っているなんだっけ?ああゴミさん?だったかな?がどうなるかわかっているよね?」と脅す男。
「くっ。」と逡巡して短剣を下ろすリンズ。
「そうだそれでいい。」と近づいてくる。
「いやいやーーー。」と首を振る。
「へへへ。」と下卑た笑いをする男の後ろから俺は殴りつけた。
「ぐはっ。」と言って倒れ伏した。その男が顔を上げキースを見る。
「なぜお前がここに!」と怒りに満ちた顔になった。
「そ、それは・・・リンズを愛しているからだ。」と言って止めの一撃を見舞った。
「キ、キース。」と泣きながら抱きついてくるリンズ。
「ごめん、遅くなった。大丈夫か?」と心配そうに聞く。
「ええ、ええ大丈夫です。ですが、執事たちが・・・メイドを襲っているみたいです。」
「な、なんだと助けに行かないと、リンズも来てくれるか?」とリンズを放し聞く。
「は、はい!お供します。どこまでも!」と言って少し元気が出てきたようだ。
私たちが一緒になってドアを出るとそこには、メイドたちが武装し捕まっている10人程の執事がいた。
「あら、最後はここだけだったですが、必要ありませんでしたね。」と言って現れるユリさん。
「ユリさん。その恰好は?」と聞くリンズ。
「ふふ、私たちはここにいる〝ゴミ〟たちのおもちゃじゃありません。ああ、あとダストとか言うゴミも排除しないと行けませんね?お嬢様に手を出そうとした愚か者がいましたから、ついつい本気を出してしまいましたよ。ふふふ。」と言って笑う。ちょっと怖い。
「あ、あの頼もしいですね。」とキースは言う。
「そうでしょう、そうでしょう。私たちはこれからメイド全員でダストシュートを決めてきます。天誅ですよ天誅!」メイド達は同意するように頷いている。
「そしてこれが終わったら皆で、この二人の結婚式です。」とユリは言い放つ。
「それはやる気が出ますね!」
「よっしゃあ!結婚式で男ゲット!!」
「おめでとうございます。」とメイドたちは言ってくる。
「え、えーと。」と戸惑うキース。リンズを見れば赤くなって俯いている。
「まさかこの期に及んで逃げるとは言いませんよね。まさか!!他に好きな人がいるのですか?」っとメイドたちが睨んでくる。
リンズも泣きそうになって・・・瞳が潤んでいる。
「わ、私は遊びだったんですか?」とか聞いてくる。ここで断れば、俺もボコボコにされているゴミ達と同じ運命をたどるだろう。もはや逃げ道はない。
「わかったわかりました。これが終わったら、結婚します。結婚しますよ。」俺は今までで一番顔が真っ赤になっていたかもしれない。
「おおう、言い切った男ですね。」
「さすがです。頑張りました。」
「私もあんな風に言われたい。」とか言っているメイドたち。
「ふふ、計画通りです。」なんか不穏な言葉が聞こえたよ。
「あの、わ、私でいいんですか?」とリンズが聞いてくる。
「うん、リンズがいいんだ。いつか言わなきゃって思ってて、でも中々言えなかったから・・・リンズが好きなんだ結婚して欲しい。」たぶん耳まで真っ赤だ。
「は、はい。」と今までで一番の笑顔を見た気がした。
メイド達は微笑ましく二人を見ていた。
「さて皆さん、パーティーの始まりですよ。まずはゴミの片付けから始めましょうか。」ユリの持つ薙刀が不気味に輝いていた。メイドたちも気合が入ったようだ。
そして爆音が響き渡る。
「演出も最高のようですね。」と言って、ユリを先頭に何人かのメイド部隊は、ゆっくりと領主邸のホールへと歩みを進めた。
「ごきげんよう。」と言ってゆっくり歩きながら現れるミーナお嬢様。そのお姿は世に聞く戦乙女のようで神々しかった。
「リンズさん、キースさんおめでとう。私も結婚式に参加してもよろしいですか?」と笑顔で聞いてきた。
「「え。」」二人が驚いた顔をする。
「貴女達のことはユリに色々聞いています。少し無理を言って私が聞いたかもしれませんね。だから私にも祝わせて欲しいのです。」とお嬢様がリンズの手を取って言い出した。
「ミーナお嬢様。」と感動しているリンズ。
「え、え、マジですか?」と狼狽えているキース。
「そうですね。私からお父様に言って、盛大にやってもらいましょう。」とニコっとする。
「そ、それは・・・やりすぎじゃないですか?」と答えるキース。
「そんなことはありません。今この状況が片付いたら屋敷の皆で祝勝パーティーです。その時にでも式を挙げましょう。」キャーキャーって言ってるメイドたち。
「そんな、そこまでやっていただくわけには・・・」とリンズが恐縮して言う。よく言ったリンズ!俺達には荷が重い。普通の友達と親族を呼ぶ結婚式でいいんだ!
「リンズ、キース。私はもうすぐ公爵家に嫁ぐことになるんです。せめて最後に皆との思い出を残させてくれませんか?」と俺達二人にお願いしてくるお嬢様。
「ミーナお嬢様・・・わかりました。私も覚悟を決めます。お嬢様との最後の思い出になるよう。キースと一緒に幸せになります。」え、えリンズ!!と心の中で叫ぶキース。
「ちょちょ!」と慌てるキース。
「リンズありがとう。お幸せに・・・それとキースさん、リンズのことお願いしますね!」と俺を見てくる。
「は、はい。」俺の選択肢はそれしかなかった。
パンパンと手をたたくお嬢様。
「あともう少しです。しっかり気を抜かずに、最後まで戦い抜きましょう。」皆が皆頷いていた。
そしてユリ達と少し遅れて館のホールへと進みだしたのだった。
皆にからかわれながら歩くリンズを見ながら、少し後ろの方で警戒しながら離れて歩くキース。
「あれ?ちょっと待って?俺たちの恋バナを聞いてきた真犯人って、お嬢様!」
とミーナ様がリンズに話しかけている後姿を見た。
〝お、お前が真犯人か!〟と不敬にも心の底からツッコミを入れたキースだった。
私たち(リッテ、リース、セバス)はホールに向かって気付かれないように歩いていた。
その時私たちが出てきた。使用人の宿舎が騒がしくなっているようだ。もう少し出るのが遅くなっていたら、気付かれたかもしれない。
私たちは小声で話しながらダストの所に向かう。
「まずホールに出て階段を昇って二階に行かなければ、ダストがいる部屋には行けません。」とセバスが説明してくれる。
私一人なら、暗殺は容易いだろうが、リース様の無実を証明するためには、本人の口から聞かなければなりません。つかまえる必要があるのです。
「うん?」今確かに気配がしたが私たちを襲うものではなく、使用人の宿舎に向かっているようだ。今は時間がありません。先を急ぎましょう。
そうして玄関ホールの裏口に着いてドアを開ける。
「ここから反対側の階段を昇った奥の部屋です。」とセバスは言う。
「いえ、そう簡単には行かないようですよ。」と気配を感じ両手にクナイを持つ。
人が動く音がする。
「囲まれたか。」とリースがこぼす。
「リース様戦えますか?」とリッテが真剣に聞いてくる。
「ああ、死なないようにやるさ。攻撃は任せた。」と暗がりの中言う。
「お二人とも、私も戦いますゆえ。」と拳を構える。
「頼もしいですね。」と三人お互いに背を預けあう。
その瞬間指が鳴った。と思ったらまわりの明かりがつく。
「やあやあリース。まさか父上だけでなく、私の暗殺も企てるとは・・・私は悲しい、恥を知るのだ!」と笑って両手を広げながら言う。
「何のことだ?」と聞き返すリース。
「知らぬとは言わせないぞ!お前たちが脱獄したのはこの魔道具でわかっていた。」
「誰か侵入、誰か侵入!」と鳴いているカラスの置物。
「そっちのセバスは暗殺に加担した手助けをしたのだ。そしてお前は父上の暗殺を行った。お前たちが脱獄した後、やることと言えば私を暗殺すること。そうすることによってお前に、辺境伯の座が転がり込んでくる。なんて強欲で浅ましいのだ。兄弟として見過ごすことはできない。それに、逃げたことでお前が犯人だと言っているようなものじゃないか!」と身振り手振りで演説する。
「ダスト!お前は演説をしたいだけなのか?そんな事誰でもできる。そしてお前は辺境伯になれない。大事なものがお前には欠けているからだ。」と真剣な顔で断言をする。
「そうですよね。私思ってたんです。あの人絶対頭が足りないって!!」と挑発する。
「それは違うと思いますよリッテ様。ほら見てくださいあれ、おなかが出すぎているでしょう。」指をさすセバス。
「あのお腹、あの姿が貴族として失格と言って過言ではありません。」とため息を付いた。
二人して指を指して言う。
「「モンスター。」」ドヤ顔の二人。頭を抱えるリース。
「え、いや確かにモンスターだけど、そう言うことじゃなくてね、心が欠けていると・・・言おうとしたんだけど・・・」と戸惑うリース。
「リース様は優し過ぎです。本当のことを言わなければ、聞かなければ理解しません。そしてどの道、人間ではないのです。」
「その通りですぞ。本当はモンスターに仕えるのはご遠慮したいほどです。うんいや、モンスターにも失礼だったかもしれません。」と考えを改めそうになる。
「ふ、ふざけるなー。お、お前たちこいつ等を殺せ!!!!」と怒り狂って叫ぶダスト!
「来ますよ。」三人は臨戦態勢に移る。
「「「ファイアーボール。」」」とダストの側にいる魔術師が唱える。
火の玉が飛んでくる。
「二人とも俺の後ろに・・・スラッシュ三連斬!」ファイヤーボールが三つとも切れて辺りで爆発する。
「さすがですな。」と言って拳で何人かの兵士をぶっ飛ばすセバス。
「セバス様もさすがですね。・・・秘儀血栓クナイ!!」と言って襲ってくる兵士をクナイを魔法で操作して当てて倒していく。
「ほうそれはクナイを魔法で操っているんですか?中々強い。」
「ふふ、ありがとうございます。」
「相変わらず魔法を飛ばしてくるか、スラッシュハリケーン。」と言って回転切りの要領で魔法を相殺していくリース。
「な、なんなんだお前たちは!!なんなんだよ!!さっさと沈めよ!!」と怒り狂っている。そうして二階の柵から身を乗り出して落ちそうになるダスト。何人かの兵士に助け出されている。
さっきの攻撃で少しは倒したとは言え、それでもまだ数十人はいるか?
しかしこのままだとジリ貧だぞ!何かないか何か。と思っていると。身体に負担が来た。
「くっ大技を使いすぎたか・・・」と膝を付くリース。
「リース様。大丈夫ですか?」と駆け寄るリッテ。
ポーションを出そうとして、あまりに短期間に飲みすぎては効かない。下手したら副作用まででて、死んでしまう。と使うのを諦めた。
「くっこの数は危ないですね。」と押され始めるセバス。一転して三人はピンチに立たされる。
「セバス様はリース様を守ってください。私が攻めます。」と決意するリッテ。
何人かをクナイ制御魔法で倒した。だがしかし・・・
「うそ・・・もう時間だというの。」何とか立っているのがやっとで、身体がその状態で動かない。
「くっ。」始めて使う技で慣れてなく、限界を把握しきれていなかったか。と悔しそうな顔になるリッテ。
「どうやら限界のようだなお前たち、驚かせやがって!降参すれば今まで以上に可愛がってやるぞ!そこのメイドが良いのう。そのメイドを差し出せば命だけは助けてやるぞ!」と舐めるようにみるダスト。さっきの慌てようが嘘のように落ち着いている。
それを庇う様に立ち上がるリース。
「ぜーはーぜーはー。」もはや根性と気合で立っているようなものだ。
「リンス様。」と泣いて感動しているリッテ。
「悪いが一緒に逝ってくれるか?」とリースは二人に聞く。
「はい。」笑顔のリッテ。
「もとよりそのつもりです。」二人は答えた。
「お別れは済んだか・・・断るのならば一緒に地獄に送ってやろう。」勝ち誇ったように言う。
「ああ、断る。お、俺は暗殺なんかやってない!!」堂々と言うリース。
「モンスター以下には仕えられません。」と構えを取るセバス。
「生理的にダメなんです。」と止めを刺すリッテ。
「プギー―――ー!」と叫ぶダスト。怒りで思いっきり柵の手すりを叩く。
「俺に逆らったのだ。苦しんで焼き死んで、無様な声をあげて、後悔しながら死ぬがいい!」とブちぎれて俺たちを人差し指で指してくる。
グッと力を込めて耐えようとするリース。
「では、さようならだ。おい魔術師。特大の奴を頼むぞ!」と命令した。
「ファ」呪文を唱える声が聞こえる。時間が何かゆっくりだ。
「もはやここまでか・・・」と悔しがるリース。リッテはリースにしがみつく。
セバスはいつでも二人を庇えるように、準備をしている。
周りの兵士たちは勝ったと思い剣を下ろそうとしていた。
ダストは勝ちを確信してにへらと笑う。その顔はあまり好きじゃなかった。
すべてがスローモーションのように過ぎていく。
これが死ぬ瞬間の景色だというのか?
唇を噛み締めた。思わず目を閉じようとして風が吹き抜ける。
再び目を開けてしまった。どこからか流れが変わる風が流れ込んでくる。
その瞬間の瞬間、俺の身体、頭、心、血、すべてが〝勝った〟と囁いてきた。
再びリースの時が流れ出す、爆発音が辺りに響き渡ったのだ。
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ピンチで立ち上がる主人公・・・ち、違うんですよ!(別に主人公がいます!)
た、確かに特大な魔法が来ましたよ!




