サッカー準決勝が始まったけど
サッカーは非常に点が入らないスポーツだ。
だからこそ、その一点に物凄い価値があり、皆熱狂する。
その価値が高いシュートは勝ちに成功したもの。
ドリブルでごぼう抜きして決めるシュート。
物凄い弾道が速いボールがゴールに突き刺さって、唖然とするような弾丸シュート。
俺が決めたようなロングシュートが上げられる。
もちろんそれ以外にも色々なシュートがあるが・・・
特にその距離が遠いほど精密なボールの軌道、そして力がいる。
俺は冒険者の子供達相手にそんなシュートを決めてスタジアムを熱狂に包んだのだった。
「英雄!英雄!」と呼ばれて俺は調子に乗っているのかもしれない。
今日は何度もモニターにその映像が映りスタジアムを熱狂させたのだった。
俺達はサッカーの勝利に乾杯をしていた。
俺は赤ちゃんに戻っている。
もちろんジータは反省の意味で正座中だった。
「いつも怒ったら負けだ!と言っているでしょ。」
「そうよそうよ。」とミレーヌさんとナホに怒られていた。
項垂れているジータ。
「あうあうあー。」そうだ反省しろ!
「テトも言ってる。」となんだか笑っているサキ。
ドキっとしたがニュアンスでわかったのだろうとホッとした。
ジータ以外の皆が飲んじゃ食いのお祭りだった。
「英雄に乾杯!」と飲み物片手に言っている。
近場の大人達から差し入れも入っている。
いつもと違って豪華な夕食になった。
「皆、疲れてるんだからしっかり休むんだよ!」とそんなことをミレーヌさんに言われた。
「しかし、明日どうするんだ。俺抜きで勝てるのか?」と聞いてくる。
超絶レッドカードをもらったジータは明日の試合には室上できなかった。
「自惚れすぎだよ。」とタッキーが言ってきた。
「お前なー。」とか言う。少し間ができる。
「一緒に決勝に行こう。絶対勝つよ!」
そう決意を込めてタッキーは眠りについたのだった。
「頼むぜ、相棒。」そう言ってジータも眠りにつくのだった。
俺はその夜ある命令をゴーレムに下していた。
それはチコの監視と捕縛と連行。
明日いないとまずいからな。
俺は今日は寝るのだった。
隣にエイナの可愛い寝顔。俺はちょっとぷにぷにして寝る。
「おぎゃーおぎゃー。」と泣き出したのは俺が原因だ。
皆が起き出す中、俺は眠りについた。
そして翌朝、何人か寝れていない人がいる。
これで大丈夫か?注、お前が犯人です。
「ふゅーふゅー。」と下手な口笛を拭いて誤魔化す。
そんな俺はエイナと一緒にミルクを飲んでいた。
今日の準決勝、一試合目か。
「たぶん、今日は王族の誰かが見に来られると思いますよー。」と皆の顔が緊張している。
「あう。」と俺は王族かと自分の父親のことを思い出す。
今は一体何をしているのだろうか?
俺達はそんな話しをしながら、朝ご飯を食べて試合に望むのだった。
俺達が街の中を歩いていると、今までよく見ていなかったが、獣人の奴隷たちが暗い顔をして荷物を運んだりしている。
そのどれもがやせ細り、その労働の元にもしかしたら帝国は成り立っているのかもしれない。
俺は今はまだ何もできないと可愛そうに思いながら・・・
「あうあうあー。」と言ってヒールを遠くからかけることしかできなかった。
俺達はスタジアムに着いた。
そしてゴーレムの右手に捕まれ、チコちゃんがぶら下げられている。
涙目だったりする。
「拉致されたー。」とか騒いでいる。
この様子なら逃げようとしたな。
皆が皆俺と同じような思いだったのだろう。
「私は大人なのですよ!」とか言って暴れているが皆相手にしていなかった。
「チコちゃん!私たちの運命は貴女にかかっているのよ!」とミレーヌさんが真剣な顔でいう。そしてチコちゃんは引いている。
「すまない、俺のせいで・・・」と謝っているジータ。
「チコちゃん、お願い!」
「チコちゃんしかいないの!」とか女の子達が説得する。
子供達の皆が・・・チコちゃんに期待の眼差しだった。
その眼差しに引きつった顔をするチコちゃん。
「はぁー。わかりましたよ!やりますよ!」ともう投げやりに返答した。
そんなチコちゃんに皆が抱きついて喜んでいる。
「やったー。」
「ありがとう。」
「いつまでも友達だよ!」そんな言葉が聞こえる。
女の子同士の友情は美しいものだ。
それに引き換え、男どもはジータをいじっていたりしている。
まだまだ子供のようだ。俺はミルクを飲みだした。
今日はスタジアム満員かもしれない。それほど多い。
帝国中から人が集まっているのかな?
豪華な席は空席で、その隣の席とかは埋まっている。
あれらが王族の人達なのか?
なんか女の人と目が合ったような気がするが気のせいだろう。
さて、俺達の今日の対戦相手なのだけれども、貴族の子女達だったりする。
俺達の練習の時間。
向こうを見れば練習をしている。
煌びやかな姿に見とれている男子達。
俺もそろそろ行かないとな。
準備のためにいつも通り亜空間から取り出したスライムと入れ替わる。
〝え!どこ!〟とか思ってきょろきょろしているがいつものことだ。
別のゴーレムに抱かれて観客席を後にした。
赤ちゃんから子供の姿に変身をして廊下を歩いて行く。
前から、金髪な目の赤い子供が歩いてきていた。
なんか独特な雰囲気があるな。
その男とすれ違う。
「先に決勝で待っていてね!」そう声をかけられすれ違っていった。
俺はそのまま試合会場に急ぐのだった。
俺はスタジアムに入った。
その瞬間皆声を出す。
「英雄だ!」
「サッカーの英雄が登場したぞ!」
「見ろあいつだ!」そんな声がスタジアム中から聞こえた。
なぜか昨日のシュートが映し出されるおまけつきだ。
なぜ俺だけ目立っているのだろうか?
その歓声に手を振って答える。
「貴方が昨日のゴールを決めた選手ね。いないから今日は出ないかと思ったわ。」と話しかけてくる。
「アレリーナ・ジ・リートよ。よろしくね。」と挨拶してくる。
恥ずかしそうに手を出して握手を求めてきた。
俺はその手を握る。
「ああ、よろしく。」と答えておいた。
「あ、リーナだけずるーい、私の名前はホーマ・ザ・タウタよろしくね。」とこの子とも握手した。
二人はそう言って自分たちのチームに戻って行った。
今日は解説のアナウンスが入るらしい。
その声が場内に響き渡り、場内を盛り上げている。
俺は今日はジータがいた位置にいる。
チコがキーパーだ。
大丈夫だろうか?心配だ。
そうして試合が始まる。
そして始まると同時に相手チームの女の子二人、アレリーナとホーマに近寄られる。
「?」と言う顔をすると両腕を掴まれて身動きが出来なくなった。
「えっ、なんで?」と俺は戸惑った声を上げるのだった。
「あーこれは勇者様たちが残した特別ルールです。女性二人に抱きつかれている状態ではこの試合動くことは出来ません。」
「ブーブーブー。」と場内ブーイングだ。どっちにたいしてだろうか。
「な、なんじゃそりゃー。」と俺は叫ぶしかなかった。
「ごめんなさい。」
「そう言うことですので、よろしくね。」とそう言われた顔は可愛かったけど・・・
そして前半、俺は二人の笑顔にただの置物になった。
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