帝国の文化はサッカーだったようです。
100話です。ありがとうございます!
スタジアムはそこそこ人が入っている。まだ予選なんだ。
皆が皆、帝国から支給されたユニフォームを着ている。
なんでここだけ豪華なユニフォームなんだろうか?
孤児院の子は皆ボロボロの服なのに!
もうそれ普段着でよくない?と思ってしまう。
こういう試合になるとお腹が・・・とか言う奴がいると思ったが皆が皆、平気そうだった。
堂々とピッチ上に立っている。
うん、と一人うずくまっている子がいるチコちゃんだ。
「どうして、子供の大会に!私は大人なのに!騙された!」とかわけわからない事を言っているが、子供にしか見えない。
「?」と首を傾けるしか出来なかった。
そして笛の音が鳴り、孤児院の子供達のキックオフが始まった。
コートは意外に狭い。
それもそのはずで前面で合わせて四試合が行われている。
そして試合順が早く最初の試合だった。
孤児院や貴族達子弟のチーム、商人たちの学校のチームなどが参加している。
最初の相手はなんと貴族チーム。
「あ、これ終わった。」と子供ながらにビラを見ながら思った。
そんな俺、赤ちゃんは現在ゴーレムフード付きによって抱きかかえられていた。
ミレーヌさんはエイナを抱えている。
「その子は私が抱いていましょう。」
この状況はもちろんゴーレム腹話術によって、見事勝ち取った。
不振がるかと思ったが助かるみたいで、お互いに孤児院の子の応援に励むのだった。
まぁ何かあれば応援に駆けつけられる状況だ。
取り敢えず応援するしかない状況だった。
「あうあうあー。」頑張れーとか一応言ってやる。
「しかしあのボール。スライムか?」ぽよんぽよんとピッチ上を跳ねている。
俺はファンタジー世界のボールはスライムなんだと悟った。
ピッチ上では・・・
「おい、お前たち雑魚の平民の分際で、こんな大きな大会に出るなよな!しかし出るなら、精々恥をさらして帰るんだな!」と貴族の子供が言っている。
「ああ、なんだ。何か言ったか?」とあいつ等は戦士の目だった。
貴族であるこの私が怯んで下がるとは・・・平民風情が万死に値する。
貴族はボールを取ろうとする。
その子供ジータは一瞬でその隙をついて抜き去った。
二人三人と躱し、タッキーにパスを出す。
タッキーはそのボールを受けて強烈なシュートでゴールネットを揺らした。
「ゴール。」この瞬間を会場の大画面に映し出される。
いや、なんでこんなものが異世界にあるんだろうか?
誰かが、ここに持ち込んだのか?よくわからない世界だ。
そうして、画面はまた切れる。
その画面はシュートが決まるごとに映し出されているようだ。
あれはどうやら帝国の秘宝らしい。
あれがあることで帝国のサッカー文化は栄えている。
「まぁーオーパーツのようなものかな?」と俺は考える。
もしかしたら他の異世界人がここに来ていたのかもしてないな。
そうするともっと面白い物が眠っているかもね!
わくわくする俺だった。
おっと試合なのだが結局2対2の引き分けだった。
圧勝するかと思ったがチコちゃんキーパーがドジを踏みまくり、オウンゴールで得点を献上する始末。あれにはチコちゃんも項垂れていた。
そして最後までやらないらしい、予選ブロックで後二試合する。
その結果次第で決勝トーナメントに進出できるらしいのだ。
予選十六チームで決勝に進むことができるのは八チーム。
まだまだこれからなのだ。
「おい、お前・・・」と呼びかける貴族の子供。
「なんだよ。」そんな喋り方でいいのかジータ。
「必ず!決勝戦で合おう。次は負けない。」と二人は握手を躱す。
友情のいい話しに俺は感動するのだった。
見ればスタジアムの皆モ感動している。
そんな場面がモニターに映し出されていたのだ。
二人はそれに気づいて赤面していた。
「貴族が平民にな・・・」と次の対戦相手のチームがそんな様子を見ていた。
孤児院のチームは今日残り二試合。
一試合、時間は三十分。どうやら皆疲れはないようだ。
戦いが始まる。
次の対戦相手は商人チームだった。
「ふん、貴族様に引き分けたからって、調子乗ってんじゃねー。」と大きい体格の男がすごんできている。
あれで子供なのだろうか?
あいつ等大丈夫か?と思ったら、そいつはなんとキーパーだった。
あの体格でキーパー。
四面ということでゴールは小さくなっている。
あんな体格の所に決められるのか?
そんなの俺の杞憂だった。
タッキーは大きく足を振りかぶり強力ななミドルシュートを決めた。
キーパーは動くことが出来なかった。
「へ。」と気づいてたら入っていたことに驚いている。
どうやらあの体格は見せかけだったようだ。
相手も何かを察したらしくタッキーの守備が厳しくなる。
ボールを持てないならシュートを決められないだろうと思っているようだ。
しかしジータが敵をかき乱し、ゴールまでボールを持ち込んでシュートを決めてしまった。
さらに追加点は敵のファールによって得たフリーキック。
タッキーはそのボールを振り抜き右隅に決める。強烈すぎてキーパーが動けなかった。
「うぉーりゃー。」とタッキーは雄たけびを上げた。喜びを爆発させている。
結局この試合は3対0の圧勝だった。
ほぼ間違いなく決勝進出だろうと思っていた俺のもとに、チコちゃん倒れると言う報告が寄せられる。
「どうする!このままじゃ人数そろわずに棄権になっちまう。」と叫び声を上げるジータ。
「孤児院どうなっちゃうの。」と不安そうな顔のナホ。
「それは・・・」と落ち込む皆。
「おいおい、しけた顔してんなよ!」そんな声に俺達は振り向く。
そこには俺達と同じユニフォームを来ていて、茶髪の髪をした男の子が立っていた。
「さぁ行こうぜ!」そんな声と共に俺達は第三試合に望むのだった。
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