試合の英雄
俺たちは三回戦をどうにか乗り切った。
意外に向こうはタッキーとジータを潰しに行って俺達の攻撃を封じていた。
それでもなんとか他のメンバーが頑張り、ちなみにキーパーは俺で、もちろん無失点。
2対0の勝利だった。皆強くなったな。
俺は仁王立ちして、ぼーっとしてたらすぐに終わっていた。
ボールが来ないと活躍できてない。
空は青いなー。
俺は試合が終わればすぐに消える。
誰かは気づかれないだろう。
「チコちゃん。大丈夫。」とミレーヌさんが心配している。だが、どこか嬉しそうだ。
流石に決勝トーナメントに進出したなら、俺達の孤児院は無事だろう。
むしろ補助金アップで、新孤児院を造れるんじゃないかと俺は思ってしまう。
「ふふ、すべて計画通り!」と俺は呟く。
ゴーレムも頷いていた。
俺は抱えられながら向こうのゴーレムと入れ替わるのだった。
決勝トーナメントは皆で応援だ!ゴーレムたちよ!
きっと喋れないけどわーいと言っているはず、皆の成長ぶりは嬉しいのだろうな。
そして明日は決勝トーナメントだ。
俺はこの新しい生活をもう少しだけ・・・と楽しむのだった。
次の日、今日から試合は1試合ずつ行われる。
前後半20分ずつ、ハーフタイムあり。
試合のコートも半面だ。この間より広い。
観客も特設ステージを中に造られていたりする。
ここからサッカーらしくなる。
「あうあうあー。」燃えてくるなーと叫んでいた。
決勝トーナメントに進出したことで、賞金が出た。
その賞金を多少使って皆は露店とかに夢中だったりする。
買い食いの始まりだった。
男のタッキーやジータは串焼きに夢中だったりする。
こういう時は男の子だな。
「あうあうあー。」食べすぎるなよ!と俺は注意しておく。聞いていないだろうな。
さて一方女の子たちは服とかを見ていたりする。
「あんまり時間をかけてたら時間、間に合わないわよ!」と声をかけてくるミレーヌ。
「はーい。」と皆が元気よく返事をした。
俺はやれやれというジェスチャーをして、これからの試合に気合を入れるのだった。
ちなみにチコちゃん。
「今日は用事が・・・。」とか言って逃げた。
そんなに子供の大会に出るのが嫌なのかな、子供なのにと思う俺。
そう言われると俺の方がダメな気がするが・・・
「あうあうあー。」乗りかかった船だ!と叫ぶのだった。
「テトうるさい。」と俺を今抱いている女の子のサキに言われた。
ぶっきらぼうだが意外に二人の時には、テト可愛いとか言ってくる。
サキは可愛い奴だ!
「ふふ。」と思い出し笑いをした。
訝し気な顔になるサキ。
俺達はスタジアムに足を向けるのだった。
「あの人来るかなー。」と心配そうにするナホ。
「大丈夫だって、きっと俺達のピンチに駆けつけてくれるヒーローだぜ!」とジーコ。
「そうね。」とサキが返事をする。
なんか皆の視線が俺に集まっているけど・・・気のせいだよね。
汗を書いている俺、バレてないはずだよね!
なんか自信なくなってきたぞ!
スタジアムに着いて一試合を観戦。
あの貴族の子弟たちの試合だった。
どうやら順調に点を重ねているようだ。
そしてベスト4に進出が決まった。
喜びを爆発させている。
あいつ等が俺達を見ている。
俺達は先に行くと言う風に見ている。
特にジータがその貴族の子と目線がぶつかっている。
次は俺達の番だ。
「皆がまだかな?」と心配そうに俺の方を見てくる。
〝いや、これ絶対疑っているよね!〟
俺は何とかバレない様に偽装して、ゴーレムから離れ、変身を使いここに戻ってくる。
昨日は反動はなかったが、今日はどうなるかわからない。
俺は基本ビビリだからな。
「よお、お前等!元気だったか!」と俺は陽キャラを演じることにした。
皆は笑顔になる。
何人か向こうのゴーレムの方を見ている。
毛布にくるまっているのは中から取り出したスライム。
大人しくしているようにいい含めていた。
俺とあの子を見比べているのだろう。
遠くからだからわからないし、きっとバレてないよね?
そして俺達の対戦相手は・・・なんと冒険者の子供達だそうだ。
すっごい特徴的な髪型。
ユニフォームを改造してファンキーな衣装にしている。
どっかの世紀末の子供たちが・・・サッカーをする。
そんな違和感ありまくりな試合が始まった。
「ヒヤッハー。」とかいいながらドリブルで切り込んでいる。
それを止めようと近づいて行こうとする仲間たち、それを別の仲間がラフプレーで止める。
それを審判が気付いていないらしい。
ボールが関わっていないからだろうか?
そして世紀末シュートが放たれる。
俺はそれを難なく受け止めた。
「ちっ。」と舌打ち。
取ったボールを近くのナホに出して皆で繋いでいく。
しかし攻めあぐねる。
いい場面で相手のラフプレーが入る。
しかも審判が気付かない。
〝うまいな!〟と俺は感心する。
特にタッキーやジータへのプレッシャーが半端ない。
子供の足を削りに来ている。
見ていてあまり気分のいい物じゃない。
前半は終わり、荒れているジータ。
俺達はなだめるが聞き入れてくれない。
そして後半。
「お前!」と掴みかかる。そしてジータが殴ってしまった。
俺は頭を抱えた。
超絶レッドカードと画面に表示される。
それがあるなら、こいつ等のラフプレーを取ってくれよな!
何事も完璧ではないらしい。
ジータは退場になってしまった。
暴れているがドナドナされていく。
「はー何やってんだか。」と頭を抱える貴族の子弟達。
「これは決まったか。」と会場の皆が思ったかもしれない。
お前の死は無駄にはしないと、俺達は決意を新たに向かっていくのだった。
むしろ結束が高まったのかもしれない。
連携はうまくいく。
だが、一人少ないのはやはり厳しい。
退場になったジータが大きな声で応援する。
「頑張れ!お前等ならやれる。」と退場して無責任な!と皆が思ったのは仕方ないだろう。
全然反省してないぞ!
このピンチ、お前のせいだからな!
そして奴等の攻撃が始まった。
トリプルアタックで周りの俺達のディフェンスを・・・
「ヒヤッハー。」する。
ドリブルしている奴を守るように散って行った。
そして再び俺との一騎打ちだ!
まだ突っ込んでくる。
俺はいつ奴のシュートが来るか、それを見極める。
突っ込んでくる。
こいつもしかして俺に体当たりして、そのままボールを入れる気か?
俺はタイミングを掴んだ。
それは完璧なタイミングでボールをキャッチ。
「これで決まりだ!」
奴の足が俺のキャッチしたボールに決まった。
ドンピシャだった。
相手は俺が吹き飛ばされて、ボールがそのままゴールに入ると思っていただろう。
だが、俺は微動だにしなかった。
「な、なんでだ!」と奴は驚く。
「ふっ!」と俺は笑ってやる。
そしてボールを蹴りだした。
向こうを見ればキーパーは暇そうに欠伸をしているそれが見える。
スライムボールはそんな男の頭上を越えて・・・男は慌ててゴールに戻るが遅かった。
ぽよんとスライムボールがネットを揺らしたのだった。
皆が皆唖然としている。
相手のゴールキーパーは目が覚めただろう。愕然としている。
大画面ではそのシーンが繰り返し流れた。
ようやく皆がそのことを理解して歓声を上げた。
「うぉぉぉー。」とスタジアム中を揺らす歓声に俺は手を上げて答える。
そして仲間達は皆抱きついてきて、俺はもみくちゃにされた。
そしてこの試合、俺達は1対0で突破した。
そう俺は・・・この試合の英雄になったのである。
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